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ユーザーインタビューの極意

ユーザーインタビューは、仮説検証の手段として今や一般的な存在になりました。

しかし、誰もがユーザーインタビューの経験が豊富なわけではありません。

中には、質が良いとは言えないインタビューを行い、誤って実際には存在しない空想上のインサイトを捉えてしまうチームも存在します。

そういった誤りに陥らず、良い仮説検証、良いインサイト発見を行うためにはどうすればよいのでしょうか?

最も重要な「人間」に対しての認識

まず、ユーザーインタビューではヒアリング相手の言葉を信じてはいけません。

人が口で言っていることと実際の行動・思考は往々にして異なるからです。

彼らがウソを吐いているわけではありません。

悪意は無くとも、無意識の内にそうなってしまうのです。

これはその人の自尊心や、物事の認識の仕方、性格が保守的か進歩的か、保有している語彙力など様々な要因が重なって起こります。

人々は自分で思っているよりもずっと、自分の課題や欲しいものについて言語化できません。

「人の口と頭と手は全て違う生き物だ」と覚えましょう。そして私たちが捉えるべきは、口ではなく頭と手です。

(頭と手が喋ってくれたらどんなに楽なことか…。)

すなわち、言葉はニーズでもインサイトでもありません。ユーザーインタビューで捉えるべきは、彼らの過去の行動です。

彼らの言葉を通して、彼らの行動を観察するよう努めましょう。そして行動を通して、インサイトを探るのです。

(このためのテクニックは後述します。)

また、彼らの言葉の中で惑わされてはいけないものがあります。

それは「〜〜だったら、〜〜だと思います」といった仮定の話です。

この類のフィードバックは、ユーザーインタビューで得られる回答の中で最も無価値です。

仮定の話は、実際の行動でもなければ、行動を言語化したものでもないからです。

価値ある定性データを得るためには、質問の仕方について基本的に事実を聞き出す質問をするよう心がける必要があります。

最も簡単で最も重要なテクニック

言葉の中から行動を観察するための、最も分かりやすいテクニックがあります。

それは、言葉の中にある文中リンク・脚注リンクを踏んでいくことです。

どういうこと?と思われることでしょう。

難しいことではありません。

例えば、私が「この前何人かでスキーに行きました。楽しかったですよ」と発言したとします。

しかし実は、この言葉を正しく直すと、

「3ヶ月前の日曜日、チームで仲の良い営業メンバーと一緒に6人で群馬にスキー旅行に行きました。2日目はスノーボードでしたけどね。旅館で馬鹿騒ぎしたりゲームをしたりして、酔っ払って気づいたら眠っていました。楽しかったですよ」

となります。

上記のように、人は物事を説明する時、全てを事細かに話すことはありません。要点や必要そうなこと、分かりやすい言葉を選んで、省略して説明します。

その省略された内容は、言葉の中にあるリンクを踏んでいくことで暴くことができます。

上記の例だと、“この前” や “何人か” や “楽しかった” がリンクです。

このリンクを踏んだ先には、いつ、誰と一緒に行ったのか、何人で行ったのか、どこに行ったのか、スキー以外にも何かやったのか、何を楽しんだのかという情報が存在します。

しかしこれらの情報はあなたが、

「“この前” というのはいつ頃のことですか?」

と訊ねるまで、全て隠されています。

そして一度これを聞き逃すと、あなたはほぼ永遠にその情報を手に入れることが出来ません。

この質問を一瞬で導き出すために意識しておくとよいのが「言葉の中にある文中リンク・脚注リンクを踏んでいく」なのです。

リンクの中の内容を聞き終えたら、更にリンクを踏んで掘り下げたり、元の話に戻ってインタビューを継続していきます。

2番目に重要なテクニック

リンクを踏んでいく会話術の次に重要なのが、沈黙を恐れないことです。

もちろん、会話の空気が悪くなると発言は抑止されてしまうので、完全な沈黙は避け、常に笑ったり、相槌を打ったりといった反応は示してあげるべきでしょう。

しかし、相手の回答の時間を取り上げることは絶対に禁物です。

相手の思考を中断させてしまう可能性がありますし、答えを誘導してしまう可能性があります。

一つ質問をしたら、答えが返ってくるまで笑顔か相槌を示しながら、相手の言葉をじっと待ちましょう。そして、話が終わるか質問されない限り、意味のある言葉を投げかけてはなりません。

ユーザーインタビューの目的は、自分の考えを聞いてもらうことではないのです。

この記事は、UXデザインに欠かせない、ユーザーインタビューの極意【前編】をnote向けにリライトした内容になっています。

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