最低賃金が上がると何がどう変わるのか
参議院議員選挙の選挙戦が始まり、最低賃金について取沙汰される機会が増えてきました。
自分の賃金が上がったら、そりゃ誰だって嬉しいに決まってます。
しかし、上がるのは「あなたの賃金」ではなく「最低賃金」。最低賃金が上がるということは、理論的には失業率が上がることに繋がります。特にその傾向は、弱い立場の人たちこそ顕著です。
っていうような話をつらつらと書いてみたいと思います。
最低賃金が上がるとどうなるか?
直接的な現象としては、以下の3点が起こります。
1.最低賃金を支払えない企業が淘汰される
2.求人数が減る
3.求職者が増える
1.最低賃金を支払えない企業が淘汰される
細かい説明は不要かと思います。
この件については「最低賃金すら払えない会社なんて淘汰されてしまえ」という意見もあり、個人的には経営者はそれくらいの覚悟を持つべきだと思っているのですが、そういった観念的な問題はいったん置いておいて
「最低賃金を払えないような弱小の企業が倒産する」
ということが現実に起こり、そこに勤めていた人たちが職を失うことになります。
大変失礼な言い方になってしまいますが、そういった企業にお勤めの方は不利な条件でも働かざるを得ない人たち、つまり能力が低いであるとか、何らかの事情でフルタイム働けないであるとか、そういった方々である確率が高い。
彼らがどこか別の会社に就職できれば良いのですが……
2.求人数が減る
同時に、企業は人の単価が上がった以上、労働時間を減らして人件費の抑制を図ろうとします。
人件費の高騰を受けて、大急ぎで自動化を進めている飲食業界などは顕著な例でしょう。
うまく効率化して、人が少なくてもうまくいく体制を構築できれば良いのですが、下手をすると「今まで2人でやっていた仕事を1人でやらざるを得ない」なんて状況になって、残った人にしわ寄せが行く可能性も。
いずれにせよ、今いる人を減らす、新規の採用を見送るなど、求人数が減ることになります。
減らすとはいえある程度数は必要ですし、辞められては困るキーパーソンはいるはずです。
つまり企業は少数精鋭を目指すことになり、すべての人が平等に就職しづらくなるのではなく、精鋭になれない人たちの就職が困難になるのです。
3.求職者が増える
Aさん「時給1,000円以上なら働きたい」
Bさん「時給1,500円以上なら働きたい」
という二人と、最低賃金でしか人を雇えないX社があったとします。
最低賃金が時給1,000円の場合、X社は時給1,000円で求人を出すので、Aさんだけが応募して、Aさんが採用されることになります。
しかし最低賃金が時給1,500円に上がると、X社は時給1,500円で求人を出すしかなくなり、AさんとBさんが応募してくることになります。
通常、要求する賃金が高い人ほど優秀である確率が高い。
ゆえにX社はBさんを採用することになり、能力が劣る人ほど仕事に就きにくいという状況が生まれるのです。
まとめ
1.最低賃金を支払えない企業が淘汰される
→不利な条件で働かざるを得ない人たちの受け皿がなくなる
2.求人数が減る
→少数精鋭になれない人たちの働き口がなくなる
3.求職者が増える
→能力や条件面で不利な立場の人の就職が難しくなる
というわけで、最低賃金を上げることは失業率の上昇を招き、その影響は能力が劣る人や、フルタイムで働けない等の事情を抱える人たちを直撃するということが、理論的には起こるわけです。
とはいえ最低賃金が不要とは決して思っていなくて
社会保障という意味合いで最低限のラインは法的に保障されるべきであり、他の政策と組み合わせることで弊害を抑えつつ賃金上昇を測ることも可能であると思っています。
私が今回申し上げたいのは冒頭にも書いた通り、上がるのは「あなたの賃金」ではなく「最低賃金」ですよということです。
あなたのお給料が増えるかどうか、あなたの会社の人件費がどうなるかは、まあたしかに大問題なので気になるのは仕方ないと思います。
しかしこれはあなたの家計や、経営する会社の財務問題ではなく、一国の経済がどうなるかという問題です。
「自分の給料が増えるから、賛成」
「うちの会社の人件費が増えるから、反対」
だけでなく、日本経済にどういう影響を与えるのかまでも、考慮すべきではないでしょうか。
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