『ライム』 |400文字小説 【#毎週ショートショートnote】
終わったあと、悠が何も纏わずコテージの窓を開いた。波の匂いがする風でベッドが汚れる。
ティッシュで俺は、身体からこぼれたものを自分で拭っていた。あいつがタブロイド紙を俺の身体に投げつける。シーツの上の俺が拾う。
【激写・ロードレース選手八雲セイジ(28)競技会場で同性チームメイトに輪切りのライムを口移し・サドルに乗った男同士・アツアツ交際か】
これが果てるまで、俺の身体を砕くかというほど強く抱きしめ続けていた理由か。
悠が拳銃を自分のこめかみに当てた。
俺はベッドから降り、紋が入った悠の右手首を掴み、銃口を俺の顔に向けさせる。悠が流れる自らの涙を拭っていた。
「変わらない。信じられないか。なら撃ちなよ」
俺が銃口を咥えた。
悠は振り解き、床を撃った。声をあげて外へ向け、波の音繰り返す林の中へ残りを撃ち尽し、捨てた。
俺を見た。床に押し倒された。顔を掴まれ再びまず口のなかを指で掻き廻される。
俺は目の前の泣き虫の顔を見つめる。
お読みいただき、ありがとうございました
[文字数:410文字]
初稿掲出 2023年6月29日
最終改訂 2023年6月29日 18:55
©︎かうかう
この作品は 【 #毎週ショートショートnote 】 のお題「 #口移しサドル 」に参加させていただきました。