キングオブコント決勝1本目、男性ブランコ「ボトルメール」の凄さ
キングオブコント2021が終了した。今大会は、SNSなどで騒がれるまでもなく、審査員全員が唸るほどハイレベルな戦いだった。まずは、素晴らしいコントを披露してくれた、いや、めちゃくちゃ笑わせてくれた芸人さん達に感謝したい。笑いすぎて泣いてしまって、号泣した後に来るような頭痛がしていてちょっと辛い。
今回面白かったネタと言えば何と言っても空気階段の1本目だろう。SMクラブ×火災救助×公務員という絶妙な組み合わせに2人の醸し出す雰囲気が合わさって爆発的な笑いを生んでいた。2本目も素人の自作漫画のコンセプトカフェという設定に、もぐらのキャラクターが合わさって空気階段らしい笑いを生んでいた。男性ブランコとザ・マミィが1本目の爆発とそこからの差異化に苦しんだ中、空気階段は2本目も、1本目とはまた毛色の違った破壊力のある笑いを生んでいたように思う。
また、以前から注目していた蛙亭は、トップバッターながら蛙亭らしさを出しつつ爆笑をかっさらっていた。個人的には中野さんの魅力がより一層全国に伝わったのではないかと思い、嬉しくなっている。また、私はマヂカルラブリーの大ファンでもあるので、決勝の場で好き勝手やる2人を見ていて嬉しくなった。
さて、ここまで色んなコンビを褒めちぎってきたが、私が今回「これは凄い!」と思ったのは男性ブランコの1本目のネタ「ボトルメール」である。それなら最初から触れろや!という感じであるが、文章を書く時は「好きなものは最後にとっておく」タイプである。結論ファーストと言われる就活の面接に苦しんだ結果修士への進学を決めたのも頷ける。
話を本題に戻す。「ボトルメール」の何が凄かったか。序盤の展開は至ってシンプルであった。浦井扮するある男性が、海岸で拾った空き瓶に入った手紙の主であるたちばなまりと1年間文通をし、ついに直接会う時が訪れる。待ち合わせ場所の海岸で待っていると、平井扮する文通相手のたちばなまりが白のワンピースに麦わら帽子という、映画やドラマの文通相手にありがちな「いかにも」な格好で現れる。第一声、何を発するか緊張感が走ったその瞬間、たちばなまりは酒焼けした声でドギツイ関西弁を喋りだし、ノリボケツッコミも含めた怒涛のボケを披露する。
ここで浦井がモノローグに入る。よくあるパターンとしては、ここで男性役が「思てたんと違う!」的なことを言いつつも、話していくうちに徐々に心境に変化があらわれ、「アレ?段々この子のこと好きになってきたかもしれん」的なことを言って笑いを誘うといったものである。しかし、男性ブランコはここで1度目の「裏切り」を行う。モノローグに入った浦井は、「あぁ…好きだなぁ」と言い、たちばなまりへの愛を強く確信するのである。
その流れが2回繰り返され、またモノローグに入るのであるが、ここで2度目の「裏切り」として、それまでの流れが全て男性側の妄想であったことが暴露される。つまり、酒焼け声の関西弁でボケ倒す文通相手としてのたちばなまりは、男性にとって本当に理想の相手だったことがここで強調されるのである。
モノローグののち、ようやく妄想ではなく実際に会う時が訪れる。妄想シーンと同様、白いワンピースに麦わら帽子姿のたちばなまりが近づいてきて、第一声、何を発するのか再び緊張感が走る。すると妄想シーンと同様、すなわち、男性側の理想通り、たちばなまりは酒焼け声の関西弁でボケ倒す。それに対しあまりにも理想通りだったため浦井扮する男性は飛び上がって喜ぶのであった。
私が「ボトルメール」に感動したのはまずもって、「裏切り」的な展開そのものに対してであるが、それ以上に、その「裏切り」のあり方に痛く感動した。白いワンピースに麦わら帽子という「いかにも」な格好をしつつも酒焼け声のドギツイ関西弁でボケ倒す女性キャラ、それに対しモノローグでひたすら「好きだ」と言う男性、そして途中まで全てのシーンが男性による妄想で実際に理想通りの女性が現れ歓喜する。こういった様々な「裏切り」的展開が用意されている一方で、最初から最後まで一貫して男性役は、たちばなまりに心の底から惚れている。というよりもむしろ、「裏切り」の展開が、男性からの一貫したたちばなまりへの愛を際立たせているのである。愛に満ち溢れた、素晴らしいコントだった。来年も決勝の舞台で男性ブランコのネタが見れることを期待したい。
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