大好きジャンル名! - Rogueリリースを受けて、ローグライト考察とジャンル論

 SteamにRogueがリリースされるようです。昨今のローグライトブーム、そしてローグライクがライトを飲み込み拡大していくシーンにおいて、本家の存在は立ち戻るホームポイントであっても、ジャンルを打ち据える楔にはならないでしょう……多分。そんな見方をしています。

 さて、まずはこのタイトル、Steamタグに「ローグライク」が付いていることが話題になりましたがこれは明確に正しいタグです。
 ジャンル名というのは翻って後から付くものであり、月下の夜想曲の時にメトロヴァニアという言葉は無く、デモンズソウルの頃にもソウルライクという言葉は無く、どちらもアクションRPGとして同じ棚に並ぶものでした。さらに言えばメトロヴァニアの一翼を担うメトロイドはRPGとも言われず単にアクションだったと思います、RPGとは経験値とレベルアップであると頑なに信じられていた時代が過去ありました。
 後の類型からプロットして繋いだ一本の線がジャンルであり、それは稀にアクションとRPGの棚を横断し、そして過去にも未来にも無限に伸びるのです。であれば仁王とThe SurgeとSalt and Sanctuaryを繋いだ線はダークソウルの中心を貫き、メトロイドと月下の夜想曲から線を伸ばせばMomodoraへと伸び、Rogueも当然ローグライクの直線上です。
 これを「biim兄貴の動画にbiim兄貴リスペクトタグが付いている」と見る向きもあるようですが、「biim兄貴の動画にbiimシステムタグが付いている」という理解が、恐らく正しいハズです。

 次に、特に断りもなくぶっ込んだローグライトという言葉、これ2020年現在結構な取扱注意ワードで不用意に出すと面倒臭いのですが軽く触れておきます。といってもジャンル定義結論ではなく、ジャンル論の準備段階、面白さの成分分析までです。
 まずローグライトとローグライクの違いについて、マイナーゲーム.comの記事の紹介。ローグライトという言葉を使いだした人やらローグライク開発者の世界会議やら、詳細に纏まっていますので是非ご一読を。

『トルネコの大冒険』と『FTL』が違うように、『ローグ』を知ってる世代からすれば『ローグ』と『FTL』は違うのです。
ただローグライクという言葉が浸透しすぎているため、新たにローグライトの分類を入れても必然性を感じない人が多いとは思います。

そのためローグライトという言葉を個人的に使うのはいいのですが、他人に押し付けると争いのもとになるのでやめたほうがいいでしょう。

ローグライクで通じるならローグライクでいいのだと思います。

 さて、これを踏まえた上で、何故FTLはRogueと全然違うのにRogueっぽいと思われたのか、Spelunkyは、Risk of Rainは……と見ていくのがジャンル論ってやつでしょう。

 FTLはスペースコンバットの系譜、限られたジェネレータ出力をシールドやらレーザーやらに割り振り、被弾しては酸素が逃げないよう隔壁を閉じたり何だりといったゲームです。明らかにRogueではありませんがイベントやらアイテムやらがランダムだからローグライト……だけではないハズです。
 探索を繰り返す度に目減りする燃料、軽微に抑えようとも積み重なる機体損傷、明確な時間制限としてのRebel、有限リソースの中で可能な限りの探索を行い装備を集める、可能な探索の上限を手元のリソースから見極めるゲームプレイは、そのままRogueに言い換えられる……かもしれない。
 そんな観点で、FTLは明らかにRogueでなくてもRogue的な味わいがある、ローグライトであると言われたのだと思います。

 余談ですが、FTLにはShip解禁要素がある、持ち越し要素があるのでローグライクではない、だからローグライトである、というのは誤りです。ジャンル名というのは同じ要素で繋ぐ線ですがその要素とはゲームシステム/原因ではありません、ゲームプレイ/結果です。パーマデスで刺した串に繫がっているのはアーケードスタイルの1CC文化であり、その串をローグライクとは、ジャンルとは呼びません。しかしその行為自体はゲーム理解の手段だと思っています、ゲームの臓物を狙い慎重に串を刺す冒涜行為が、私の趣味であり活動内容です。

