見出し画像

豪腕クッキング 『出禁の男 テリー伊藤伝』本橋信宏著

何年も前、TV局でテリー伊藤を見た。

何かの本で「挨拶できない奴が嫌いだ」と言っていたのを記憶していた僕達は名乗るよりも先に、反射的に「おはようございます!」 と声をかけた。

「おーっす!」
なぜか部屋着のようなランニングシャツを着たテリー氏は、元気よく掛け持ちの生放送のためTV局の11階から駆け足で階段をかけ降りていった。

天才TVディレクターと言われるテリー氏の番組を僕はあまりリアルタイムで見ていない。

唯一見ていたのは「とんねるずの生ダラ」くらいだろうか。

第一章 斜視

どんなノンフィクションのタイトルもなかなか太刀打ちできないようなパワーワードから始まり、


「スーパー・モンキー・スペシャル サル年ばんざい!猿は人間を超えるか!?」
1980年1月1日、日本テレビ系列局から正月特別番組として二時間半の拡大版として放送された。
(中略)
動物バラエティ番組ということで、スタジオでは、ゲームセンターにあるモグラたたきゲームのようにサルをピコピコハンマーでたたくコーナーがあった。
いまなら放送できるか、かなり怪しい。


笑っていいのか迷う前に口角をあげさせられる圧倒的事実の連発は、オリンピックのラーメンズが気の毒に思えるほど。

活字なのに目を背けながら読んでしまう第15章 江頭2:50のグランブルー

水中で何分耐えられるかの企画に挑んだ江頭2:50「四分!すごい記録だー!」
とリポーター陣が盛り上がったのも束の間、異変に気付いたADはじめ全員が救出に向かったシーンはカットされ、放送では病院から戻った江頭2:50と因縁の清水圭がお互いに認め合う感動のフィナーレ…
なんだそれ!

文字通り命がけで笑いを作っていたなんて言葉じゃ安すぎるほどの、活字そのものが熱を帯びているかのようなこの本の著者は「全裸監督」の本橋信宏氏。

テリー伊藤の現場を潜った戦士たちが、のちにそれぞれ「電波少年」「マジックミラー号」「イッテQ」「ウリナリ」
映像史に残るドキュメントバラエティーa.k.a.どこまでがリアルなのかをこちら側に想像させるフェイクドキュメンタリーを残し続けている。

バカで過激で後先考えないTVマンの遺伝子たちは時代とコンプラに身を変化させながら、当の本人のテリー伊藤はサンデージャポンで時々物議を醸すコメントを残しながら。

そして不意を突かれる 
エピローグ 斜視との別れ 

こんな過激エピソード連発の芸能本みたいな材料を、ストーリーに載せて伏線を回収し、ちゃんと感動させる腕力恐るべし。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?