水道民営化が、ヤバい
水道民営化も非常に問題です。2018年12月に改正水道法が成立していますが、消費税が10%に引き上げられた時とタイミングが同じだったので増税のほうに注意が向いてしまっていた人もが多いかもしれません。
きっかけは、2013年4月にワシントンのCSIS(米戦略国際問題研究所)を訪れた麻生太郎副総理が放った「世界中ほとんどの国ではプライベートの会社が水道を運営しておられますが、日本では自治省以外ではこの水道を扱うことはできません。しかし水道の料金を回収する99.99%というようなシステムを持っている国は日本の水道会社以外にありませんけれども、この水道はすべて国営もしくは市営・町営でできていて、こういったものをすべて民営化します」という言葉です。日本が守ってきた大切な水を勝手に売り渡す宣言をしたのです。
世界の水ビジネスの民間企業の3大メジャーといえば、ヴェオリア、スエズ、テムズウォーターで、世界の上下水道民営化市場の7~8割を握っているとされています。日本企業とは桁違いの規模です。長きに渡る民営化の歴史やノウハウを持つウォーターバロン(水道事業の国際的な)が参入したら、日本に勝ち目があるとは思えません。
しかも、麻生副総理は「世界中ほとんどの国ではプライベートの会社が水道を運営」していると言っていましたが、現状の世界における水道事業の潮流は「再公営化」なのです。
・フランス・パリ市
1984年にヴェオリアとスエズの2社と公設民営で契約したものの、水道料金が2.25倍に跳ね上がった。財務の不透明さなどに市民の批判が集まり、2010年に再公営化。水道料金は8パーセント値下げに。
・アメリカ・アトランタ市
1998年に公設民営で契約。配水阻害、泥水の地上噴出、水道水の異物混入や汚濁などが続出し、料金は毎年値上げされた。その結果、2003年に市直営に。
・ドイツ・ベルリン市
1999年に第三セクター化。出資者に8パーセントの株主資本利益率(ROE)保証の密約を結び、設備投資不足と料金高騰を招いたため2013年に再公営化された。
もちろん、民営化されて国民がメリットを感じられる方向に進むなら文句はありませんが、金融資本直下の多国籍企業がそんなことを考えるわけはなく、今のところ水道料金の高騰や緊急時の対応など問題は山積です。
とくに私が不安視しているのは水質の低下です。
たとえば外資企業が参入した場合、彼らが提供する効率重視の水処理法(急速ろ過)では、汚れの凝集工程で使用されるポリ塩化アルミニウム(PAC)と硫酸アルミニウム(硫酸バンド)により、水道水に酸化アルミが溶存する可能性が高まります。アルミニウムは摂取によって健康被害の可能性が高まることでも知られています。にもかかわらず、上水道料金は高くなるのです。
東京に関していうと、府中、小平、調布、立川、西東京、武蔵野などは、下水道事業(PPPやPFI)の窓口を設置しています。PPPとは官民連携とか半官半民などと訳されている協定で、大企業と公営が半分ずつ立場を分け合ってその運営をしていくことです。つまり、進める事は既に決まっていて、下水道の売却をしています。
なぜ下水道かというと、一般市民は上水道だと反対するだろうから、先に下水道からはじめておけば分からないだろうということです。これで貧民は逆らわないだろうと考えたのでしょう。
なお、青梅は既に実施済みです。そうやってどんどん公共事業を多国籍事業が買うというモデルを進めています。日本の水道普及率は高いから、それを買うと水企業という多国籍企業は巨万の富を得るものの、都民や国民は水道で何もいいことがありません。
水道は、電気やガスとは異なり、たとえ民営化しても個人で自由に選べません。水道を選ぶ権利は自治体に委ねられています。
現状、宮城県や浜松市など部分的に民営化が進んでおり、もう喉元を外資企業につかまれているといってもいいでしょう。生きるために最も必要なものを支配するのが彼らのやり方なのです。