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【独自ルポ】深作ヘススという“ありふれた人” - 国民民主党・挑戦者たちの分光分析

(※この記事は全文を無料でお読みいただけます。転載・再配布・再利用等については本文末尾をご覧ください)

取材中、彼は何度もこう繰り返した。

「私なんて普通の人で、みなさんと一緒。」
「自分が政治家であるというより、一市民だと思っているので。」
「あなたも私も一緒。」
「みなさんと、おんなじ。」

謙遜の色は見えない。

深作ヘスス、37歳。
在アメリカ合衆国日本国大使館、米国連邦議会下院議員外交政策担当、JAXAワシントンD.C.駐在員事務所コンサルタント、内閣府青年国際交流事業ファシリテーター。彼の歩んできた道程を見れば、驚きを持たない人のほうが少ないだろう。

御多分ごたぶんに漏れず、僕もそんな一人だった。このグローバル・エリートと自分との間にある共通点は、ささやかながら、世代が同じという程度。それ以外の全ては、まるで雲の上の存在。

しかし同時に、違和感もあった。

深作ヘススとは、会ったこともなければ、話したこともない、ただのSNSつながり。にも関わらず、インターネットという名のピンホール・カメラが結ぶおぼろげな像は、気の置けない友人たちの輪郭とも重なる。

深作ヘススとは、何者なのか。

アメリカ議会で外交・安全保障政策の実務経験を積んだグローバル・エリート。国民民主党・神奈川県参議院選挙区総支部長にして、2022参院選の挑戦者。家族を愛する、一人の父であり夫。同じ時代を共に生きる、一人の日本人。

さまざまな角度から、この深作ヘススという物語に光を当て、そしてその素顔を探ろうとする試みが、本取材のテーマである。

果たして、そこに浮かび上がった実像とは-

2022年5月24日、深作ヘスス本人にオンライン・インタビューを行った。本稿は、そのインタビューをもとに、ある種の報告文学ルポルタージュとして再構築したものである。

深作ヘスス公式サイトより(https://teamfukasaku.jp/

◆『普通の幸せ』をどう作っていくか

インタビューを開始した時、僕はまだ自分の掛けている色眼鏡に気付いてはいなかった。したがって、すこしだけ和やかな雑談を交わしてから、僕は“お決まりのテーマ”で質問を投げかけた。

-ロシアによるウクライナの軍事侵攻について、一言。

つい先ほどまでの柔らかな表情…それまで僕らは、お気に入りの日本酒の話をしていた…そこから一変した鋭い眼差しで、彼はこう言い切った。

「大前提として、ロシアの侵攻は間違っている」

そう断言した上で繰り広げられる、さまざまな分析と見解。いくつかの対話の中から、話題は外交・安全保障の本懐とも言うべきテーマに及ぶ。

日常の、ありふれた姿のために


「外交はなんのためにあるかって、『私たちの、当たり前の生活をどう守っていくか』のためにあると思っていて。」

「私たちがなんの気なく、普通にご飯を食べて幸せで、子どもの顔を見て幸せで、面白い映画を見て笑える。これを担保するために外交であれ経済であれ何でもあるんだと思っています。その手法が違う、向き合う相手が違うだけ。」

「私が思っている外交って、私が普通に暮らしているこの、家帰ってビールを空けて『幸せだなあ、今日も明日もこれが続くといいな』っていう日々をどう作っていくか。これが根本にあると思っていてですね。

だからなんか、外交って話をすると、すごい遠い国の、すごい難しい話のように思えるんですが、それをやってる目的ってのは意外と日常のありふれた姿のためにやってるんだなぁとは思ってはいます。」


