木ごとに花ぞ咲きにける
先日、愛知県西部にある寧比曽岳に登ってきました。
大多賀峠というところからスタート。
当日は良い天気でしたが数日前の雪が残っていて、青い空と白い雪のコントラストがとてもきれい。風が吹くと雪がちらちらと舞い、日の光に照らされて輝きます。
まるで花が咲いているみたいだよねーと思ったんですが、あれ、そういえばそんなような情景を詠った歌があったような?
と思って帰ってから調べてみたら、割とたくさんありました。
やっぱりみんな、花に見えるんだなあ。
そんな中から、これ面白いなと思った歌をご紹介したいと思います。
古今和歌集に収められている、紀友則(三十六歌仙にも数えられる達人のひとり)の歌です
雪降れば 木ごとに花ぞ 咲きにける いづれを梅と わきて折らまし
雪が降って木に降り積もり、白い花が咲いたみたいに見える。
どれを(白い花を咲かせる)梅と見分けて枝を折ったら良いだろう。
くらいの意味です。
梅と
雪。
たしかにそれっぽくはあるのですが(雪の方が重みがある分もっさりしてますね)、実はこの歌、もうひとつ面白い仕掛けが隠されています。
漢字あそび?
雪降れば 木ごとに花ぞ 咲きにける いづれを梅と わきて折らまし
「木ごと」って部分をすべて漢字表記にすると「木毎」。
つまり「梅」という字が隠れているのです。意味合いだけ見れば「枯れ木に」にしても通じると思うのですが、「木ごとに」と遊び心を忍ばせるセンス。
漢字遊びといえば百人一首にも出てくる
吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ
山+風=嵐
が有名ですが、こんなのもあるみたいです。
表現力を磨くための和歌
このように、和歌は五七五七七という短い文章の中に、様々な工夫が凝らされています。
個人的には文章とは短ければ短いほど良く
「普通の人が長い文章でしか表現できないことを、短い文章で伝えられるのが文章力のある人」
だと思っています。31文字に圧縮するとか、その極みなんじゃないでしょうか?
そして古今和歌集の序文には
和歌は人の心を種として育ち、いく万もの「言の葉(ことのは)」になったものである
と書かれています。最終的には人間心理の理解も深まる……なんてのは、さすがに行きすぎでしょうか。
いずれにせよ、山登りをしながわ和歌に思いを馳せていたというお話でした。
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