猪狩翔一 oneman live “単独飛行vol.3”中国地方編 広島 音楽喫茶ヲルガン座
tacicaのGt. Vo.を務める猪狩翔一の弾き語りワンマン。昨年3月の名古屋公演を皮切りに不定期で開催されている弾き語りライブ。
今回は広島、岡山の2days。
感想① op
3月に入ったはずなのにまさかの雪が降る寒さ。
会場入りするまでの数分が辛かった。
階段を上がって2階。低めの椅子がセットされていたほか、座布団もあって不思議な雰囲気が醸し出される。
そんな中でまさかの最善席。ステージとの距離はほんの数センチという歴代一の近さ。
始まる少し前にマネージャーからたぬきちシール貰っていない方いますか? との声かけが。
前回まではグッズを購入した方限定だっだが、今回はどうやら入場者全員にプレゼントだったよう。
ほぼ定刻通りに猪狩さんが客席の横を通ってステージに立つ。
「こんにちはー」
珍しくチューニングもせずに挨拶から始める。
「単独飛行です。よろしく。よろしくっ!」
気合い入れのためか珍しく力強く答える。
「初めての方もいると思うので、水とコーヒーはランダムに飲みます。っていうか交互に飲みます。お願いします」
自己紹介ではなく、まさかの自分の飲むものに対しての注釈を入れていて笑ってしまう。
1曲目はwondermole。弾き語りで聴くのは初めてのような気もした。
或いは、或いは……と続いた後の高層ビル〜の声の伸びに圧倒された。
「ヲルガン座、外観も内観も凄い良くてテンションが俄然高いです。ゆっくりやっていきます」
弾き語りで1人ということもあるかもしれないけど、昔のtacicaのライブmcよりもここ最近は饒舌になってきている気がする。
2曲目は私服の罪人。
スローテンポな曲が続いた後には冒険衝動。
猪狩さんが足でリズムをとっていてこちらの身体もつられて動いてしまう。
感想② tacica知ってる?
「演奏中ずっと見られてるんだよね。しかも厳しい目で見られてる」
左右の壁に鹿の首が飾ってあり、それと目が合うと話していた。それ以外にも猪狩さんの後ろにはヲルガン座と刻まれているトルソーや動物の飾りなどが置いてあり、アトリエのようにも思えた。
(そういえば最後に曲の方のアトリエ聴いたのいつだろうか)
そんなmcの後にはゼンマイ。個人的に4月から始まるtimelineもあり、最近parallel parkを聴き返しているのだが、中でも改めて良いなと思っていた曲で思わずテンションが上がった。
「tacicaで今度……。あっ、tacica知ってる?」
まさかのことを聞いてくる。ツーマンならまだしもワンマンで知らずに来ている人はいるのだろうか……。
幸いにも知らない方はいなかった模様。それには猪狩さんも思わず安堵していた。
「今度timelineっていう過去のアルバムを今の状態で再現するツアーがあるんだけど、それで演奏する曲の思い出し練習をしていて、ゼンマイもそうなんだけど」
ここでゼンマイの一部を演奏。
「こういうコードとか今、全然やらないなと思って。結構忘れてることとか多いし、新鮮」
parallel parkは2008年発売なのでおよそ15年近く前。そんな昔のことをやるのって確かにある意味新鮮なのかもしれない。
「毎年のように、今年は花粉平気かもしれないって言ってる気がするんだけど、5日くらい前にきましたね。飲み薬が合わなくて、喉がスカスカになるから点鼻薬と目薬を使ってるんだけど……。 大丈夫?こんな話してて」
ふと我に帰る猪狩さん。会場の皆さんはいつも通り大丈夫ですよといった具合に頷いていた。
「関東よりこっちの方がまだ花粉マシっていうのを天気予報でやってたからたかを括っていたら、こっちの方が強烈だった。ほんと勘弁してほしいよ」
この後も時折目を掻いていて本当に辛そうだった。
「でも、調子は良いんで! 明日もあるけど今日出し切るつもりでいるんで!」
力強い言葉が発せられていた。
