AIは文脈を理解できない
タイトルの通りなのですが、少なくとも2019年時点のAI(人工知能)には、文脈を理解する能力が備わっていません。
どういうことかというと、たとえばほとんどの日本人は
「吾輩は猫である。名前はまだない」
という文章を見た時に
・一人称で語る存在が猫であること
・その猫にはまだ名前がないこと
を読み取ることができます。
しかしよく読むと
後半部分には「誰が」にあたる主語が省略されています。
直前の内容から、私たちは無意識のうちに主語を補完して理解しているのですが、この働きがまだAIには実装されていないのだそうです。
実際、Google翻訳にこれを訳してもらうと
「I am a cat. there is no name yet.」
となり、明らかに後半部分は「誰の名前がないのか」を読み取れていないことが見て取れます。
何を忘れると怒るのか
もう一つの例文です。
「彼が誕生日を忘れたので、彼女は怒った」
ここで出てくる「誕生日」は、誰の誕生日でしょうか?
明記されていませんが、怒った「彼女」の誕生日であると考えるのが自然です。しかしこちらもGoogleさんに訳していただくと
「She got angry because he forgot his birthday.」
誕生日には「彼の」という所有格がついています。
なお、これは執筆時点での結果なので、少し経ったら変わっている可能性があります。以前試した時は正しく「her birthday」と訳されたこともありました。
なぜこんなことになっているかというと
最初に戻るのですが、AIが文脈を理解できないからです。つまり
「前の文章で一人称が吾輩だったら、続く文章も吾輩が語っているのだろう」
「明記はないけれど、この誕生日は怒っている彼女の誕生日だろう」
といった推測が、AIにはまだできていないのです。
ではAIはどうやって翻訳しているかというと、文中に出てくる単語を拾って
「この単語とこの単語とこの単語がこういう順番で並んでいるということは、こういうことを言いたいのだろう」
というような解釈をしているのだそうです。
なので、主語や所有格が省略された文章では、ちょっとズレた結果になってしまうのです。
ところで私も
よく、何を言っているのかよく分からない文章に対応することがあります。
とにかく困るのが、主語と述語が対応していない文章。たとえばこんなのです。
「私が考える囲碁普及のための最善の方法は、とにかくルールを分かりやすく説明する必要があります」
主語の「最善の方法は」に対して、述語が「必要があります」になっていてうまくかみ合っていないのですが、言いたいことは何となく理解できると思います。
上記の例文などは分かりやすい方だと思いますが、分からないものになるとほんとに分からない。
実際そういう文章を受け取った際は(例文をお見せできないのが残念です)、やむなく出てくる単語の組み合わせから意図を推測するということをやっていたわけですが、あ、これってAIが文章理解する手法と一緒じゃん? と思ったわけで。
相手の意図を汲みとれていれば良いのですが、もしズレていたとしたら、返信をもらった相手には、私がAIみたいに見えているのかなと思ったのでした。
とにかく言いたいことは
人に文章を見せる前に、主語と述語が正しく対応しているかはチェックした方が良いと思います。
ていうか、してください。
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