斧入れて香におどろくや冬木立 蕪村

木の香りといって思い浮かぶのは、風のない夕暮れに落葉した桜の木の下を通ったときのことである。上品な桜の香りにうっとり。そしてなにより驚いたのは、花も葉もないのに、しっかり桜の香りがしたことである。まぎれもなく桜の体躯から発しているのだった。千載一遇のチャンスに巡りあえたのかもしれなかった。風がなく空気が澄んでいた。動物と同じように植物も、生きているゆえに特有の香りを放つ。命のエネルギーを発散させている。


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