家小さく木犀の香の大いなる  高野素十

貧しさは少しも恥ではなく、それをどのように受け入れるかがその人の人生を決める。松下幸之助は、貧乏であったことが成功の鍵であったと述べている。明治大正昭和の家庭はどこも貧しく掘っ立て小屋のような家であった。ましてや戦争で焼け野原から始まる暮らしは雨漏りがして隙間風が吹き抜ける。しかし、気力は充溢していた。庭に植えられた木犀は、年ごとに大きくなり、屋根を越えるほどになる。純粋で甘く気品に溢れて香る。

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