行ってよかったUXリサーチ居酒屋。学びと総括
先日5/9に開催されたUX MILK主催のイベント「UXリサーチ居酒屋」に参加してきました。
同イベントは登壇型ではなく居酒屋形式(各々のテーブルで各々のテーマで話す)なので、人によって得た学びは異なると思います。
なのでイベントから学べたことというよりは、同席した他のリサーチャーたちとの会話の中でどういう学びがあったかをシェアしていきます。
(社外秘情報等に配慮し社名・個人名は控えて書いていきます。まあ大丈夫だとは思いますが念のため。)
インタビュイーのデモグラ情報で安易にリクルーティングしない
あるテーブルでは、インタビュイーを探す時どこまで属性に幅を持たせて探すか?という話になりました。
この中で学びだったのは、コールセンターの人がペルソナなら、ソムリエとかに話を聞いたりもする。何故なら「CSの仕事の本質は話を聞いて解を伝えることだから」という話でした。
なるほどなという感じです。
自分は一般的なスクリーニング法(デモグラ情報といくつかの特性でスクリーニングする)を用いることが多いので、リクルーティングでも気を抜かずにやっていこうと反省しました。
リサーチを依頼する際に使うシートがある
またある企業では、UXリサーチャーにリサーチを依頼する際に使うシートがあるそうです。
シートの中身は大きく分けて2つ。
1つは、知りたいのはUXの5階層モデルでいうとどこなのか。
2つ目は、リサーチの目的は何なのか。
加えて、打ち合わせの際「たとえばどういう結果だと嬉しいですか?」とも聞いてみるという工夫もされていました。
これはもうほとんどユーザーインタビューです。ユーザーの前に依頼者へのインタビューを無意識のうちにされているなと、UXリサーチャーの本能を感じました。
リサーチを各チームにインストールする
個人的に最も学びだったのは、リサーチをリサーチャーだけがやらない体制をとるチームが存在することでした。
これはつまり、リサーチは必ずしもデザイナーの行う仕事ではなく、実践者はPOでもエンジニアでもディレクターでもいいという考えです。
むしろ運営メンバーが直接ユーザーのことを学習することに意味があると考えているようでした。
アプローチとしては、各チームや子会社にリサーチを教え、そのクオリティ向上やレビューを担うというものです。
例えばインタビューであれば、まずはリサーチャー相手にインタビューして訓練。次にリサーチャー同席でインタビュー。といった具合のようです。
リクルーティングするチャネルを全社規模で作る
リサーチャー定番の話題ですが、インタビュイーはどういう方法でリクルーティングしているか?という話題も出ました。
大手企業の場合は何だかんだリサーチ会社を使うことが多いようでしたが、ある会社さんの場合、社員の知り合いづてでリクルーティングする用に全社横断のチャンネルを作っているそうです。
デザインチームやリサーチチームがある会社はありますが、全社にリクルーティングのチャンネルが浸透している企業はまだ珍しく、素晴らしく思います。きっと色々な努力をされたに違いない。
ちなみに同じ話題の中で、「リサーチ会社使うと運用は楽だけどセグメントから外れた人が来ることも頻繁にある」という話も出ていました。これは同感ですね。
効果がどれくらいあるのか経営者・POに理解してもらうための取り組み
経営者やPOにUXリサーチの効果を理解してもらうためには?という話題もありました。
納得感があったのは、離脱ポイントなどを定量データとジャーニーマップの感情曲線と共に、テスト・インタビューへの同席(あるいは鑑賞)もしてもらうという話です。
これはサラッと経営者にとって重要なポイント4つを抑えていて、素晴らしいやり方です。
- お金やKPIに関係あるポイントを選定
- 定量データで問題を提示
- 感情曲線で原因の仮説を提示
- 実際のテスト等でリアルな原因や反応を見て実感する
やることはかなり増えますが、マネしたいと思える仕事でした。
発話を促すためのコミュニケーション
インタビューやテストの基本原則として相手に発話思考をお願いする、というものがあります。会では、この発話をどういうやり方で引き出しているか?という話が出ました。
ここで僕が印象的だったのは、「YouTuberになったつもりで喋ってください」という言い方をしているという話です。
これは印象に残る伝え方でいいなと思いました。
経験上、発話思考の難易度は高めです。
「考えたことを口に出してください」とただお願いするだけでは、インタビュイーは会の中盤くらいで発話を忘れ始めます。
なので忘れにくい、印象的な言葉は重要なのです。
総括
UXリサーチを実施している企業において、リサーチへの態度は大きく2つに分かれているのだなと感じています。
1つは、設計から分析まですべてをリサーチャーが行う方針。もう1つは、各チームにリサーチをインストールしていく方針。
正しさを求めるなら前者がよいでしょうし、後者はデザイン思考で自走していくチームを作ることができそうです。
個人的には前者派だったのですが、今回のイベントに参加して、後者への関心が高まりました。実施した内容がチームに活用され続けるというのは、サービス開発に似た魅力があります。
最後にイベントについてです。
参加者の半分以上がUXリサーチャーあるいはリサーチ経験者で、思っていたよりずっと学びの多い会でした。
登壇型のイベントの場合学びを得られるのはいくつかの登壇内容と懇親会で数分話した中からのみですが、今回は初めから複数人と40分間共通の話題で話せる形でした。
話せる人と話せる環境が揃っている、素晴らしいイベントだったなと思います。UX MILKさんありがとうございました。
UXリサーチの潮流はもう目に見えて来ていて、これから人もイベントも増えていきます。リサーチがテーマのイベントが本当に面白いのは、あと1年くらいの間な気がします(UXデザインがそうでした)。
参加するなら、あるいは主催するなら、逃してはいけないタイミングが今だなと感じました。
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