『和紙の美』(柳宗悦)
*2023年4月朗読教室テキスト アドバンス
*著者 柳宗悦
なぜ手漉だと紙が温くなるのか。なぜ自然のまゝの色には間違ひがないのか、なぜ太陽の光で干すと紙味が冴えるのか、なぜ板干だと一段といゝのか、なぜ冬の水が紙の質を守つてくれるのか、なぜ耳附が屡々風情を増すのか、真理は自から明なやうに思へる。天然の恵みがその際に一番温く現れるからである。自然がその深みを匿すことなく示すからである。自然の力がまともに感じられると、どの紙も美しいのである。手漉の美しさを、さう考へて筋が通る。(本文より)
和紙の強さは、アーカイブの仕事をしていたときによく耳にするものでした。パルプを原料とした「洋紙」は、インクが滲まないようにするための溶剤により100年程で酸化してしまうのに対し、雁皮(がんぴ)、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)を材料とする和紙はとても丈夫で、平安時代につくられたものが1000年を耐えて現代まで丈夫に残っていることを知りました。
上の文章ではその美しさに焦点が置かれていますが、天然のままに漉かれた和紙の強さは、美しさの一要素でもあると思いました。
なぜ手漉だと紙が温くなるのか。なぜ自然のまゝの色には間違ひがないのか。なぜ、なぜという問いが、和紙の美しさに読むものを惹き込んでいきます。目の前を通過していく美しさに、「なぜ」を用いることで今一度目を向けさせて、考えさせます。紙の温かみなんて気づかなかったけれど、寒い季節に目にした和紙空間が、普段は冷え冷えとしたその場所をとても温めていたことを思い出しました。
4月の朗読教室アドバンスコースは柳宗悦の『和紙の美』です。
無印良品くらしのラジオ(spotify)、2023年1月公開の
#121 朗読「人と物」シリーズ柳宗悦「藍絵の猪口」(全3回)も合わせてお楽しみいただけますと幸いです。