「ごまかし」
ものすごく好きな人がいた
まず表情が好きで 仕草が好きで
声が好きで 話が好きで
仕事をしている姿も好きだった
でもその人は友人の彼氏で 友人と同棲していて
それでもよく飲みに連れってってくれて
いろんな話をする中で どんどん興味を惹かれていったのだけど
「友達の彼氏だから」 そういう対象だと思わないことにした
共通の知り合いを好きになって
その話を聞いてもらって ああじゃないこうじゃないって
今思えばおかしい逃げ方をしていたように思う
最初から相手にはそういう目的があったのかもしれないけど
その人と体の関係を持つようになって それが彼女にもばれて
友達じゃなくなった
わたしは「彼女になりたい」となんども頼んだけど
受け入れてもらえることは最後までなかった
そんな中でもうどうでもいいやって
中には嫉妬させたいとかそういう浅はかな企てで
彼が知ってる人と寝たり、キスをしてみたり、
そういうこともやってみたりしたけど
なんも変わらなかった
「バランスが悪いから」「そういうことは馬鹿馬鹿しいから」と
「自分の世界を持ってる人がいい」「お前は惜しい」
あまり理解できないのだけれど 結局は体の関係だけで終わった
のちに「都合のいい女だった」と言われることになるのだけれど
そんなこと言われなくても 知ってたよってそんな話
その人と関係が切れて その人に彼女ができたことをなんとなく知った
昔会話の中で「あの普通に可愛い子」と言っていた子だった
その時の言葉がずっとひっかかっていたので
ああ なるほどな と ストンと落ちた
彼の面影を見て 私を好きだと言ってくれる人と付き合った
わたしを受け入れてくれるんじゃないかって思って
でもすぐダメになって 好きじゃなかったから
いろんなことから逃げたくて 忘れさせてくれるものを求めた
嫌気がさした日常から 切り離してくれるもの
旅に出たいと願った
一緒に旅にいってくれる人が現れて
その人との旅はとても楽だった
自分のままでいてよくて
全てを受け入れてもらえて
自分の嫌な顔すら かわいいと言ってくれる
受け入れられなかったということを 忘れさせてくれた
わたしにとって 都合が良かった
ありがたかった やすらぎを感じた
ここで旅をやめたいと思った
ここにいる限り わたしはいたいわたしでいられると思った
大切にしてくれるから 大切にすることで返そうと思った
一生ここにいて構わないと思った
この人の隣にずっといたいと思う気持ちは揺るがないと思ってた
1本の電話が来た
昔付き合っていた人からの電話で
もう一度よりを戻したいと言われた
この人と別れた理由は 最初に書いた人を好きになってしまったからだった
この人とよりを戻せば きっとそのまま結婚に結びつくはず
そう思うと なんかいろいろとぐちゃぐちゃしてきた
あんなにも大切に思った人が
わたしを大切にしてくれるから 大切なだけで
本当は 自分だけが大切だったんだなと 気がついた
そんな日
すごく好きだった人と関係を持ってしまった
抗うことはできなくて うれしいと思ってしまった自分がいた
悔しかった
でもそれでいいと思う自分もいて
勝手に迷子になっている