学校では教えてもらえない化学構造
理系学生なら高校でほとんど必ず学ぶ「化学」。見えもしないミクロな世界のことを学んだり、煩雑な計算をして答えを導き出したり。イメージしにくいことからあまり好かれない科目かもしれません。
実際、現役時代の僕も化学はあまり好きではありませんでした。暗記はそこそこできましたが計算があまり得意ではなく、気体の状態方程式や反応速度のところで苦戦しました。今やれと言われてもできるか正直自信ないです。
そんな中でも僕が好んで見ていた図がこれ。
同じ鉄イオンなのに2価か3価かだけでここまで反応が変わるなんてすごい、あと単純にカラフルで綺麗だったという単純な理由でしたが、ぼーっとしたタイミングでよくこのページを眺めていました。
そんな僕が少し前にたまたま見つけてしまった、不思議な物質たち。学校では決して教えてもらえない、ユーモアな構造を持った物質たちを、今回はオムニバス形式でお伝えします。
ひずみの塊!キュバン
まずご紹介するのは「キュバン」。その名前はキューブ (cube) から来ています。この物質は大きなエネルギーを保持していることで有名なのですが、これには構造上の理由があります。
化学をかじったことのある人ならよく五員環構造とか、六員環構造という言葉を聞くことがあるかもしれません。しかし「四員環」という響きには聞き馴染みがないのではないでしょうか?
それもそのはず、炭素4つで正方形を作るという構造は、原子軌道の関係でひずみが大きく安定しないのです。ひずみが存在するということは、そこにエネルギーを内包していることと結びつきます。ひずみが大きすぎて構造が壊れた時に、その内包しているエネルギーが放出されるというイメージです。
改めてキュバンの上の立体構造を見ると、四員環が立方体の面の数だけ、つまり6つも存在していることになります。これだけひずみが大きい構造を取るため、構造化までには長い年月を要したようです。また多量なエネルギーを持っている炭化水素であることから、燃料としての有用性が期待されているとのこと。今後知名度がどんどん上がっていきそうな物質ですね。
名前だけ?ハウサン
続いてご紹介するのは、C5H8のこちらの物質。
名前は「ハウサン (housane)」。四角形の構造体に三角形の構造体が乗っており、形が家のように見えることからその名がついたとのことです。が、これ以外にwikiには特筆すべき情報が載っていません。常温で無色液体であるとのことですが、これといって特徴的な形質はないようです。
僕の勝手な予想ですが、この物質は科学者の遊び心によって生まれた気がしてなりません。「こんな物質作ってみたいよね!」から始まって、作れたはいいが特に面白い形質はなかった…ある意味では失敗作と言えるのかもしれませんが、これくらい尖った物質が紹介される場が少しはあっていいような気もします。
クイズ① この物質の名称は?
構造ありきで名前が作られている物質は、これといった性質がないものが多く書くことがないので、ここからはクイズ形式にしたいと思います。
下に示す平面構造式を持つ物質の名称はなんでしょう?
ヒントは、「ある動物に構造が似ている」
正解は…
ペンギノン[penguinone] (ペンギンに似ている) でした!
接尾辞 (後につく "one") は、ケトンの一種 (-CO-) であることに由来するそうです。「ペンギンに似てるな〜」と当てられたら大したもんなので、細かいところは気にしないで大丈夫です。
「言われてみれば」って思うんじゃないでしょうか?左右に伸びる炭素骨格がペンギンの短い羽を、下に伸びる2本の炭素骨格が短い足に対応しています。多少ずんぐりむっくりな形になっていますが、愛着の湧く形じゃないでしょうか?
クイズ② 皆さんもみたことのある形です
最後のクイズはベンゼン環 (C6H6) が5つ繋がったこちらの構造体。皆さんも一度はみたことがある、あのマークに似ています。名前、わかりますか?
ちなみにこちらは「フェナレン」
ポケモンのミツハニーに似てて可愛いなと思って調べてみたら、化石燃料の燃焼によって形成される大気汚染物質らしいです…
それはさておき正解は…
オリンピセン [Olympicene] (オリンピックのマークに似ている) でした!
最近パリ五輪がありましたから、ピンと来た方も多いのでは?
皆さんも面白い構造式の物質、探してみてください。
それでは今日はこのへんで。
うつろでした。