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4月に聴いたアルバム:ジャズ編(日記)


Pharoah Sanders / Love in Us All

1974年作。大曲二曲から成る。
M2“To John”はコルトレーン風の壮絶な曲。ただ白眉はM1“Love Is Everywhere”の方かと思う。
60年代のゴチャゴチャした汗くさいスピリチュアル・ジャズの残雪は消え去り、優しい響きとピュアで晴れやかな感興が満ちている。ピースフルなジャケ写も好き。春の訪れに相応しい名盤。
(2024.3.30)

トーマス・スタンコ/尼僧ヨアンナ

1994年録音、1961年のポーランド映画『尼僧ヨアンナ (原題“Matka Joanna”)』よりインスパイアされたアルバム。
静的なフリー・インプロヴィゼーションで、かなりECM的な音楽。ボボ・ステンソン(p)とアンデルス・ヨルミン(b)はヨーロピアンな繊細なコードとタッチで演奏し、トニー・オクスレイ(dr)はそれを邪魔することなく、しかしかなり自由に多彩に叩いていく。スタンコ(trp)は出番が少なめだが、それは非難されるべきことではなく、全体のサウンドをデザインすることに重きを置いているのだと思う。玄人、もしくはECMファン向けのアルバム。
(2024.3.31)

Egberto Gismonti / Alma

1986年作。ラテン、ジャズ、クラシック、フォーク、ゴスペル…広大な音楽の海を、ほとんどピアノ一台によって、自由闊達に航海していく…これはホントにすごい!たまに入ってくるシンセの音もニクい。
ラテン音楽が好きな方も、ピーターソンやミッシェル・カミロが好きな方も、ガーシュウィン、カプースチン、ヒナステラが好きな方も大歓迎!自由で豊かで生き生きとした音楽が詰まってます。
(2024.4.1)

Tomasz Stańko / Litania – Music of Krzysztof Komeda

1997年作。かつての仲間、クシシュトフ・コメダの作品をカバー。コメダをそこまで聴いていないのでおいそれとは書けないが、ボボ・ステンソンのピアノはコメダより柔らかで、ソロ部分はとても聴きやすく、さらにスタンコの情感溢れるプレイを引き立ててもいる。
コメダと共演経験のあるベルント・ローゼングレン(as)のM8“Ballad for Bernt”でのプレイも、ゲスト参加しているテリエ・リピダル(gt)のM9“The Witch”でのプレイも素晴らしい。心の込もった、見事な再創造。
(2024.4.1)

パット・メセニー・グループ/ファースト・サークル

1984年、新メンバーを迎えてのグループ名義第4作。M1“Forward March”は冒頭から「!?」。M2“Yolanda, You Learn”でのライル・メイズ(key)はいつになく元気一杯。タイトル曲のM3“The First Circle”はライヒっぽい導入に爽やかなボーカルとギターが加わり、清々しい風景が眼前に展開されていく。
ロックを基調としながら、ラテン的な要素をメセニーらしい耽美的な趣でまとめた名作であり、その後のメセニーの音楽を方向付けた重要作。
(2024.4.2)

Nina Simone / I Put a Spell on You

1965年作。バックはストリングスやブラスでR&Bっぽいが、シモンの歌声に甘いところはなく、真に迫った、拡張高いボーカル・アルバムとなっている。慈愛に満ちたM5“July Tree”、力強いM7“Feeling Good”、そして切々たるタイトル曲(M1)など特に素晴らしい。
(2024.4.2)

Weldon Irvine / Liberated Brother

ブラック・ミュージックの偉大な作曲家、ウェルドン・アーヴィンの1972年1stアルバム。
M1“Liberated Brother”から至高のグルーヴが心地よい。前半の楽器編成は、鍵盤、ドラム、ベース、パーカッション、エレキギター、フリューゲル・ホルン、テナー・サックスから成り、厚ぼった過ぎず、かといって全くへなちょこでない、絶妙なバランスを保つ。
普通のモダン・ジャズも演っているが、インプロ合戦にはならず、やはり前半と同じように、賢密な、痒いところに手が届くようなアンサンブルを聴くことができる。流石です。
(2024.4.2)

デオダート/ファースト・クックー

1975年作。スタンダード曲は勿論、フレデリック・ディーリアスからレッド・ツェッペリンまで、多様なジャンルの音楽が、デオダート流のスマートなフュージョンに生まれ変わっている。M5〈キャラヴァン〉でのエリオット・ランドール(gt)のソロがカッコいい!
(2024.4.4)

Azimuth / Azimuth

キーボード、トランペット、ヴォーカルから成るジャズ・グループ、アジムスの1977年1stアルバム。
ミニマリスティックなジョン・テイラーのピアノの上で浮遊するノルマ・ウィンストンの清廉な歌声、そこにケニー・ホイーラーが静かに息を吐く。シンセの効果が未来感を醸しており、面白い。
(2024.4.4)

