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小学生の習い事は自律型ロボット!
きっかけはコロナ禍
きっかけはコロナ禍だった。ステイホームで小学生の子どもたちは家にいる時間が多くなった。家の中で何をさせるかが問題だった。子どもたちをゲームづけにはしたくなかった。そんな我が家が目をつけたのは,レゴだった。
それ以前の私たちはよく知らなかったのだが,レゴはなかなか奥が深い。例えばレゴテクニックは歯車をいろいろ組み合わせるので,知らず知らずのうちに機械の機構に親しんでいくことになる。
うちの子(特に下の子のほう)はレゴにどんどんはまり,対象年齢の高いものもやるようになっていった。例えばこれは11歳以上向けのヘリコプター。電池を入れるとプロペラが実際にまわる。
あるいはレゴブースト。説明書どおりにレゴを組み立ててロボットを作り,専用のアプリでプログラムを組むと,ロボットを動かすことができる。ロボットの作り方は何通りかあり,また,自分のアイデアで自由にロボットを作ることもできる。
そうやって子どもがレゴにはまっていったのだけど,親としては悩みもあった。レゴの個々の商品はたいてい,作ったらそれで終わりだ。買って,作って,また次のものを買って,作って・・・。レベルの高いものほど高価だが,かといって一度作ったものをばらして,何度も作ったりはしない。
レゴブーストは自由に作ることもできるようになってはいる。ただ,(少なくともうちの子の場合)自分のオリジナルのアイデアで何か別のものを作ったりということはなかった。
明確なゴールがなければ何をしてよいかわからない。
うちの子を見ていて感じたことを一言でまとめれば,こういうことだ。これはきっと,うちの子だけではないと思う。
また,親としては,せっかくだから学びに結びついてほしいという思いもあった。レゴは知育玩具だと言われるし,やっている間に頭の中で何かの能力が育っているのかもしれないけれど,それは全くつかみどころのないものだった。レゴ好きをもうちょっと教育的な方向にもっていけるのではないかと思うようになっていった。
夫婦でそんなことを考え,いろいろ調べたりもしているうちに,レゴロボットの大会があることを知った。自律型ロボットによる大会だ。「これ,やりたい!」息子もとても乗り気になった。そして私たちは,新たな世界へ踏み出していった。
まず,自律型ロボットを学べるロボット教室を探した。教室でロボットキットは使えるが,家でも同じロボットキットを購入した。ロボット大会にエントリーし,自宅や教室やチームメイトの家でロボットを改良した。そしていくつかのロボット大会に出た。これが最近の我が家の2年間だ。
さて,イントロとしての我が家の話はここまで。息子のロボットづくりに付き合ううちに,親の私もこの世界に少しは詳しくなってきたので,ここまで知ったことをちょっとまとめてみようかと思ったのが,今回の記事だ。
自律型ロボット(特にLEGO SPIKE Prime)
大会や教室の話をする前に,まず自律型ロボットとはどういうものかという話から。
自律型ロボットというのは,あらかじめ組み込まれたプログラムに従って自分で勝手に動くロボットのことだ。例えば,以下の動画のように,黒い線の上を走らせることができる。リモコン操作をしているわけではないのがポイントだ。
自律型ロボットを作る子供向け教育用キットはいろいろな会社から出ているが,代表的なのがレゴのMINDSTORMS EV3とSPIKE Primeだ。うちの子がやることになったのはSPIKE Primeなので,以下ではSPIKE Primeについて紹介する。
自律型ロボットキットの特徴として,ブロックや歯車だけでなく,モーターとセンサーが含まれていることが挙げられる。モーターと車軸・車輪,あるいは歯車を組み合わせることで,車輪や歯車を回すことができる。センサーについてはSPIKE Primeの場合,カラーセンサー,距離センサー,フォースセンサーが含まれている。また,ハブにはジャイロセンサーが組み込まれている。
もう一つの特徴は,プログラミングができることだ。例えば,モーターを3回回転させることでタイヤ3回転分前進させたりとか,カラーセンサーが黒に反応するまでモーターを回し続けることにより黒のラインでストップさせるとか,そういったことだ。
先ほどの動画のように黒い線の上を走らせる技術は「ライントレース」と呼ばれるが,これはカラーセンサーの反応によってモーターの動きを変えるプログラミングによっている。なかなか奥が深く,ライントレースの方法の一つPID制御は,微分積分を応用している。そういうことも(原理を理解できるかどうかはともかく)SPIKE Prime(や,その他の主要な自律型ロボットキット)で出来るようになる。
プログラミングは専用のアプリで行い,ブロックプログラミングかPythonか選ぶことができる。例えばブロックプログラミングは下の画像のようなかんじで,プログラミングを学び始めた子どもたちが直感的に学びやすいようにできている。