ここに語られる言葉は、もしかすると、深作ヘススという人物の、ある種の実像の反映かもしれない。

日常の、ありふれた姿のために-。

では、彼をこうした考えに導いたものは、いったい何だろうか。
どんな道程を歩み、そこで何を見てきたのか。
そして今、なぜ国民民主党なのか。

その答えを探るために、深作ヘススの歩みに目を向けてみよう。
何を経験し、何を思ったのか。
そのこころざしの原点を探る旅に、しばしお付き合い頂きたい。

◆決意の原点 - 深作ヘススの歩み


「日米関係を語る時に、なんで日本ってアメリカのために必要なの?という視点がみんな抜けている。じゃあ、アメリカの立場になって、その立場から日本の姿を見たい。」

そんな思いを持った、うら若き日の深作ヘスス。笹川平和財団のフェローシップを通して、米国議会で働くことになった。そこで出会った人物が、ギャバード下院議員(当時)である。

米下院議会政策スタッフ時代の深作ヘスス(左から2番目)、ギャバード議員(同3番目)、
共に働いた仲間たちと。深作ヘスス公式サイトより(https://teamfukasaku.jp/)

「たまたま運良く」、トゥルシー・ギャバード下院議員の政策スタッフに

トゥルシー・ギャバード。予備役兵としてイラク、クウェートも経験しており、もっとも日本に近いハワイ州の選出議員。彼女のもとで働くことができたのは、「たまたま運良く」だったそうだ。

「ここで働きたいと思って応募したら、運良く、本当にタイミング良くですね、入ることができた。」

当時、ギャバード下院議員のスタッフのうち、政策担当は8人。その中で深作は、アジア・太平洋地域の外交政策を担当することになった。

そうして深作ヘススは、アメリカ議会という場を通して、日本を、そして日米同盟を見つめ、関わりを深めていくことになる。

アメリカにとっての日米同盟、アメリカから見た日本

アメリカ議会で働き始めた深作ヘスス。その時、彼はアメリカから見た日本を、どのように捉えたのだろうか。

インタビュー当日は、折しも日米豪印(クアッド)首脳会談が東京で開かれたばかり。日米関係は、ホットな話題だ。僕は思い切って質問を投げかけてみた。

-日米同盟について、国内ではいろいろな受け止めがある。「日本がアメリカの戦争に付き合わされるのでは」という懸念も。アメリカの言いなり、「アメポチ」という言葉もある。実際に、アメリカから見た日本、アメリカにとっての日米同盟の位置付けはどうなのか。

深作は答える。日米同盟は、日本をただアメリカが守るだけの同盟ではない。アメリカにとっても、日本は欠かせないパートナーである。「日本がアメリカの言いなりになるのでは」と心配する人もいる。しかし実際は、そうではない。アメリカにとって日本は、極めて重要な同盟国だ。

アメリカのフォワードプロジェクション戦略と、日本の重要性について。
あるいは、ワシントンにおける日本の存在について。

そうした話の中で、彼は一枚の写真を見せてくれた。

2018年1月13日・ハワイ州  「みんな最期の電話をした」

スマートフォンの通知画面のスクリーンショット。
日付は1月13日、8時45分。なんてことのない、見慣れた画面。
しかし、そこに映し出されている英文を読み取った時、僕は一瞬、目を疑った。

EMERGENCY ALERTS。
そう記された、2つの通知が並んでいる。

「38分前のほうから見て頂きたいんです。大陸間ミサイルが今、ハワイに向かっています。今すぐに避難せよ。これは訓練ではない。

2018年1月13日、ハワイ州ミサイル誤報事件である。


「これ(弾道ミサイル接近の緊急通知)がですね、ハワイ州にいる全員のケータイに届きました。本当にこれを受けた人達は、最期の電話。別れの電話-これをしました。」

「38分後、このミサイルの脅威というのは誤報でした。(誤報だとわかるまでの)38分間、みんな本当に命の危機を感じて。東アジアの脅威というのが、アメリカの脅威に変わった。


この事件は、アメリカに大きなインパクトを与えた。
極東アジアの脅威が、アメリカにとって他人事ではなくなった瞬間だ。

そうした流れのなかで、極東アジアに詳しい深作ヘススは、次第にさまざまな物事を任されるようになっていったという。

東アジア危機に直面するアメリカと、深作ヘススの「日本人としてのプライド」

ハワイ州ミサイル誤報事件から約3ヵ月後、2018年4月6日。
とある一つの下院議会決議が可決された。

115th Congress H.RES.861 - アメリカ合衆国大統領の、朝鮮半島における外交的な努力を支援する。トゥルシー・ギャバード下院議員の名前で提出されたこの決議案は、深作ヘススがリードしたものだ。