弾き語り定番のordinary day。
歳月を重ねる毎にこの曲は本当にいい曲だと思えてくる。自分自身の心境の変化もそうだが、曲も成長するんだなぁと思う。
感想③たぬきちの故郷
「たぬきちっていう犬を飼っていて。ご存知かもしれないですけれど。たぬきちの故郷が広島で。だからか家を出る時に、『故郷によろしく』っていう目で語ってきたんですよね」
どうやら広島に大きな野犬保護施設があるという。そこの出身ということのよう。
「その保護施設にいる犬たちって特性毎に振り分けられて全国各地に行くんですけど。東京に来るのってあまり吠えない犬が集められるんですよ。家の都合上、あまりうるさくないのが好まれるか
ららしいんですけど。だから割とビビリな犬ばっかりで、ディズニーで見るような肩が上がってビビっている感じの犬ばっかりなんですよ」
どうすればこんなに人間を怯えられるんだろうというくらい怯えていたと話していた。
たぬきち可愛いんですよ、とたぬきちの話になるとデレデレになっていた。
やります、と始められたのはディスコード。初めて聴いたのは1年前の初めての単独飛行のとき。これからも弾き語り発の曲がたくさん出てくるかと思うとワクワクが止まらない。
続け様にナニユエ。YUGE収録曲が続いた。
ステージにはピアノもあって、森田さんがいたらなと妄想していた。裸の特異点に今年も期待。
感想④ 句読点つける? つけない?
「みなさん、リラックスしていただいて大丈夫ですよ。何か僕は周りを緊張させてしまうタイプなんですけど」
そういってチューニングに時間をかける。
「なんか最近話題になってたんですけど。メッセージに句読点をつけるかってやつ。皆さんつけます?」
頷く人多数。
「あっ、良かった。皆さんこっち側で。笑
句読点つけてると威圧感あるっていう話だったんですけど、僕は逆で。ない方が威圧感あるんですよね」
確かに言われて見れば個人的にも句読点の無い人のメッセージって箇条書きというか命令口調のように思えてしまう。
「そういえば薄々気づいてる方もいらっしゃるかもですが、小西はいません。名実ともに単独飛行です」
今までの2公演はどちらも出演のあったベースの小西さんは今回は不参加。なので、ついに正真正銘初のワンマン弾き語りツアー。
「来てほしく無いわけじゃないですけど。
彼、意外と凹みやすくて。前のときにも『演奏大丈夫だった?』って聞いてきて。大丈夫か大丈夫じゃないかで言ったら、大丈夫じゃないんですけど」
相変わらず小西さんに辛口の猪狩さん。カホンに挑戦したり、と中々頑張っているように見えた小西だったけど、凹んでいたとは驚き。
長めのmc明けには未発表曲のネバーランド。ノスタルジックな雰囲気を醸し出す。
この曲終わりぐらいのmcでアルバム作ってます。秋終わり頃までには出せると思うと話していたのでこの曲は入るのかなと希望的観測を持っておく。バンドセットのアレンジが楽しみ。
定番のLEO。そしてaranamiと続く。
ここ数回弾き語りでaranamiを演奏されていたそうだが個人的に聴くのは初でテンション上がった。
ステージには1人のはずなのに不思議とドラムとベースの音も鳴っているかのように錯覚した。
感想⑤ 雪降ったからね
「日本語正しく使った方が良いみたいですよ」
何の脈絡もなく唐突に語り出していた。
「日本人の骨格って日本語を正しく使うと整うらしいですよ。だから正しい日本語使いましょう。ただ、ソースは無いですけど」
謎の冗談をぶっ込んできて笑ってしまった。
知らんけど。みたいな言い方に笑わされる。
人間賛歌はアカペラ部分がやっぱり圧巻。終盤でこんな声出るのか、1人でこんな表現できるのかと度肝を抜かれた。
続く、物云わぬ物怪。こちらもネバーランド同様未発表曲だが、アルバム候補曲。前回のtacicaのワンマンツアーのタイトルにもなっている曲だし、恐らく入ると予想している。物怪っていうタイトルが何というか猪狩さんらしいな、と思う。
