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電話の向こうは男性の声。

着信は母からのはず。

聞こえたのは

ジコ

の二文字。


職場を飛び出し車を走らせた。

パトカー、消防車、救急車。

警官の指示も待たず停車し、救急車に走り寄る。

血まみれの母。

私の最後の肉親。

手を握ると握り返してきた。

意識レベルはⅠー1、感覚異常、視覚異常等なし。

頭部の血腫は皮下か。頭蓋骨内はCTだな…出血箇所は何処だ?後頭部か?

一瞬看護師になって母の状態確認してしまった。


頭部皮下血腫、後頭部の裂傷は大きく縫合したものの、頭蓋骨、頭蓋骨内は異常なし。入院なく自宅にて経過観察で済んだ。


最後の肉親を失うところだった。

私は馬鹿だから、こんな目に合わないとわからないのだ。私が事故に遭えばよかったのに。何故母だったんだ。

大切なものを失うことへの恐怖を、自分ではなく、母に教わることになってしまった。

母に二度と自傷しないことを誓い、謝り、2人して泣いた。


どうか、

大切なものをたくさんかかえている人は、

いつ、だれが、どうなるか、わからない

そのことを、心に叩きつけてほしい

馬鹿な私のように、あとから気づくのではなく

日々、その一瞬一瞬が、最期かもしれないことを

知っていてほしい





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