「この861号がなにかというと、大統領、私は民主党の議員についてたんですが、当時もちろん共和党のトランプ政権ですね。なんですが、民主党の議員のもとで出したんですが、大統領が、朝鮮半島での課題を外交的な手段をもって解決することを、サポートしますと。」

「はっきり言って、相手の党の大統領をサポートします、というものなんです。軍事戦略ではなく、外交で解決しようぜ!っていうのを、議会決議案として出したのを、これを私がリードして、議員の名前で提出しました。」


この時、深作は一つのこだわりを貫いたという。
それは、決議案に“JAPAN”の文字を入れること。

「この脅威というのは、東アジアの脅威であって、日本にとっての脅威でもある。これをですね、私が入れたんですが、ここをやはり日本人のプライドとして入れてやろうと。」

インタビューを終えた後、WEB上に公開されている、この決議文を改めて確認した。
そこには確かに、JAPANの文字が-米国議会のなかで奮闘する日本人・深作ヘススの、日本人としてのプライドが、今も確かに刻み込まれている。

https://www.congress.gov/115/bills/hres861/BILLS-115hres861ih.xml
H.Res.861 - Supporting the President's diplomatic efforts on the Korean Peninsula. 115th Congress (2017-2018) Sponsor:Rep. Gabbard, Tulsi [D-HI-2]
(Introduced 04/27/2018) Committees:House - Foreign Affairs

◆いつか、平和を紡ぐ欠片に - 外交への志、その原体験

アメリカ議会の中で、日本人のプライドを持って働いてきた深作ヘスス。
そんな彼が、外交の道を決意する、その原体験となった出来事がある。

「写真がうまい、というだけで…いや、本当にそうなんです。外交の現場に同席をさせてもらって」

少し笑いながら、彼は話を続ける。
外交官ではない深作が、さまざまな外交の現場を経験している理由は、ただ写真が上手だから。そんな数奇な巡り合わせで、彼はたびたび、外交の場面に同行していた。

こころざしの原体験も、そうした偶然がもたらした機会の一つだったという。

「ハリー・ハリス、ハリス司令官。太平洋軍司令官。彼が退任をする時の式典なんです。私その現場にいました。この写真を撮ったのも私。」

2018.5.30 Camp H. M. Smith 太平洋軍司令官の交代式典にて(深作ヘスス撮影)

「当時のマティス国防長官のもと、トゥルシー・ギャバードにくっついていってですね、そこに世界中の軍の関係者が来ていてですね。そこに小野寺五典防衛大臣が来ると。そこでギャバードにですね、よかったら(小野寺防衛大臣と)立ち話でもしませんか?と。」

ハリー・ハリス司令官の退任式典。そこに来る小野寺五典防衛大臣(当時)と、トゥルシー・ギャバード議員との「立ち話」を、セットアップしたそうだ。

二人の立ち話はつつがなく終わり、談笑する姿を、深作はカメラに収めた。

2018.5.30 Camp H. M. Smith 太平洋軍司令官の交代式典にて(深作ヘスス撮影)
トゥルシー・ギャバード下院議員と立ち話をする小野寺五典防衛大臣(いずれも当時)

この一枚の写真が持つ“意味”に気が付いたのは、ワシントンに帰ってからだったという。

「ワシントンに帰ってこの写真を見た時に、すごく大きなことに気付いたんです。それが私の外交という分野で、自分の人生を掛けていこうと思った大きな原体験で。それが何かというとですね、」

