見出し画像

日本の魅力も課題も心から理解できるのは、地方。ホンモノの探究は、“感情”が動かないと始まらない【うつほのわVol.3:石川一郎先生(理事・教育改革プロデューサー)】

みなさん、こんにちは!

うつほの杜学園設立準備会は、2025年4月にまずは私立の小学校の開校を目指す、和歌山の世界遺産・熊野古道の自然の中で教科横断型の探究型教育を軸としながら、バイリンガル教育に取り組む団体です。

この学校創りに関わっている人たちが、どんな想いを持った人たちなのか?を伝えるインタビュー記事を連載公開しています。

(過去記事)
Vol.1 仙石恭子さん(発起人・代表理事)
Vol.2 大森 美衣南先生(カリキュラムコーディネーター)

​今回は、理事・教育改革プロデューサーである、石川一郎先生へインタビューをさせていただきました。石川先生は「探究」の学びを全国で牽引されている他、数々の学校と教育のアップデートに取り組んでいらっしゃる、まさに教育の最前線にいる方です。うつほの杜学園には、校舎もまだ決まっていなかった2021年の年末から理事として参加いただいています。

■ うつほの杜学園の他にも、たくさんの学校にも関わられていると伺いました。その想いとお仕事をお聞かせください。

 現在は、全国私立学校を中心に10校と関わらせてもらいながら、首都圏・地方を行ったり来たりしています。『今の時代に求められているものに対して変化したい!』『教育のあり方を再検討したい!』という学校がとても増えてきています。ただ『変わりたいけど、どうしたらいいか分からない。』という学校が多いのも現状です。今まで築いてきた文化や伝統があり、日常的には、どの学校も子どもたちを育むことを熱心にされています。しかし、抜本的に変えることはなかなか難しいことなのです。

 一昔前は、それぞれの私立学校は、学習にフォーカスして、いい大学受験をゴールにして頑張らせていましたが、ここにきて「そうでもないな。」と…保護者や生徒が"それを望んでいないことに、学校も気付き始めたのです。「では、どう変わっていけばいいのか?」という問いに対して、先生たちの気持ちがついていけないケースが多いんですね。今までやってきたことを否定された気分になるのも仕方ありません。でも、否定からは何も始まらない。だからこそ、“対話”が重要だと思っています。

 私は、その“対話”を進める役割です。教員たちと今まで大事にしてきたことを理解しながら、“これからの時代にどんな子どもたちを育んでいきたいか?”を再考(リメイク)し、そのためのカリキュラム作りや発信をお手伝いするお仕事をしています。

▲うつほの杜学園のサマースクールにて、石川先生による「探究」についての保護者向けワークショップを実施

■様々な学校に足を運ばれていて、地方と首都圏の学校の課題や魅力の違いがあれば、教えてください。

 ありますね。首都圏は、今はとにかく私立中学受験ブームで、過熱していますよね。保護者も情報を集めるのに熱心な方が多いです。一方で、地方は、保護者の方が、自分たちが受けてきている教育をベースに考えているご家庭が多いと思います。ただ、ITの発達によって地方の子どもたちには、変化が出てきているように思います。

 学びにおいては、首都圏では、どうしても机上の学びになってしまいます。社会の課題を本から知ることはできるけれど、心から実感するには遠いんです。例えば、地域の過疎化や格差問題など、首都圏の私立学校では感じにくい。自分に、直につながっている課題ではない気がしますからね。地方には、地域課題がゴロゴロ転がっているんです。地方は行けば行くほど、世の中の動いているものとリンクしていますし、肌で感じ取ることができます。

 自然災害と闘う農家さんの苦労や管理の大変さ、後継者がいないことなども、近隣にいないと分からないことですよね。本から学ぶより、遥かに情報量が多いんです。
 首都圏・大阪などの都心を除けば、日本は8割が田舎なんですよね。地方には資源があって、そこに学びの可能性があると思っています。

■なぜ、うつほの杜学園にジョインしてくださったのか教えてください。

 うつほの“存在の面白さ”ですよね(笑)。
 私が見てきた地方の学校の中でも、良い意味で異質です。ほとんどの学校は、今あるものをどう変化させていくか?否定もせず、“整理”していく段階にあるのに対して、うつほの杜学園は、理想の旗のもとに学校を立ち上げる!そんなゼロベースのチャレンジを応援したくなりました。

 そして、本当にいいなと思ったのは、中心になって旗を振っている仙石さんと小佐田さんの二人の存在です。うつほの杜学園を立ち上げたいと思った理由が「親として、自分の子どもたちが行かせたい学校がないから、創りたい!」というところが、まず面白い!学校って、教育する側(学校)が旗を掲げて、保護者に賛同してもらうことが多いんですよね。うつほは、全く逆で、保護者目線で、児童ファースト!

