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月~金で有休を取る勇気

我が家では今、密やかに壮大な計画が持ち上がっている。

この夏、土曜日~翌週の金曜日までの6泊7日、旅に出たい。

私と夫は生粋の(?)旅好きである。何を隠そう出会いはゲストハウスなのだから。旅が私の人生を動かしてくれたと言っても全くもって過言ではない。
現住所も、どちらかというと「人が住む」というよりは「旅先」のイメージが強めな田舎の観光地である。お互いの地元でないこともあって、住み始めて5年以上が経過した今でも超長期の旅人気分がもしかしたら抜けていないかもしれない。多分抜けていない。

都市近郊で育った私は、昔から田舎暮らしに対して理由なき強い憧れがあり、今はそれが叶ってとても嬉しいのだけれど、やはりデメリットというのも感じている。その一つが旅に出にくいこと。最寄りの新幹線の駅までは片道2時間少々(のぞみは止まらない)、空港までも片道2時間少々(そして行先は羽田と新千歳だけらしい。ゆえにまだ使ったことはない)。海なし県なので県内に港というものはない。のぞみの停車駅、そしてハブ空港的なものが近くにある大都会のそのエリアへは約2時間半。なんせ住んでいる自治体から脱出するのにどうやっても片道1時間近くかかるのだから。

地元の人がしばしば「雪が降ったら本当に陸の孤島」と自虐的に語るこの地域に住んでからは、流行り病による外出制限が長かったとか、子どもが生まれたとか、そういう「旅に出にくい事情」が重なったことももちろん理由ではあるけれど、長期の旅に出ることはまあ減った。唯一、妊娠する前に新婚旅行という名目で流行り病の合間を縫って、日本最西端の与那国島に行ったのみである。そのときも、沖縄への飛行機に乗るために大都会で前泊を余儀なくされて、なかなかハードルが高いなあ、と思ったものだ。と言ってもこの地域から特急列車と飛行機2便を乗り継いで与那国島に3泊する旅程を組んで実行したのだから、我々の旅への熱(わざわざなんでそこに、と言われるところに行きたい欲求)はお察しの通りである。

前置きが長くなってしまったが、そんな我々も子どもが生まれるとどうしてもお尻が重たくなりがちで、これまで子連れで行ったのは、隣県の馴染みのゲストハウス及びそこで噂を聞いたもう少し近いゲストハウスのみに留まっている。私が育休を終えて復職してからは、夫婦で勤務体系が異なることもあり、それすらままならなくなってしまった。よく考えると、昨年度宿泊を伴った遠出は私の実家のみだ。何と不本意な。

復職から2年目となり、子どもの身体も随分と丈夫になってきて、まあ仕事は相変わらずドタバタしかないけれど、また好きで好きでしょうがない旅に出たいな、と妄想する余裕が出てきた。そこで真っ先に浮かんだのが、結婚前に夫がひとりで訪れぜひ再訪したい!!と絶賛していた北海道の奥尻島である。

何が見どころだとか、どんなおいしいものがあるとか、そういうことは正直全然予習できていないのだけれど、夫が島でお世話になったゲストハウスを拠点にのんびりゆったりと気が赴くままに過ごしたり、子どもと大自然の空気をいっぱい吸ってエネルギーチャージしたり、そんなことを想像するだけでもうわくわくが止まらないのである。ゲストハウスのSNSによく登場するあっついあっつい温泉にも入ってみたいなぁ。子どもはびっくりして泣きそうだけれど。ゲストハウスのオーナーさんとそのご家族にはもちろん会ったことがないけれど、夫の話を聞いたりSNSを拝見したりして、なんだかもう数年来知っているような気分になっている。勝手に。

春ごろに、車でお出かけの最中に「今年の夏あたり、奥尻島行けると思うんやけどどやろか。」と思いつきで言ってみたら、夫は少し考えて「ありやな。」と一言。決まりだ。夫はすぐに考えられる行き方をリサーチし、数日後にはゲストハウスに数年ぶりに電話して、おおよその混み状況を聞き出してくれた。その時期に合わせて、月~金の特別休暇を申請してくれることになった。
私はというと、7~9月の間に有休とは別の夏季休暇を3日間取る権利がある。今年は夫の特別休暇に合わせる形で取り、あとは土日をうまく組み合わせればいいかなと思っていた。