そう一気に話すと、少しだけ、言葉を区切って-

「この写真を撮った場所。パールハーバーです。」


「パールハーバーにおいて、日本の防衛大臣が、アメリカの政治家と対話をする。これが75年前、誰も想像できなかった。それをつないだのが、日本から来て、アメリカの議員のもとで働いている日本人が、つないだ。75年前は、絶対に想像できなかったと思います。」

「私がすごいという話じゃないんです。75年間、これを可能にした人達が、何百何千と言う人たちがですね、この平和をつむいできた。さまざまな人達が、太平洋の平和、二国間の平和を願って。この瞬間を作るきっかけをくれたんだ、と気付いたんです。」

「私がこの2人をつないだのでもなく、名前も知らない、あの人やこの人の活動の成果で、私がこの二人をつないだんだ、と気付いた時にですね。私も、そうやって名前が残らなくていいから、いつか、この平和は、誰かがつむいできた平和なんだって思ってもらえる、その欠片かけらになりたいって、本当に思ったんです。」

おだやかな真珠湾
 ハワイ州観光局公式ポータルサイト「allhawaii.jp」より

◆なぜ今、国民民主党なのか - 嘘をつかずに、自分の思いを遂げられる場所

深作ヘススが、アメリカで歩んできた道程。そして外交への決意。
その熱弁に耳を傾けるほど、ひとつの疑問が生じる。

深作ヘススは、この夏、2022年参院選に、国民民主党から出馬する。
なぜ、国民民主党なのか-。

外交は政権の専権事項である。外交を志すのであれば、政権党である与党自民党のほうが道は近そうに見える。彼ならおそらく、自民党から出馬したいと言えば出馬できただろう。

一方の国民民主党は、議員数、両院合わせてたったの23人。与党どころか野党第三党。その独自路線から、全方位から批判を浴びることも少なくない。

政党支持率も、ごく僅か。

選挙のたびに危急存亡。今度こそ終わりだ、と誰もが言う。自身の勝敗どころか、党の存続すら危うい - そんな声もささやかれる国民民主党から、なぜ深作ヘススは出馬を決意しているのか。

そうした疑問を、僕は率直に投げかけた。
厳しい状況は理解している、と前置きしつつ、深作はこう答えた。

「答えはシンプルです。なぜ国民民主党じゃないんですか?」

唖然あぜんとする僕に、彼はこう説明してくれた。

「政策一本でやるんだ。いろんな政策を打っていって、実現している政党ですよね。」

つまり - 彼が国民民主党を選んだ理由は、僕たちが国民民主党を推す理由と、まったく同じだった。僕たちと同じ気持ちで、彼もまた、国民民主党を選んだ。

https://twitter.com/FukasakuKj/status/1528925586928074752
37本演説ノックチャレンジに挑む深作ヘスス(本人Twitterより)

「なんで俺たちだけ失われてんの?」 - 失われた時代を生きて

「経済政策もそう。」

国民民主党について語るうち、深作の言葉は、さらに熱を帯びはじめる。


「私たち37年生きてきて、人生のほとんどを失われた時代の中で過ごしてきて、

『なんで俺たちだけ失われてんの?』
『なんで俺たちだけが、このまま失われた時代を歩まないといけないの?』

って。なんで…政治って本来そこに、責任を取っていくべきものなのに、そこに答えを出してないじゃない。

じゃそれに対して、新しい手法であったり、それを試そうとしている人達、これを推していくってのは当然やっていかないと。」


取材中、それまでずっと「私」という言葉を用いてきた深作ヘススが、この時だけ、「俺」と言ったことを、ここに添えて報告しておきたい。

同じ時代を、同じ国に生きる一人の、心の叫び。
僕たちと同じように、失われた25年を共に生き、同じ気持ちを抱えている、ありふれた37歳。

ばかみたいに真面目で、飾らない政党。だからこそ

そして再び、焦点は国民民主党に移る。


「玉木さん、国民民主党が言ってることって正しいの?わかんないけど、やってみないといけないじゃん。

2年前のコロナ給付金(一律給付金)もそう。今ガソリンの価格が下がっているのもそう。当たり前に必要なことを掲げていて、ばかみたいにまじめで上辺うわべを飾らない政党。だからこそ本当にやっていけるんですよ。

