見えない飛沫を可視化する
2020年度 COVID-19対応HPCI臨時公募採択課題紹介
計算科学が解明するCOVID-19の理解と対策
採択課題
室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測とその対策:富岳大規模解析に向けたケーススタディ
見えない飛沫を可視化する
私の専門は流体のシミュレーションです。対する理解と防御の重要性を伝えなければ」とCOVID-19の流行が始まった時、感染症に対して感覚的な言説が多くありました。これに対して「シミュレーションをして社会に発信する必要がある。飛沫やエアロゾルによる感染がどのように起こっているのかを視覚的に訴え、感染に対する理解と防御の重要性を伝えなければ」と思い、研究を始めました。社会啓発という意味合いが強いので、様々な状況に合わせて、満員電車の中、パーティションのあるオフィス、 GoToトラベルの移動時の飛行機やタクシーの中、不織布マスクとウレタンマスクの効果の違い等々、ものすごくたくさんのケースをシミュレートしました。 Oakbridge-CXで行ったのは、そのような膨大な計算の境界条件となる「会話、歌唱、咳、等の発話モデル」の開発ですね。論文発表よりも先にメディア発表をしているというのも、大きな特徴です。スーパーコンピュータを用いた流体シミュレーションはシミュレーションに利用する形状モデルが必要です。精緻なモデルは作るのも計算するのも、スーパーコンピュータを使ってもすごく時間がかかるのですが、我々はモデル作成を工夫することで高速化し、30分くらいで計算できるようにしました。それにより、社会状況に対してタイムリーに情報提供ができています。複数の様々なケースを並列にスーパーコンピュータを使って計算できるというのが我々の強みですね。これらの研究に対して、私たちのチームはゴードンベル賞の特別賞(ACM Gordon Bell Special Prize for HPC-Based COVID-19)をいただきました。
坪倉誠/専門は流体工学。東京大学博士(工学)。東京工業大学、電気通信大学、北海道大学を経て 2015年より現職。 2012年より理化学研究所計算科学研究機構チームリーダーを兼務。
深く学ぶには
室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測とその対策