そんなことをぼんやりと妄想していたちょうどその頃、所属していたオンラインサロンのオフ会的な宿泊イベントに誘われた。日程は、奥尻島行きの直前の土日。お、お、時期が被ってしまった。いやでも、そのイベントでは、気心知れた、普段なかなか会えない素敵な方々に会える。そして、山の中の古民家で1日楽しいことをたくさんできる。子どもも遊べる。絶対に素敵すぎる週末になる。

よし、両方実行しよう。私の行きたい!を両方叶えようじゃないか。

ということで、

土曜日に自宅を出発して車で山の中の古民家に行き、翌朝そこからハブ空港まで車を走らせて函館までの飛行機に乗り、その日は函館で前泊して翌日奥尻島に飛び、3泊滞在して函館に戻り、函館で後泊して翌日ハブ空港に飛び、最後は車で自宅に帰ってこよう

文字にするとこうなった。
とんでもない大計画だ。
山の中の古民家から車を走らせて空港に行くこと(約2時間)、帰りは空港からまた車で帰ること(3時間弱)、そして何より利用する予定のハブ空港から奥尻島を往復しようと思うと函館で前後泊が必要なのがミソだ。結果、最初に持ち上がった奥尻島での滞在と同じ泊数だけ、他の箇所でも宿泊することになる。

交通費がかかるとか、なんで直前に山の中の古民家が挟まるのとか、移動距離がもはや想像できないとか、長期の外出&移動で子どもが体調を崩しそうだとか、パッと思いつくだけでも懸念点は枚挙に暇がないけれど、その辺は実際大した問題だと思っていない。だってきっと楽しいから。行ってよかった~ってなるのがわかっているから。
どちらかというと最大の問題は

お世辞にも労働環境がいいとは言えない勤務の私が、
子どもの関係で普段から部署の誰よりも有休を取っている私が、
時短勤務でありながらお迎えがない昨日は19時まで職場にいてしまった私が、

月~金で休暇を取れるのか

である。
いや、取れるのだ。取ってはならないなんて就業規則が存在するわけがない。勤続〇周年だとか、新婚旅行だとか、そういう名目で取る人はきっといるはずだ。

要は、自分の気持ちだけなのである。
周りに迷惑をかけるとか(まあそりゃかけるんだけれど)、部署の人に何を思われるだろうとか(まあそりゃこいつ強靭なメンタルだな、仕事振られるこっちの身にもなれよ、くらいに思う人はいるだろうけれど)、そういう「仕事があるのにそんな長く休むなんて」的なよくある内外の圧に耐えられるかどうかだ。

でも、でも。もし逆の立場だったら。
私は「す、すみません休んで…」と恐縮されて、終わった後に職場でてんてこ舞いになって落ち込む姿を想像しながら旅に出られるよりも、「めっちゃ楽しみなんです!そのためにここまで頑張ってきたんです!!行ってきます!!」と言われて休まれる方がよほど心地いい。「楽しんできてください!!」と送り出せる。申し訳なさそうにされると、こちらもああ、私はそんなことできないのに…みたいな空気になってしまう。気がする。

イケメンだけれどめちゃくちゃ昭和な上司(偏見)に相談したら、「仕事のスケジュールを考えて、ちゃんと前倒しにしてそこを確保した上で行ってきたらいいよ。」と言われた。おう。そうさせてもらいますよ。建前で言ったのかもしれないけれど。実際は何をどう言われるのかわからないけれど。

こんなに息巻いておきながら、結局帰りの飛行機はまだ取れていない。一日早く帰るという選択肢を自分の中で残してしまっている。まあそれでもいいんだけどさ。でもこういうところの妥協って後に残るもんですよね。

信用したい。信頼したい。周りの人のことも、家族のことも、自分のことも。その上で、自分のやりたいを叶えたいのだ。大袈裟ではなく。本当に。

そして、この夏に、一生残る思い出をつくりたい。
後で振り返って、よく行ったよね~でもほんっといってよかったよね~
と言う自分を想像しながら、夢のような1週間に向かっていきたいと思う。

それまで、ちょっとばかり、仕事と育児頑張ろう。










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