Nina Simone / Black Gold

1969年ライヴ盤。R&B的な歌も良いが、コンガだけで歌うM4“Westwind”と、美しいピアノを聴かせるM5“Who Knows Where the Time Goes?”は、特にニーナの声の凄まじさに圧倒される。ラストは名曲M7“To Be Young, Gifted and Black”で大団円。キーボードを弾くのは作曲者、ウェルドン・アーヴィンだ。
(2024.4.5)

Azimuth / The Touchstone

オリジナル・ジャケット

1978年2nd。フュージョンと時機同じうして斯様な静寂閑雅たる音楽がジャズより生まれ出でしは些か不可思議な心持せむ。併し即興の限界に因て音楽のコンポジションに傾きしが点に於いては両者相通じたり。然るにモダンかフリーかてふ底本の異なるに過ぎず。
(2024.4.8)

Azimuth with Ralph Towner / Départ

オリジナル・ジャケット

1979年作。デレク・ベイリーのたぐひ、ウェーベルンと似たれば、畢竟全き即興楽の耳に聴こへしはコンポジションと違わず。此処に聴かるるラルフ・タウナー亦寂々たる妙音奏でし楽人なれば、そのアジムスと相和すさま、いみじきことかぎりなし。
(2024.4.8)

Ron Carter & Jim Hall / Alone Together

1972年ライヴ盤。カーター(bs)は質実剛健に曲の骨子を作り、ジム・ホール(gt)が旋律とハーモニーを、絶妙なフレージングとタイミングで弾いていく。
ギターとベースという質素な編成ながら、M1“St. Thomas”が始まった瞬間から、その紡ぎ出される音楽に隙が全くないことに驚く。微に入り細を穿った名演奏。知的で静かなイメージを喚起させるジャケットも、この音楽にとてもマッチしている。
(2024.4.14)

Black Lives / People of Earth

2024年発表の近作で、ベテランベーシスト、レジー・ワシントン率いるユニットの第2作。
ネオ・ソウルありヒップホップあり、いま流行りの所謂『Black Radio』的作品だが、Mベース出身のミュージシャンもいたりして、フュージョンナンバーが有るのがGOOD。あとターンテーブルも活躍しててアガる。
このアルバムは、正直そこまで有名でないレジー・ワシントンの評価を確立させていく足掛かりとなるものではないか、とか思う。今後ベテラン中堅ジャズメンもニューチャプター系のアルバムをバシバシ発表していくようになったら面白いね!
(2024.4.15)

Enrico Pieranunzi / No Man's Land

1989年録音。雪融け水が流れるような美しく正確なタッチ。それは冷たさを意味するのではない。
必須条項であるテクニック、選び抜かれた音、考え抜かれた構成、しかしこのジャズ・ピアニストの、耳を傾けるべき点は、その先にある豊麗な抒情であり、それが故にこのアルバムは、いまだ瑞々しさを失わない。
程よくバウンドするマーク・ジョンソンのベースも、心地よい。
(2024.4.22)

Geri Allen / The Printmakers

1984年録音。M-BASE出身でありながら、電子楽器の使用はせずアコースティックで一貫させており、フリー/ポスト・バップ的でありながら、やはりM-BASE出身者らしい一風変わった雰囲気を持つ、面白いピアノ・トリオ。
M1“A Celebration of All Life”の冒頭は、ボイス・パーカッション(アンドリュー・シリル(dr)が演奏、全体的に彼の活躍が光っている)から始まる。なかなか刺激的だ。
ピアノソロ曲であるM7“When Kabuya Dances”にて顕著だが、リズム面やモーダルな旋律など、ダラー・ブランドにも通ずるアフリカンなフィーリングが横溢している。最高。
ジェリ・アレン、ようやく聴けて嬉しい。
(2024.4.24)

Geri Allen / Open on All Sides in the Middle

1987年のまさしくM-BASE的な作品。シャヒーダ・ヌルラーのヴォイス(歌うし喋る)がイイ。そしてやっぱスティーブ・コールマン(as)は素晴らしい。あと個人的にはタップダンスみたいなカタカタした小気味良い音が好きだった。
ただ、ジェリ・アレンはリーダーながら、若干裏方に回っている感は否めない。それでも12分にも及ぶ大曲、M6“I Sang a Bright Green Tear for All of Us This Year...”では美しいピアノを聴かせる。
(2024.4.24)

Enrico Pieranunzi / Seaward

1994年録音。エヴァンス風のオリジナル曲の数々が美しい。ともすると聞き流してしまえそうな流麗さだが、耳をそばだてると、誠に繊細微妙な抒情性が感じられ、思わずため息が漏れる。ハイン・ヴァン・デ・ガインのベースもまた精妙。
(2024.4.26)

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