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世界のスター人材採用に学ぶクロージング術
自社を飛躍させるスター人材を採用できているか?
個人的にはいっっっちばん難しい仕事に思える。
今回はスター人材の採用をテーマに、世界の事例から学びを得たい。
ということで自分が聞いたことはあるスタープレイヤー採用エピソードを3つ集めてきた。
1. スティーブ・ジョブズのペプシ事業担当社長の引き抜き
2. 日ハムの大谷選手の指名
3. 楽天三木谷社長のイニエスタへのオファー
今回は3エピソードについて深掘りして行きながら、自社の採用に活かせそうなことを抽出していく。
エピソード1 : スティーブ・ジョブズからジョン・スカリーへの強烈な口説き文句
本エピソードのサマリ
Appleの社長となれる人物を探していたスティーブ・ジョブズが
ペプシコーラの事業担当社長ジョン・スカリーを引き抜いた。
(その後ジョブズを退任に追い込む張本人でもある。)18ヶ月の間に渡る交渉の末、
「このまま一生砂糖水を売り続けたいのか、それとも私と一緒に世界を変えたいのか?」
という口説き文句が決め手になった。
詳細
詳細に読みたい方は以下書籍をお読みください。
以下はWikipedia(ジョン・スカリー)より引用。
スカリーは、ペプシのコマーシャルにマイケル・ジャクソンを採用したり、ペプシチャレンジと言われた、ブランド名を隠して複数のコーラを飲ませて、ペプシのコーラがおいしいと伝えるコマーシャルなどの手法を使った。ダイエット・ペプシのヒットなどもあり、遂にはコカ・コーラを抜いてアメリカの炭酸飲料マーケットで、首位を取る原動力となった
1981年、Apple Computerにマーケティングに優れた役員を探していたスティーブ・ジョブズが、当時ペプシコーラの事業担当社長をしていたスカリーに白羽の矢を立て、18ヶ月に渡って引き抜き工作を行った。
この時スカリーを口説くために、彼が述べた言葉である、
このまま一生砂糖水を売り続けたいのか、それとも私と一緒に世界を変えたいのか?
Do you want to sell sugared water for the rest of your life, or do you want to come with me and change the world?
は、有名な一節である。
1983年、スカリーはAppleの社長に就任、ジョブズとのダイナミック・デュオと呼ばれた体制に移行した。1984年1月には、Macintoshのデビューに立会い、順調に経営が進行するように思われた。
---中略---
Appleの経営を混乱させているのはジョブズだと考えるようになったスカリーは、1985年4月にMacintosh部門からの退任をジョブズに要求、取締役会もこれを承認した。
学び・ポイント
自分より圧倒的に強い人を取りに行くマインドセット
マーケティングに強い人が欲しいから、ペプシの事業担当社長を採用しようという発想はマジかってなる。普通は1ポジションの人が欲しいというときに、世界で1番得意な人を探しにいけない。
一方で真に成果に向かってゼロベースで考えられていると思うし、それを実現に落とす実行力が本当に尊敬できる。
圧倒的に刺さる口説き文句
スティーブ・ジョブズの映画などでもフィーチャーされる、砂糖水の口説き文句はスカリー自身の心をガッツリ掴んでおり凄すぎる。
(ただこれは真似できる気がしないわ,どすべりしそう)
長期間追い続ける姿勢
18ヶ月にわたって交渉していたというのは今回調べて初めて知った。南場さんが前田さんを5年かけて口説いたという話はあるが、トップ人材の採用は長期スパンでタイミングが来るまで粘るというのは大切だと思う。
エピソード2 : 日本ハムから大谷選手への渾身のプレゼンテーション
本エピソードのサマリ
大谷選手が早期からメジャー入団を目指していることを公言していたため、他球団はスカウト諦めた中で、日ハムだけが1位指名し、そこから国内球団へのチャレンジからスタートするという意思決定につなげた。
大谷選手向けのプレゼン資料を用意し、MLBのトッププレイヤーになるという大谷選手の夢を実現させるために最適な環境であると、綿密なリサーチ・分析を通じて伝えた。
詳細
以下記事より。
早いうちから日本のプロ野球ではなくメジャーリーグへの挑戦の意思を表明していたため、ドラフト会議では多くの球団が指名を回避しました。
しかし、北海道日本ハムファイターズはそれでも大谷投手を1位指名。大谷投手は、当初はメジャー挑戦の意思を変えませんでしたが、日ハムの粘り強い交渉を受けて入団することを表明しました。
以下は交渉で利用されたとされている資料を引用。
(Gigazine 日本ハムファイターズが大谷選手に入団を決意させた資料をネットで公開より)
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学び・ポイント
諦めない姿勢
他球団が諦めている中で、それでも指名しに行く姿勢自体がつくった結果だと思う。チャレンジしないと成功しないを体現しており、実際に成功させていて本当にすごい。
相手目線のフラットな提案
相手が何を達成したいかを起点とした論理展開、選択肢を相手目線で整理し事実をもとにフラットに比較。めちゃくちゃレベルの高い営業の提案という印象で見習いたい。
他2つのエピソードと比べて一番マネ自体はしやすい・再現性が高いと思う。
エピソード3 : 楽天グループ三木谷社長のイニエスタ自宅訪問
本エピソードのサマリ