「私たちの生活を良くするのは政局じゃないんです。政策なんです。だけど、皆さん政治の話をするとき、〇〇派が強い、〇〇派が…でも、政局で私たちの人生、良くなんないですよ。政策を語ることが政治家の仕事なんだから、政局ではなく政策を!という…あの、なんでこの話したんだっけ?」


僕らは少し笑った。

思っていることをそのまま話して、話して、あれ?
ここにもまた、僕たちと同じ、ありふれた人間・深作ヘススの素顔が見えた気がした。

仕切り直して、深作は続ける。

「それ(政策)を真剣にやろうとしている“まじめな政党”が、国民民主党なんだと思います。」

確かに、国民民主党は、面白みのない政党だと言われることもある。
難解な政策論は、響く人ばかりではないだろう。
見栄えの良い国会バトルを繰り広げるわけでもない。

パフォーマンスをしない、飾り気のない、ともすれば「つまらない」と思われてしまいかねない政党。
だからこそ、本当にやっていける。

そして、だからこそ -

「嘘をつかずに、自分の思いを遂げられる場所」

深作ヘススは、国民民主党を、こう表現した。

https://twitter.com/FukasakuKj/status/1530107835878895616/photo/1
(本人Twitterより)

「みなさんと、おんなじ。」

国民民主党の候補予定者として、日々街頭に立ち続ける深作。
しかし、自身の立場を、彼は決して特別なものだとは思っていない。


「みなさんと、おんなじ。だって、僕らは国民民主党を応援してるじゃん?みなさんは党員として、サポーターとして、ビラ配りとしてやっていく。僕は候補者としてこの戦いを戦うから。じゃあ一緒にやろうね。こういうことです。」

「みなさまと同じ戦いを、候補者という“役割”でやってると。」


理解できる気がした。

人は誰もが、それぞれ違った経験をする。それぞれ違ったものごとを学び、違うものを得る。
この国を、社会を、なにかを変えたい。未来のために何かをしたい。そう思って自分の手札を眺めたとき、そこにあるカードも、人によって違う。

ポスティングやビラ配りのノウハウ。
デザインや動画編集のスキル。
チラシを目の前で捨てられても折れない心。
時間と体力。人懐っこさ。
僕には、文章術というカードが手元にあった。
深作ヘススには、外交・安全保障の経験というカードが。

ただそれだけの違いでしかない。

そして、そんな僕らが、同じように共感を持って集った旗印。その旗に、たまたま「国民民主党」と書いてあった。それだけの話。

だから、それぞれの持てるカードを使って、自分にできることをやっていこうよ。その“できること”が、深作ヘススの場合、候補者という役割だった。

本当に、それだけの話。
だから、みなさんと、おんなじ。

https://twitter.com/FukasakuKj/status/1526146879129780226/photo/1
仲間と共に活動を続ける。応援に駆け付けた鈴木あつし代議士の姿も。(本人Twitterより)
https://twitter.com/FukasakuKj/status/1530804661464473601
JR川崎駅にて。国民民主党・はまぐち誠 参議院議員と共に。(本人Twitterより)

◆最近、たのしかったことは何ですか? - 深作ヘススの“守りたいもの”

もう少しだけ、深作ヘススという人物を探ってみたくなった。
そこで僕は、この取材の最後にふさわしいであろう、とっておきの質問を投げかけた。

- 最近、楽しかったことは何ですか。たとえば、ご家族とのエピソードとか。

「楽しかったこと…楽しかったことですか…」

少しだけ記憶を手繰り寄せるような表情を見せたあと、深作ヘススは、こんな話を聞かせてくれた。


「実は先週末、ゆっくり、家族との時間…夕方4時ぐらいからですね、久しぶりに家族の時間があって。普通にご飯を食べたことが、私のなかで幸せです。」

「妻がいて、娘がいて、私がいて、ご飯を食べて。ああ、どうやったらこういった普通の生活を、多くの人たちが-。」

「なんにもないんですよ。ただのご飯を食べる。これを幸せって思えることが、いかに幸せか。」

「本当になんにもない、普通のごはんを食べるということを、幸せに感じられる。こういった…これが絶対、世界のみんなの幸せじゃなくてもいいんですが…こういったことに幸せを感じられる国に、日本がずっとあり続けてほしいなって。」