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つまり,自律型ロボットを学ぶということは,ロボットの機構(例えば歯車の仕組み)とプログラミングの両方を学ぶということなのだ。
参考までに,以下はレゴエデュケーションによる動画。SPIKE Primeを使った様子を見ることができる。
ロボット大会
ロボットキットを手にしたら,目指すのはロボットの大会だ。探してみるとけっこういろいろな大会がある。
WRO(国際ロボットオリンピック)
ロボットの大会のうちでも代表的なのがWRO(国際ロボットオリンピック)だ。うちの息子が自律型ロボットの世界にはまることになったきっかけも,この大会を知ったことだった。
WROはその名の通り,世界各国の代表が出場する国際大会だ。出場チームを決めるため,各国では予選が行われる。参考までに以下は,WRO公式チャンネルによる2023年大会(パナマ)の紹介動画。
日本国内ではどのように行われているかというと,(ロボミッションという部門の場合)まず各都道府県で予選会が行われる。そして,それに通過したチームが全国大会で競うことになる。そして,全国大会の上位チームが世界大会に出場する。
ロボミッションがどんな感じかというと,決められたコースの中で,制限時間があり,その時間内に赤いブロックをあるエリアに運んでいき,黄色いブロックは別のエリアに運んでいくとか,そういった複数のタスクを設定されている。タスクを達成できればポイントになり,満点のチームが複数ある場合には早い時間でクリアできたほうが勝ちになる。ルールとコースは数か月前に発表されるので,長い時間をかけてロボットとプログラムを作りこんで大会に臨むことになるのだが,大会当日に発表される追加のミッションがあるので,即興でロボットやプログラムの改良をするスキルもまた求められる。
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その他の大会
ロボカップ:おそらくWROよりも知名度の高いロボットの高い大会。ただ,ジュニア部門の対象が11歳~19歳なので,小学生は高学年になってようやく出場できる。
ゼロワングランドスラム:小学生のプログラミング大会だが,ロボット競技も含まれていて,2回戦まで勝ち上がるとロボット競技に出るチャンスがある。SPIKE Primeをはじめとするいくつかのロボットキットの中から,使用するロボットキットを選択してロボットを作成する。
小学生ロボコン:ユカイ工学のロボットキットを使ってロボットを作成する。
きのくにロボットフェスティバル:和歌山県で行われるロボット大会。ユカイ工学のロボットキットを使ってロボットを作成する。
どこで習うか
ロボットキットは市販されているし,付属のガイドブックやネット上の様々な情報を利用すれば,自分でも学ぶことは出来なくはないかもしれない。ただ,けっこう奥が深いので,特に小学生の場合,ロボット教室に通わないと実際のところ難しいだろうと思う。
また,WROはチーム(2名~3名)でないと出場できないので,チームメイトを見つけるという意味でも,ロボット教室に通うことに意味がある。WROへの出場実績があるロボット教室であれば,教室でチームを組んでくれたりする。
ロボット教室はたくさんある。レゴ製品(EV3かSPIKE Prime)を使っているところもあれば,レゴ製品以外を使っているところもある。私の印象では,小学生への教育用としてはレゴ製品が特によく出来ているので,レゴ製品を用いているロボット教室がおすすめではある。
WROを目指すのであれば,WROで実績をおさめているロボット教室がどこかを把握しておくとよいと思う。各都道府県の予選会のウェブページにはたいてい予選会の結果が掲載されていて,そこには所属教室も書かれていることが多いので,参考になる。
おわりに
この記事の最初のほう,うちの子を見ていて感じたこととして,こう書いた。「明確なゴールがなければ何をしてよいかわからない。」
ロボット大会の良いところは,明確な(そしてちょっと難しめの)目標が与えられることだと思う。そして,その目標に向かう途中で解決しなければならない小さなステップがたくさんあり,それを乗り越えようとするたびに学びがある。例えば,ブロックをロボットでつまみ上げるにはどうすればいいかと考えていくとリンク機構を学ぶことになるし,運ぶブロックの色に応じてロボットの動作を変えるには条件分岐のプログラムを作れなければならない。
うちの子はまだロボット教室に通うようになって2年,ロボット大会に出るようになって1年しか経っていない。短い間に息子も親の私もいろいろ経験をして多くを学んだ気がするけれど,ロボットを続けていくとこれからもっと多くのことを学ぶのだろうと思う。そのうち,息子のスキルが上がって文系の私にはついていけなくなるのではないかとも思う。そういうときが来ることを,実はちょっと期待している。