イギリスでの年齢差別と定年制度〜英語記事紹介④〜
今回紹介するのは昨年末にイギリスの新聞インディペンデントから出た年齢差別に関するこちらの記事です。
差別と聞くと多くの人は性別や肌の色、国籍に基づいたものを想像すると思います。しかしこのケースの特徴的な点はそれが年齢を理由とした差別であるということにあります。そしてさらに注目すべきは問題が起きたのがオックスフォード大学という世界最高峰の学術機関であったということです。
年齢差別は英語ではAgeism(エイジズム)やAge Discriminationと呼ばれておりこれまでイギリス社会でも大きな争点になってきました。例えば定年退職はイギリスでは年齢差別にあたるとして"The Employment Equality (Repeal of Retirement Age Provisions) Regulations 2011"によって廃止されました。(これに関するBBCの記事、法内容の詳細に関しては最後に載せています)
そのため原則として年齢を理由とした差別は正当な目的(a legitimate aim)を達成するために見合う手段(a proportionate means)である場合のみに許されます。
今回紹介する大学における年齢差別行為は最終的に、正当な目的ではあるもののその達成に見合う手段ではないと判断されました。前置きが長くなったので以下では全文を翻訳するのではなく要約する形で紹介していきます。
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舞台となったのは先述の通りオックスフォード大学であり声を上げたのはポール・ユワート教授です。教授は2017年9月に大学側から退職させられるまで38年間に渡って勤務し続けていました。
問題となったのは同大学が2011年に適用し始めたEmployment–Justified Retirement Age (EJRA)です。この方針は多様性の促進と若手研究者のキャリア形成を目的としており68歳以上は働けないというルールを定めていました。(現在は69歳以上に変更されています)
ポストを離れたユワート教授は統計的データを集めて、それに基づきEJRAは若手研究者にとって僅かなポストを用意するものでしかないと大学側に反論しました。
今回のケースを対応した雇用裁定所(the employment tribunal)は大学側の施策を正当な目的のためであると認めつつも、非常に差別的であるにも関わらず新たなポストがたった2~4%しか新たに産まれないのであればそれは見合った手段ではないと述べました。結果として原告である教授は年齢を理由として不法に差別されたと結論づけました。
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オックスフォード大学ではユワート教授の以前にもEJRAを問題にした教授もいましたが、そのケースでは大学側の施策が見合った手段として認められました。そのためEJRAが一概に不適切な施策であるとは言えないことに注意する必要があります。
2021年2月15日 文責:D
イギリスでの定年廃止に関するBBC記事。
定年廃止法に関する詳細。