「娘も大きくなった時に、大事な人がいて、大事なものがまわりにあって、いろんな意味で満たされていて。これをどうやって次世代に担保していくのか。」

「娘ができたことで、娘にそういう(満たされた)時代を生きて欲しいし、失われた時代を生きて欲しくないし。そのために今、候補者として、私の選んだ道は正しかったなと。」

「(選挙は)めちゃくちゃ厳しいし、まったく名前は知られていないし。でもいいんですよ。ここでやるって決めたんですから。」


ようやく、全てがつながった気がした。

様々な角度から深作ヘススという物語に光を当て、その実像を探る。その試みの末に浮かび上がったのは、なんてことのない、僕らと同じ、“ありふれた人”。

働いて、家に帰って、家族と一緒にご飯を食べて、一日の終わりにビールを開けて、面白い映画を見て、笑って。そんな小さな幸せを、両手でそっと包み込んで、守り、はぐくみ、そして次世代に受け渡していきたい。

そんな願いを、みんなと同じように持っている。
本当に“ありふれた人”なんだと、僕はようやく理解した。

https://twitter.com/FukasakuKj/status/1527193135792930816/photo/2
愛娘とのひととき。(本人Twitterより)

「本当に心を痛めている」 - 浮かび上がった、もう一つの政策課題

ありふれた日々の幸せを語るなかで、深作ヘススは、若者の自殺問題についても言葉を零した。

「これは実は、どこにも書いていないんですが…」


「私が本当に心を痛めていることの一つは、10代-30代の自殺問題です。この素晴らしい国で、なんでこうやって…若い人がその…その選択肢しか選べないんだって…」

「生きることがつらい。死にたいんじゃなくて、生きることから逃げないといけない。こういったことが、本当になんで起きてしまうんだろう。本当に、本当にですね、これをどうにかしないと。


もしこの話を、取材を始める前に聞いていたら、僕は理解できなかっただろう。外交・安全保障の専門家が、自殺問題を語る。そこに繋がりを見出すことは、きっと難しかったはずだ。

でも、今ならわかる。

ありふれた日々の幸せを守りたい。外交も、安全保障も、経済も、そして自殺対策も、すべてはそこに繋がっている-深作ヘススという物語の実像に。


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◆おわりに


結論を出そう。

深作ヘススとは、何者なのか。
その答えは、“ありふれた人”である。

僕たちと同じ、ただの人。
それ以上でもそれ以下でもない。

平和を願い、ささやかな日々に幸せを感じ、それを守り、次の世代に受け継ぎたいと願う、ごく普通の父であり夫。失われたこの25年間、僕らと同じ時代を、共に生きてきた37歳。

確かに、外交・安全保障という、ほんの少しだけ珍しいカードを彼は持っている。でも、それだけ。笑っちゃうぐらい、本当にそれだけなんだ。僕はそう確信した。


インタビューを終えた翌朝。目覚ましがわりのスマートフォンに、こんなニュースが飛び込んできた。

北朝鮮、ミサイル発射。
もはや慣れ親しんでしまった報道トピックスの一つだ。

SNSでは大喜利大会。

今シーズン第22号ホームラン。
キャリア史上初となる3打席連続ホーマー。

北朝鮮の“指導者”を野球選手に例えた、定番のジョークだ。
いつものように笑えない自分に気が付いた。

平時と有事。その曖昧な境目にある、僕らの日常。
いつもより少しだけたくさん、いろいろなことを考えたあと - 「いいね」を押した。

ちっぽけでくだらない、ありふれた日々の姿に。

文:Utoka(@utoka_da4


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・執筆者:Utoka(@utoka_da4)
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