見出し画像

『魚の話』(立原道造)

【7月のビギナーコース①(オンライン)】
7月のテキストは、『魚の話』ほか詩を数編(立原道造)です。
初めてご参加いただく方向けのコースです。水の中から夜空へ渡る、うつくしい物語。

|朗読テキストを考える|

或る魚はよいことをしたのでその天使がひとつの願いをかなへさせて貰ふやうに神様と約束してゐたのである。
かはいさうに!その天使はずゐぶんのんきだつた。魚が死ぬまでそのことを忘れてゐたのである。魚は最後の望みに光を食べたいと思つた、ずつと海の底にばかり生まれてから住んでゐたし光という言葉だけ沈んだ帆前船や錨⚓️からきいてそれをひどく欲しがつてゐたから。が、それは果たされなかつたのである。
天使は見た、魚が倒れて水の面の方へゆるゆると、のぼりはじめるのを。彼はあわてた。早速神様に自分の過ちをお詫びした。すると神様はその魚を星に変へて下さつたのである。魚は海のなかに一すぢの光をひいた、そのおかげでしなやかな海藻やいつも眠つてゐる岩が見えた。他の大勢の魚たちはその光について後を追はうとしたのである。
やがてその魚の星は空に入り遥かへ沈んで行つた。ー(本文)ー

『魚の話』は詩集に収められているので「詩」なんだと思うけれども、私は「おはなし」と思ってこの作品をいつも朗読しています。上記で全文です。これまでに何度も朗読してきた、大好きな物語です。

朗読を始めた最初の頃、とある作家さんの展示で「立原道造を読んでほしい」という依頼があり、初めて「立原道造」という人を知りました。立原道造は大正3年に日本橋で生まれた都会育ちの男の子で、詩では中原中也賞を受賞し、一方で東大の建築学科へ進学し優秀な成績を残したこと、でも24歳の若さで亡くなってしまっとこと。そしてのちに、彼が設計した理想の小さな家「ヒヤシンスハウス」を、その設計図をもとに後世の人が実際に浦和に建てたこと、、、。優れた経歴とともに、彼の残したほのかな灯りのような言葉の数々、そしてこの『魚の話』に描かれたような存在の美しさに惹かれていきました。
のんきな天使も、気の利く神様も、星となった魚も、それぞれが愛おしい。朗読が初めての方に、まずは「最初の物語」として読んでほしいテキストを選んでみました。(もちろん朗読経験者の方にも。)

ご予約をお待ちしております。
http://utukusiki.com/

#朗読 #朗読教室 #ウツクシキ #オンライン
#立原道造 #魚の話 #詩 #ヒヤシンスハウス
#PoetryReading #ReadingWorkshop #Rodoku

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?