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『坊ちゃん』(夏目漱石)

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。小使に負ぶさって帰って来た時、おやじが大きな眼をして二階ぐらいから飛び降りて腰を抜かす奴があるかと云ったから、この次は抜かさずに飛んで見せますと答えた。
『坊ちゃん』(夏目漱石)冒頭より


夏目漱石の小説は、いつも書き出しに心が踊ります。声に出した途端、落語のようなリズムが自分の内側から沸き起こって、なんだか”その気”になってしまうのです。いつしか自分が「坊ちゃん」その人になっていて、勢いよく二階から飛び降りてみたくなる・・は言い過ぎとしても、もしかしたらという気にさえなってきます。

『草枕』では、「山路を歩きながらこう考えた。智に働けば角が立つ、常に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角人の世は住みにくい。」
『三四郎』では、「うとうととして目が覚めると女はいつの間にか、隣の爺さんと話を始めている。この爺さんはたしかに前の前の駅から乗った田舎者である。」
『それから』では、「誰か慌ただしく門前を駆けていく行く足音がした時、代助の頭の中には、大きな俎下駄(まなげた)が食うから、ぶら下がっていた。」

いずれも冒頭の数行で、瞬く間に小説の世界へ潜り込んでいきます。夏目漱石は見事だなぁ・・と、声に出してより凄さがわかります。

『坊ちゃん』をこの秋に選んだのは、近いうちにオンラインで「漱石コース」を立ち上げたいなと目論んでいるからです。一つの作品がとても長い漱石を、どのようにコースへ組み立てていくのか、まだしばらく準備が必要ですが、きっと近々・・・。

今月のブンガクコースは、『坊ちゃん』(夏目漱石)です。
ブンガクコースは作家の年譜もついていて、その小説が書かれた時作家はどういう人生を送っていたか?という背景も一緒にご紹介しています。

9月最終週の日程から、10月のコースも承ります。
待ちに待ちに待った秋。ブンガクで夜長を楽しむのはいかがでしょうか。

2023年10月のOnlineスケジュール
http://utukusiki.com/202310_online/

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