 Spelunkyはプラットフォーマー、飛んだり跳ねたりで敵を避けるなり踏むなり、2次元迷路をアイテム目掛けて決死のダイブするゲームです。明らかにRogueではありませんがマップがランダムだからローグライト……ということだと思います。
 強固なゲームプレイ、走る飛ぶ登る投げる撃つが心地よいゲームに、その操作を行使し続ける無限のステージが欲しい、そういった設計思想は今に始まったことではありません。例えばダイダロスはRogueの面白さを目指したのではなく、単にDOOMを行使し続けるためだけのプロシージャル生成ダンジョンがありました、そのDOOM部分がお粗末だったのは別の話として。或いはXCOMも状況がプロシージャルに生成されるストラテジーゲームですが、索敵カバー監視の定石を慎重に一手づつ打っていくプレイフィールは、それを行使し続けるための無限のステージが欲しいと確かに思わせるものでした。ABA GamesのBML三部作(と私が勝手に呼んでいる)、Noiz2sa、PARSEC47、rRootageも、弾幕進化論によりプロシージャルに生成される弾幕に対し、自身の回避技能を無限に行使し続けるゲーム群です。だらだらとタイトルを並べましたがつまりはテトリス、落ち物パズルのエンドレスモード、究極的にはあれを目指したものです。
 現代ではこういった、ゲームプレイ無限行使型プロシージャル状況ゲームにもローグライトという言葉が使われます、稀にローグライクとも。しかし同ジャンル内で最もRogueを感じないのがこのタイプです、ここにローグなんとかと名付けてシレン好きに売りつけたら返金も止む無しでしょう、豚骨ラーメンの看板で入って二郎が出てきたようなものです、確かに豚骨出汁は間違いじゃないがオレが食いたいのは博多豚骨なんだ、ラーメンならその出自の時差から二郎系なり博多豚骨なりと呼べますが、同時多発ローグライトではその両者が同時に豚骨と名付けられました。

 Risk of Rainは2Dアクションシューティング、スキルを振り回して最大効率で敵を殲滅しアイテムを集め強化したキャラクタで更に敵を殲滅するゲームです。これもまたRogueには見えませんがランダムだからローグライト……というゲームの中から突然変異的な需要を生み出しました。
 Risk of Rainの主人公は難度の高さのせいか貧弱な印象を受ける存在であり、実際に最初は貧弱ですが、アイテムを集めきった際の尋常ならざる性能はあらゆる存在を灰塵に帰します。これは単にファーミングが上手く行ってレベルが上がったトルネコというものではなく、出現するアイテムとスキルとのシナジー、例えば手数に優れるCommanderに確率発動アイテムが噛み合うだとか、そういった相乗効果によってもたらされる暴力です。そしてその暴力は時にゲームをすら破壊します、妖刀かまいたちを振るうシレンとしてではなく、例えばビルドを完成させルーンワードを付けてWWを振り回すDiablo2のようなもの、だったのかもしれません。
 一回制のゲームにおける成長要素はそのランの最中に始まって終わります。これは一見引き継げない成長として相性が悪くも見えますが、一回で終わりランダムなのであればどれだけイカレたシナジーでも運が良かったの範疇に収まってしまう、許されるということでもあります。あらゆる側面の強化要素が複雑に絡み合い原型がなくなるような体験は、ローグライトにおいて今では十分期待できるものです。

 ざっくり3つに分類してみましたがこれが全てではありませんし、例に挙げたタイトルもまたその極北であるとも限りません。例えばNova Drifterはヤバそうなシナジーのビルド作ってゲームを壊そう!という点では圧倒的にピュアですし、20XXはロックマン無限行使ゲームとも取れますが、飛行やら何やらで折角用意されたロックマン部分を台無しにしながら爆速で駆け抜けるゲーム破壊体験もまた代え難いものです。
 何より最近ではローグライトという言葉自体が段々と使われなくなっている印象です。IGNでは去年辺りを最後にプロシージャル生成ゲームをローグライトと呼ばなくなった気がします、そろそろローグライクがアクションでも何でも飲み込んでしまったのかもしれません。そうなるとターン制ゼルダとでも言うべき昔ながらのローグライクにまた別の呼称を付けたくなりますが、これは私の悪癖なのでしょう。ローグライトについてぐだぐだとクダ巻いて良い最後の時間を、我々は過ごしています。

 ローグライトというジャンルが内包する要素について、さらっと触れてみました。この言葉が無くなった時に上記の分類が意味を成さなくなるわけではありません、なぜならジャンル名なんてのは、最初から、意味がないんです。
 ゲームは全部違う、これは自明なことです、ゼビウスのコピーにだって今では別物としての値段と需要があるわけですから、究極的にはジャンル名はタイトル一つ一つに個別に存在すべきものです。それらを束にするための言い訳としてジャンル名を書く時、脳に走る電気的作用こそが趣味としてのジャンル論の醍醐味です。
 製作者への枷となる鬱陶しいモノというイメージもあるジャンル論ですが、消費者サイドの理解のための一助、考えるに至らせる一押しとして、脳内棚にジャンル名の札差してゲームを並べる行為は、十分に興味深いものと思います。

追記:ローグライク変種名で私が一番最初に触れたのを思い出しました、だんじょんぷらいむ!のローグライクライクでした。あれは見た目がローグっぽいだけ……だったと思ってましたが、そういや満腹度とかあったなあ。今やったらRogueっぽいと思えたりするんでしょうか、リアルタイムだってだけでローグライクの棚からずらす謙虚な時代のゲームです。

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