FCバルセロナとのスポンサー契約を決めた後、
イニエスタの獲得というビッグニュースを立て続けに作った。イニエスタが海外に移籍するというニュースは流れており、中国に行くことがほぼ決まっていたところだった。
思いついてから数日でイニエスタの自宅に三木谷さんが直接訪れるというサプライズ、日本のサッカー界を引っ張ってほしいというメッセージにより移籍を決めた。
詳細
安藤がもう一つ、忘れられないのは、日本だけでなく世界を驚かせた、ヴィッセル神戸のアンドレス・イニエスタ選手の獲得だ。
---中略---
「アンコーさ、このままじゃ、決まっちゃうよな。こうなったら、直接、会いに行くしかないか」 アメリカから日本に戻るジェット機の中で、三木谷は社長室長の安藤公二(通称アンコー)につぶやいた。2018年4月のことだ。
イニエスタが海外に移籍する、というニュースは、その年の春から流れ始めていた。交渉していたのは、中国のクラブチーム。年俸約35億円に加え、イニエスタが所有するワイナリーのワインを約46億円で買い取るという破格の条件を出していたとも報じられていた。すでに中国に招待されていたという話もあった。安藤は回想する。
---中略---
安藤が何より驚いたのは、三木谷の電光石火の行動力だった。思いついた数日後には、もうイニエスタの自宅に向かっていたのだ。
「イニエスタは喜んでいましたね。三木谷自らわざわざ家に来てくれたわけですから。握手で迎えてくれて。中国に行くことはほぼ決まっていたと言われていましたけど、決めきれない何かがあったのだと思います。そこに、日本から三木谷がやってきた。FCバルセロナのメインパートナーのトップですからね」
バルセロナ郊外の大きな邸宅の一角には、ミーティングルームがあった。プロジェクターがあり、大きなモニターが備え付けられていた。イニエスタはここに家族やマネージャーも招き入れた。三木谷が、にこやかに話し始める。安藤は語る。
「楽天グループという会社やサービスの説明から、ヴィッセル神戸というチームの素晴らしさ、日本の生活環境、神戸の街の特徴まで、いろんなことを話していきました。僕が印象深かったのは、日本のサッカー界を引っ張っていってほしい、という言葉です。イニエスタは、この言葉に一番、反応したんじゃないかと思います」
三木谷浩史、電光石火の「自宅訪問」と最強の「口説き文句」
学び・ポイント
やると決めてからのスピード感、直接家まで現れるサプライズ性
思いついて数日以内に、直接家まで飛び立つ行動力。世の中に大きいインパクトを与える経営者はやはり実行力が違う。普通じゃないことをすぐに決めてすぐにやる。
余談)自分も候補者も都内にいることが多いが、誰の家にも凸したことはない。一番の凸で候補者最寄りの駅のカフェだ。
長い目線で夢を語る
単にチームで活躍して欲しいという話でなく、日本のサッカー界を引っ張って欲しいという将来の大きい夢を語る。
まとめ : 明日から意識したいこと
自分が明日から意識したいことを最後にまとめる。
スター人材を無意識のうちに採用候補の選択肢から外していないか。自分の組織にとって一番良いと思える方をゼロベースで発想できているか。
相手の目線で次の選択肢を整理し、考察できているか。その中で自社が1番良い機会であることを自信をもって説明できている状態になっているか。
候補者に対して自社が提供できる機会を最大限伝える努力ができているか。時には自ら足を運び直接会いにいくことができているか。
以上スターの獲得事例をまとめた。
明日からのクロージングで役に立つ要素があれば嬉しい。
※本記事は「候補者と企業のより良いコミュニケーション」をテーマにした#採用ブログリレー2/17分の記事です。昨日はキャディ株式会社 北野原 一星さんの記事でした。次回(2/20(月))はGaudiy 山本 花香さんの記事です、ワクワク。
追記 :エピソード4 三顧の礼(劉備と諸葛孔明)
記事を出した後に、前職で大変お世話になったTipsを得意とした学のある先輩から、「歴史で言うとまさに三顧の礼だね」と教えてもらった。
トップが自ら出向く姿勢の必要性を謳っており、締めエピソードとして大変良いなと思ったので追記。
才能ある人物を得るには、地位の高い人が自ら礼を厚くして、何度も足を運び説得することが必須条件です。組織のトップや人材確保の要職にある者は、千里の道もいとわず、自ら出向く心構えが必要です。
「三国志」のなかで諸葛孔明の英明を知った劉備がなんども無駄足を運んだうえで、ついに出馬の説得に成功した故事に基づいています。
---中略---
この逸話のなかの学ぶ点としては、劉備は自分で人材を見抜き、探したりする能力がなくても、人材を見抜く人を信ずる人徳があり、それが、あまたの人材を集め、やがて大国の雄になることができたということです。
---中略---
そして、トップが人材を見いだし、それを自分の部下にするための方策としては、上記の教訓から
①顔がひろく、世間に明るい人物で、人を見る目を具備している人上を見いだし、その人の意見を信ずること。
②みずから陣頭に立ち、苦労をいとわず、頭を低くして説得に当たること。
以上の2点を学びたいと思います。
「三顧の礼」のかくれた逸話として、人物の凄さからどうみても劉備より一枚上手の曹操も孔明に自分の部下となるよう使者を出していたということです。
孔明ほどの明晰で、先見性のある人物であれば、曹操か劉備のどちらが天下を取るか予測できたはずです。このような背景を知れば、スカウト合戦となったとき、オーナーみずからが全面に出て、話し合うなどの積極策がいかに大切か分かると思います。