※個人の感想です(C)

 今日も感想を書いていく。ブンゲイファイトクラブのCグループ。

おつきみ
なんて愛おしい文章なのだろうか、わたしは2、3枚読んだ辺りからずっと祈っていた。ハッピーエンドハッピーエンド、不幸くるな不幸くるな。そして最後に本当のお母さんが現れる。後ろめたいことをしていたのか、よくわからないがとんでもなく寂しい気持ちになる。やはりこういう結末がないとインパクトに欠けるのか、幸せなまま終わったら予選落ちしてしまうのか、ああハッピーエンドでもいいじゃないか、そう祈る心がこれを傑作にするのかもしれない。一人でつくるだんご、小さい生のだんごを口に入れてみるときの寂しさたるや。

神様
神様とは何なのかを、想像させるようなSF。人間が作るといっているから、機械やAIのようなものだろうか、いやいや、機械には機械の神様がいるといっている。人知を超えたものを人類が生み出してしまい手に負えなくなる、というようなことだろう。我々の想像する機械やAIを越えた、そのテクノロジーが神様なのだ 。いきすぎたテクノロジーが何をもたらすか、ということを考え始めると奥の深い作品。あと、1枚目から2枚目にかけてとても長い一文になっている。それでもすらすらと読めて入ってくる辺りの文章はすごい。

空華の日
タヌキに化かされたようなエンターテイメント。空華という言葉を知らなかったので調べたら、目の病気とかで、見えないはずのものが見えるという状態をさす仏教用語だった。どんな因果でこんなことになっているのかまでは分からないが、これから何が始まるのだろうかという、漫画の冒頭のような面白さがあった。

叫び声
女性が襲われたときの叫び声がずっと頭から消えない主人公、しかしそれを消し去りたいとは思っていないようだ。叫び声に対する嫌悪や、自分が何も出来なかったことに対する罪悪感みたいなものはなく、叫び声に耳を澄ませて、ずっとその声を聴いている。もっと聞きたいのだろうか。それから仕事を辞めて、恋人とも別れる。主人公が考えているのは、一緒に叫び声を聞いて、それが耳を澄ませば聞こえると言っていた女のことだけだ。その女との繋がりはこの頭の中に届く叫び声だけで、主人公はそれを手放したくないのではないか。


聡子の帰国
まず登場人物がこの掌編で十人くらいでてきて、それを読ませるというのがすごい。言いたいことが言えない歯がゆさ、癪な感じ、もどかしい感じが、複雑な人間関係の中で見事に描かれていて、会話の自然さから何からものすごい力量に思える。何も言わない美学があり、勢いで言ってしまえば後悔する、こういう感覚は日本の文学っぽいなと思った。

 個人的には相当激戦区だが、おつきみが一番好きだ。一番感情をもっていかれた。だんだん感想を書くのが楽しくなってきた。

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shizu
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