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【子連れ旅行記その③】雨の日のドライブ

カヤックを満喫して、奥尻島で迎えた初めての朝。宿は素泊まりだけれど、前日なんの買い出しもしていなかったので、宿で販売している島でとれたカレイの開きを焼き、同じく1合単位で販売しているお米を炊いて朝ごはんにした。もともと民宿だったらしい宿の台所は広くて動きやすく、普段住む家のシンクが狭いからなのか、広々使えるシンクはとても快適だった。食材が置いてあるともれなくハエがたかり、辟易としそうなところだれど、前日の余韻なのか、まあ虫さんたちの住処でもあるもんな、程度に流せてしまうのはなぜだろう。
窓際のちゃぶ台に3人分のご飯とお魚一切れを並べ、いつもの時間に起きてきた息子と夫と一緒に、外を見ながら朝ごはんを食べた。海が見えるカウンターのようだ。大きな窓の外は、一本道を隔てて穏やかな海が広がるのみ。陸にあげられた漁船もあるから小さな漁港なのだろうけれど、今は使われているのだろうか。
カレイは脂が乗っていて、身がほっこりと柔らかく、何も味付けをしていないのにそれだけで十分ご飯が進む。3人で、米2合と共にあっという間に完食した。案の定息子はもっともっと食べたそうだった。

実は島での滞在中、カヤック体験以外は何も予定を入れていない。気分がころころ変わる二歳児を連れているからというものあるけれど、時間を気にせずに気が赴くままに過ごしたかったのだ。旅先で、今日何して過ごそうか、から始まる一日。何とも平和である。
宿と扉を隔ててひとつながりの建物に住む方が吹くフルートの音色が聞こえた。この島で過ごす日常はどんなものなのだろう。

朝は薄日が差していたが、昼前から雨予報だった。雨が降る前に島で過ごす間の食材の買い出しを済ませ、あとはまあのんびりドライブしようか、ということになった。せっかく非日常を味わいに来たのに!?買い出し!?と思われそうだけれど、普段の島の人々の生活も覗けそうで楽しみだった。

奥尻島は意外にも、1周すると65キロほどある大きな島だ。私たちはまず車で15分ほど走って、空港の近くの少し大きめの集落にある、島唯一のスーパー的機能があるお店に行った。
そのお店のメインはホームセンターで、店内の1/3ほどがスーパーになっていた。野菜もお肉も卵も冷凍食品も、離島への輸送費が含まれているからか、全てが少し高い。離島はものを運ぶだけでも大変だ。
ぶらりとお野菜コーナーを眺め、大根や白菜や玉ねぎといった野菜を買った。離島で日常と同じようなことをしているけれど、暮らすように過ごせていいかなと思った。駐車場の車は軽トラックと軽乗用車が多く、この島では車もパワーより小回り重視かな、なんてことを考えた。

お昼はフェリー乗り場の建物にあるイタリアンでいただいた。前日から白飯とお魚の食事が中心だったから、久々の小麦食に息子は大喜び。とにかく食べたい食べたいで大騒ぎだった。夫が頼んだ塩ラーメンはあっさりと優しく、私が頼んだ海鮮ドリアはエビや貝類たっぷりで、ついでにピザも頼んで3人で夢中になって食べ進めた。

海鮮ドリア

「そういえばカフェやケーキ屋さん、パン屋さん的な場所ってあるのかな」
島の方々がお茶したり、ママ友会的なものをしたり、ご褒美を食べたりする場所が気になった。調べると、すぐ近くにカフェがあるとわかり、早速いってみることにした。
島の中心部にあるその小さなお店は、パンやイタリアンのランチを扱っているようだった。その日は閉店時間が迫っていたので、好きなパンやスイーツをテイクアウトすることにした。息子は塩バターパン、夫はチョコクリームデニッシュ、私はスコーンを選んだ。もちろん息子は大喜びで、一番見た目が華やかな(夫の)チョコクリームデニッシュを持って離さなかった。すぐ開けたがるのを宥めるのが大変だったことは言うまでも無い。(結局宿に帰ってお昼寝をしている間に見えない場所にしまい、息子には塩バターパンをおやつにした。)

宿に戻ると今日泊まり合わせる若い女性2名が到着していた。挨拶もそこそこに、2歳の息子がいることを話すと遊ぶのを楽しみにしてくれた。どうやら息子はたくさん構ってもらえそうだ。

夜は、宿主さんおすすめのお寿司屋さんへ行った。盛り合わせのお寿司は光沢があって、美味しそうを超えた芸術に見える。何から食べよう。食べるのがもったいないと思うくらいだった。その中でもウニが特別で、口に入れるとほんのりとした磯の香りととろける歯応えがたまらない。もう本当においしくて、幸せだった。
そして息子のために座敷を案内してくれたり、おもちゃを用意してくれたり、お店の配慮がありがたかった。お陰様で息子は飽きずに過ごしてくれて、私と夫は久々においしいものをゆっくり味わえた。店主さんも楽しい人で、次回の来島でもぜひこのお店を再訪したい。

とにかく美味しかった〜〜!!

ということで、雨の奥尻島の1日が終わった。夜は泊まり合わせた女の子2人と、夫も交えて他愛もない話をした。札幌市近郊から来たという2人は幼馴染で家族ぐるみの長い付き合いだという。旅行にも来れるそんな間柄の友人がいるっていいなと思った。明日、私たちが今日行ったお寿司屋さんに行きたいと聞き、レンタカーを貸し出す約束をして、その日は就寝した。
静かな島の日々は、段々と過ぎていく。明日は晴れ予報である。                                                                                                                                                                                                           



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