【小説】 釣りの苦さと惚気の甘さとの狭間で苦しみながら
2010年夏、僕はとんでもない砂漠の中を1人で歩いていた。周りには黄金色の砂が広がっていた。昼間はただひたすらに歩き続けた。歩きたくはなかった。しかし歩かないと僕の体はどんどん砂の下に沈み込んでしまうのだ。ときどき前方に理想の自分が歩いているのが見え、僕は力をふりしぼり早歩きして追いかけるのだが、彼はどんどん遠ざかっていき、しまいに僕はそれが蜃気楼であることを悟った。他にも見慣れた人たちが前方へ現れると、僕はそのたびに叫んで助けを求めようとした。しかし、声を出そうとしても出