 それに、仙石さんと小佐田さんの二人のバックグラウンドも、すごく魅力的です。今の時代に必要とされている資質の持ち主なんですよね。
 
 まず、仙石さんは、今まで、ご自身も大好きな“ワイン”の事業を担当し、イタリアを普通に行ったり来たりしているグローバル人材。イタリアの地方の人達と同じ目線で話してきていますよね。自分のやりたいことをベースに、世界と無理なく、楽しく繋がっていく感じが、これからの時代のグローバル人材像にピッタリだなと思いました。そんな彼女が、次世代のグローバル人材を育てたいというのが、非常にいい。
 また、彼女のプロジェクトリーダーとして、いろんな方を巻き込む能力が素晴らしいです。一人でどんどん引っ張っていくタイプではなく、“みんなでいい学校を創っていきたい!”というモットーの元、たくさんの方が関わりたい!これやってみよう!と夢を形にしていく過程がすごく魅力的です。

 小佐田さんは、理系出身のいわゆる“リケジョ”ですよね。すごくデジタルが強いんです。仕事も速くて正確なのですが、柔らかくオープンな雰囲気も持ち合わせていて、親しみやすい方ですよね。女子の理系を日本でも力を入れようとしていますが、ステレオタイプの理系ではない理系の存在が、いいロールモデルになるなと思っています。
 “選択理論”という人間関係の心理学も熱心に勉強しており、子どもたちの育て方に対して造詣が深いです。今まで子どもたちへの“指導”という考え方が主流でしたが、子どもたちを“支援”する考え方をよく理解していて、カウンセラー的な目線がものすごくあります。

 これからの時代の学校に求められている資質を、彼女たち二人はすでに持ち合わせているんです。その二人がリーダーなので、楽しみで仕方ありません。

 お二人だけではなく、チームもとても魅力的です。地域の年配の方が、お金をもらうもらわないとか関係なく、自分の得てきたもの共有してくれたり、行政が一丸となって移住を応援したり、建築チームが子どもの感性を磨くために試行錯誤したり。保護者は一緒にコミュニティを盛り上げようとしたり…みんな何かしらの役割を持っている。私もその中の一人として、教育業界に長くいる身として関わっています。それぞれに、上下関係なんかないんですよね。学校の先生だけではない多様な人材は、まさにうつほの魅力で、私が関わり続けている理由です。

▲(左)小佐田さん親子(真ん中)仙石さん親子(右)石川先生。「ふたりの親目線で創る学校が、学校という枠を超え、地域のコミュニティ創りにも活かされている」と語る石川先生。

■石川先生が考える「探究」について教えていただきたいです。

 「探究」という言葉が世の中で流行っていますが、「教科」の学びは大事です。その「教科」で学んだ知識と、世の中をつなぐものが「探究」なんですね。
 例えば、社会で熊野古道のことを学んでも、地図や文字を暗記するだけで終わってしまいます。“熊野古道は、昔からいろんな地方の人が訪れる場所だった。だからこそ、地方には多様な人や文化を受け入れる風土があり、産業が発展した…”というのは実際に見てみないと、イメージも湧きませんし、そもそも感情が動かない。
 子ども時代に、その“感覚”を体験することがとても大事だと思うんです。子どもの頃の記憶って大人になっても残っているでしょう?それこそが、原体験になり、原動力になる。
 
 今も、SDGsと言っているけれど、知識ベースだけでは、心から地球課題を解決しようとは思えないと思います。「学校の裏のあの綺麗な川を残して行きたいな。じゃあ、水の資源ってどういうところからくるのだろう?」とか「農業や自然の怖さ、どう付き合っていくかべきか?」という問いは、心が動く瞬間から始まります。心が動く=ホンモノの「探究」なんですよね。
中辺路というユニークな場所に校舎を構えるうつほの杜学園で、子どもたちが五感を研ぎ澄ませながら過ごす光景が、今から思い浮かびます。


■2024年秋のサタデールクール&説明会
夏に開催したサタデースクールに続き、秋にも学校説明会と体験スクールを実施することが決定しました。
また、オンラインでの学校説明会や移住説明会も追加開催決定!詳細は以下をご確認ください。
https://note.com/utsuho_academy/n/n06e8713ef069


◆インタビュアー/ライター:御林友希(MIHAYASHI Yuki)
シンガポール駐在帯同4年目。日本在住中は、インターナショナルキンダーガーテンの施設長を務めていた経験から、日本におけるグローバル教育に興味関心を持ち続けている。子ども達が通っていたシンガポールのインターナショナルスクールでは、Parents Association(日本でいうPTA)を2年間務め、学校と多国籍の保護者と子どもたちを繋ぎ、コミュニティ作りやイベント運営に携わっていた。
出身は、高野山の麓である和歌山県橋本市生まれ。高野山に息づく文化や哲学、伝統行事、食(農業)を肌で感じながら幼少時代を過ごしている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?