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#13『オルタネート』感想
今回ご紹介するのは、加藤シゲアキ(かとうしげあき)先生の『オルタネート』という作品です。
*この先、ネタバレを含みますのでご注意ください
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○あらすじ
高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」が必須のウェブサービスとなった現代。東京にある円明学園高校で、3人の若者の運命が、交錯する。調理部部長で品行方正、しかし、あるトラウマから人付き合いにコンプレックスを抱える蓉(いるる)。母との軋轢を機に、絶対真実の愛を求め続けるオルタネート信奉者の凪津(なづ)。高校を中退し、かつてのバンド仲間の存在を求めて大阪から単身上京した尚志(なおし)。出会いと別れ、葛藤と挫折、そして苦悩の末、やがて訪れる「運命」の日。3人の未来が、人生が、加速する――。
悩み、傷つきながら、〈私たち〉が「世界との距離をつかむまで」を端正かつエモーショナルに描く。3年ぶり、渾身の新作長編。
*加藤シゲアキ『オルタネート』新潮社公式サイトから引用
○装丁・装画について
本作は
装画:久野遥子
装丁:新潮社装幀室
の皆さんとその他関係各所の企業の方々によって創られています。
今回もジャケ買いです。
本屋さんで見たとき、"オルタネート"という学生時代の英単語帳でしか見たことのない文字列に新鮮味を感じました。
あとは私の好きな"箔押し"ですかね。パステルカラーの淡くカラフルな表紙の色使いに押されるキラキラの箔。いやぁ、美しいです。恐らくSNSのアイコンを表しているんでしょうけど、このアイコンもシンプルで洗練されていて良いですよね。
本当にありそう。
著者の加藤シゲアキ先生はもちろん、久野遥子さん、新潮社装幀室の皆さん、今回も素晴らしい作品をありがとうございました!
○感想
まず、
ストーリーがシンプルに面白い!
"高校生限定のSNS"という現代的な仕組みを軸として、登場人物の恋模様、人間関係、悩み、葛藤を盛り込んでいます。
始めはいくつかの話がそれぞれ独立しているように思えるけど、ページをめくるにつれてそれぞれが絡み合っていく。同じ世界線じゃないように感じられて、本当は全て同じ世界で同じ時間軸で進んでいる。
私以外の人々も、それぞれ自分の時間を生きている
そんなことを感じさせてくれる展開でした。
それぞれの物語がパズルのように噛み合っていく後半は続きが気になって、読みたい気持ちが加速してましたね。
ただ、まぁ読書感想ということで人それぞれ好みや意見が分かれることは百も承知の上で、この本を生み出した著者の加藤シゲアキ先生含め本作に関わった全ての方々への敬意を忘れていないという前提の上で私の感想を言わせていただくならば、最後までの盛り上げが凄かった分、終わり方は「普通だなぁ」と感じてしまい、少し残念な気持ちもしました。
いやー、素人が何言ってんだって感じなんですけどね。ほんとに。
私がこれまで読んできた、なんというか所謂"印象に残っている作品"たちは、読んだ後に
ぐわぁー!終わったー!終わってしまったぁぁ!
みたいな感覚があるわけですよ。
読み終えた達成感と、世界観の没入から解放された解放感と、嵐が通り過ぎたような喪失感というか、そんな感じ。
共感できる方いますかね?
その感覚が、本作は少なかったかなぁという感じがしています。
なんでしょうね。
自分でも何を求めているのか、いたのか、わかりませんが、強いていうならば、もっと
いい意味で裏切られた感
が欲しかったのかなと思います。
ネタバレですが、
"ワンポーション"の決勝。
晴杏学院・円明学園・永生第一の3校が残った時点で、私は「あぁ、晴杏が勝って、蓉と三浦くんはどっちも負けて勝ち負け無しのハッピーエンドかな」と思いました。でも正直こういう予想が裏切られるから、読書って面白いんだなと個人的には思うんです。
実際、今まで「面白い」と思った作品から私の嗜好を分析すると、幾度となくこういう"予想"を裏切ってくれた作品は、やはり展開が読めなくて面白いと感じていたと思います。
それが今回は、「あ、本当にそうなるんだ」と思ってしまったので、終わり方が普通だと感じてしまったのだと思います。
もちろん個人的な感想ですし、裏切られたいというのも個人的な嗜好なので、作品は全く悪くありません。
ストーリーは単純に面白いけど、これまでの自分の嗜好とはまた違った感じで終わったな
という感じですね。
でも作品全体としては、私自身が全然知らない料理の話が出てきたりで新しいことに触れられてとても面白かったですし、さまざまな思いを抱えたシェアハウスの人々、実際ここでは作品終盤で明かされるストーカーの正体は驚きましたし、純粋にこの作品の面白さは他にもたくさん感じられました!
人生自分の一番好きな形の作品ばっかり読んでいてもつまらないですしね。
今回もこの作品に出会えて本当に良かったです!
○最後に
この作品を買ったときの記事でも話した気がしますけど、最近は芸能人の小説家も多くなってきてますよね。芸人さんやアイドルの方、YouTuberが本を出す時代です。
今まではなんだかどこか無意識にそういった芸能人の方の本って避けていた感じがあったんですけど、間違いでしたね。
今回は加藤シゲアキ先生がそれを教えてくれました。
やっぱり色んな界隈で輝ける、マルチに活躍できる能力を持った人って本当に凄いですよね。
まぁジャケ買いのときに作者が誰かなんて確認してないんですけどね。
一冊目ジャケ買い→それが良かったら他の作品を作者買い。
みたいな感じでもいいのかなと個人的には思います!
○著者について
加藤シゲアキ(かとうしげあき)
1987年生まれ、大阪府出身。青山学院大学法学部卒。NEWS のメンバーとして活動しながら、2012年1月に『ピンクとグレー』で作家デビュー。以降『閃光スクランブル』、『Burn.-バーン-』、『傘をもたない蟻たちは』、『チュベローズで待ってる(AGE22・AGE32)』 とヒット作を生み出し続け、2020年3月には初のエッセイ集『できることならスティードで』を刊行。アイドルと作家の両立が話題を呼んでいる。
*加藤シゲアキ『オルタネート』新潮社公式サイトから引用
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