幽霊でも妖怪でも化物でもないあたりが。
「今回は岡山に泊まっていて、今朝広島に早めに入りました。っていうのもマルヤ楽器に行きたくて。だけど、高速降りたらハードオフがあって、思わず先に入っちゃった。マネージャーのなるやんが機材を買いそうになってた。その後お目当てのマルヤ楽器に行ったら前のところから移転していたんだけど、お店のおばあちゃんは変わってなくて店内もそんなに変わってなかった。
めちゃくちゃ掘り出し物あるので広島来たら皆さんも是非」
ダンスが演奏されると、ああ、もう終わりかと思うようになってきた。猪狩さんが前のライブでダンスはいつも最後にやる、と言っていたので締めはダンスというのが染み付いている。
と思いきや
「今日雪降ったからね。ホワイトランドやります」
とまさかのホワイトランド。
「雪降るんだね。最初花粉かと思ってさ。ついに目に見えるほどになったかと思っちゃったんだよね」
広島に昼過ぎに着いたら晴れてるのに雪という不思議な光景に思わず私も驚いていた。
歌い出しの「見て」の優しい語りかけからのサビの「星座の中を〜」の力強さのギャップにやられる。
大層な夢や希望を語るんじゃなくて良い。ちっぽけな夢でいい。そんなものでいい。
ホワイトランドのラストのファズは無いのに幻聴で頭の中で鳴り響いていた。
感想⑥ アンコール
ありがとうございました。と締めたがステージからは降りず。観客の拍手がアンコールの手拍子へと変わるとすぐに、やりまーす、と再びギターを持った。
「他のアーティストの人たちも花粉症大変だろうね。僕の場合は鼻が通っていれば歌えるんですけど。今日鼻が通っていないんで、普段なら平気なところも掠れます。……ていう言い訳です」
ステージ上でも目を掻いたりしていて辛そうだなとは思っていたが、声が掠れている印象は受けなかったので、全力の時だったらどれだけ凄いんだと思う。
そして今回のグッズ紹介。当たり前だけど猪狩さん1人のグッズ紹介は新鮮。
「カセット作りました!たぬきちシールもあるんで。あの◯ックリマンシールみたいな感じなんで。
あとはたぬきちの栞を作りました」
実物を見せながら紹介し、何故か栞の匂いを何度も何度も嗅いでいた。
「革に結構こだわってるんで。是非。たぬきちの箔押ししてます」
「たぬきちの皮で作りました。……嘘です。
ヤバいよね。こんだけたぬきちの事を話しておいてそんなことしてたらね。12枚しか作れませんでしたとか言ってたら、ね。ヤバいじゃん。サイコパスだよね」
そんなことしてたら怖すぎる笑。
「革に拘ったら、何か意外と値が張っちゃっいました。栞使わないとか、本なんて読まないっていう人がいたらボールチェーン持ってきているんで、フライトタグっぽく使っても良いかも」
個人的にtacicaのグッズは質が良くて普段使いしやすいものばかりで助かっている。
最後に1曲演奏されたのは馬鹿。
弾き語りで聴くのは初めての気がする。
"演奏が終わったら〜僕たちの音色は変わらないから"
までの部分はtacicaとしての意思表示のような気がする。
いつまでだって音楽をやり続けていくんだろうなとそう思わせてくれる。
およそ2時間近いワンマンライブ。あっという間に終わってしまった。
セットリスト
wondermole
私服の罪人
冒険衝動
ゼンマイ
ordinary day
ディスコード
ナニユエ
ネバーランド
LEO
aranami
人間賛歌
物云わぬ物怪
ダンス
ホワイトランド
en.馬鹿
終わりに
たっぷり15曲。ゆっくりやるとの宣言からも分かるように丁寧に演奏されていたように思えた。3度目の単独飛行は名実ともに単独公演で演奏、歌はもちろん、MCもキレキレだった。
弾き語りも回数を重ねてきて定番の曲も多く出来ているが、そればかりだけでない曲の演奏もされていた。
2daysの1日目から最高のスタートダッシュ。
2日目の岡山公演に続く。