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パパの「DESU NOTE」【短編小説】
いつも仕事から帰って来たらビール飲みながらテレビを見てる。
そうじゃないときは、パソコンでカタカタやってる。
たまに口を開けば
「どうだ学校は?」がおきまり。
私やママが話しかけても
「ああ」「そっか」ばかり。
そんな男だが外で遊んでいる風でもないしマジメなのだろう。
先日、パパが出張で珍しくいなかった。
私はチャンスとばかりにパパの部屋にこっそり入ってみた。
風俗店の名刺があるかもしれない。
もしかしたら浮気の影を見つけてしまうのではないか。
ドキドキしながらも後でバレないよう慎重に探る。
机の引き出しを開けたら一冊のノートがあった。
一目見て悪い予感がした。
「DESU NOTE」
マジックでそう書かれていたからだ。
私はごくりとツバを飲み込んで、ページをめくる。
すると殴り書きのようにいろいろなことが書かれていた。
「何これ・・・」
パパが以前、ママに字が汚くて読みにくいと指摘されたことがある。
「マルクスだって字が汚いっていうぞ。頭がいいってことだよ」とか言い訳してたっけ。
それにしても汚いわ。お酒を飲みながら書いたのじゃないかしら。
冒頭にはこうある。
「DESU NOTE」はわたしの本音を吐露する秘密の場所だ。
素を吐き出すことから「出素ノート」と名づける。
そうなんだ。
藤原竜也と松山ケンイチが出演した映画『DEATH NOTE』の綴りを間違えていると思ってバカにしていたけど、一応名づけた理由はあるらしい。
書き出しのタイトルはさすがに集中して書いたのか比較的わかりやすい。
タイトルだけざっと目を通してみた。
「上司がバカなら部下もアホ。まったくどいつもこいつも」
「俺の苦労なんてちっともわかっちゃいない。家族のくせに」
「結婚したときの天使はどこにいったんだ!たまには優しくしろっての」
「癒やしてくれるのは○○ちゃんだけだよん。いつもありがとね」
そんな恨み辛み(一部意味不明な感謝)の言葉が次々と出てくる。
ウザい、ウザすぎる!
さらにページをめくり続けると気になるタイトルがあった。
ん?これはどういう意味なんだろ?
「noteも潮時か。最近なんか違うんだよなぁ」
この『DESU NOTE』をやめるつもりなのだろうか?
パパの新たな一面を知ることができるかもしれない。汚い文字だけどなんとか読み進めてみよう。
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