『ボレロ』と『デジモン』が“融合”|時を超えた天才のコラボに鳥肌
「どこから切っても金太郎飴」
わたしがはじめて『ボレロ』を聞いたときの印象です。
ハッキリ言えば退屈な曲だと思いました。
金太郎飴は長く伸ばした飴を小さくカットして作ります。
同じ絵柄が次々と出てくるため「どこから切っても・・・」のことわざになったというのが通説です
主に「個性がなく皆おなじようだ」という意味で使われます。
『ボレロ』は同じようなメロディーが延々と繰り替えされるため、わたしは「金太郎飴」を連想しました。
クラシック音楽に関心はあるものの、さほど詳しくはありません。
高校生の頃、水谷豊の主演ドラマ『赤い激流』でショパンの「英雄ポロネーズ」を聞いてカッコイイと思った程度ですから。
ギター小僧でロックギタリストに憧れていたこともあり、ジェフ・ベックの「ベックス・ボレロ」は知っていました。それでさえ退屈に思えて数回しか聴いていません。
ジミー・ペイジがラヴェルの「ボレロ」にインスパイアされてアレンジした楽曲だと分ったのもずいぶん後になってからです。
そんなわたしが、ある出来事から「ボレロ」好きになろうとわ。
(ホワンホワンホワンホワンホワン・・・ ※回想シーンに変わるときの効果音)
東映アニメまつり
『ポケットモンスター』がテレビアニメ化され人気に拍車がかかった25年ほど前。
近くの市民会館で開催中の「東映アニメまつり」に幼い娘二人を連れて行った。
三本が上映されるなか、メインは『デジモン』というアニメ作品らしい。
名前からして「どうせポケモンの二番煎じだろう」ぐらいに考えていた・・・
冒頭から聞き覚えのあるBGMが流れはじめる。
「おっ、ボレロやん」
アニメのオープニングテーマがクラシック音楽だとは珍しい。
前のめりでスクリーンに集中しているとなんか違う。
セリフが少なめで狭間を『ボレロ』が埋める。
なかなかドラマティックな演出ではないか。
わたしはその世界観にグイグイ引き込まれ、途中から鳥肌が立った。
30分以上におよび最初から最後まで『ボレロ』だけを流す斬新な発想に衝撃をうけたからだ。
「このアニメを作った人は隠れた天才だな」
心の中で何度も唸った。
(ホワンホワンホワンホワンホワン・・・)
『サマーウォーズ』
アニメ映画『サマーウォーズ』が劇場公開されたのは2009年の夏でした。
以降も夏になるとテレビで放送されています。
細田守監督の名が一躍有名になったのは、この作品によるところが大きいと言えるでしょう。
わたしは『サマーウォーズ』に出てくるヒロイン・夏希の曽祖母「栄おばあちゃん」のキャラが好きでよく見ています。
つい先日、2020年2月に公開された『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』の記事を読んでいたところ、細田守監督の名前を見つけて驚きました。
アニメファンからすれば当たり前のことかもしれません。
でもアニメに疎いわたしにとって、あのとき市民会館で見た『デジモンアドベンチャー』が細田監督のデビュー作ということさえ感動的だったのです。
そして『サマーウォーズ』へとつながったことに「やっぱり天才だった」と納得したのはいうまでもありません。
ラヴェルと細田守が運命的なコラボ
この夏にはモーリス・ラヴェルの半生を描いた映画『ボレロ 永遠の旋律』が封切られました。
ラヴェルが天才的な作曲家であることはもちろんながら、彼が生み出した『ボレロ』の魅力と魔力に焦点をあてた意欲作です。
『ボレロ』を作曲したのは1928年とされます。長い時を経て『デジモンアドベンチャー』に起用されたのだから、ラヴェルも喜んでいることでしょう。
クラシック界だけでなく「ベックス・ボレロ」のようにさまざまなアーティストが影響を受けている『ボレロ』。なかでも音楽畑ではない細田守監督がインスパイアを受けたことは“天才”同士の縁を感じずにはいられません。
いろいろな『ボレロ』
拙文では伝えきれなかった部分が多々あるかと思います。
映画『ボレロ 永遠の旋律』の予告映像をはじめ、『デジモン』でのシーン、ファンが投稿した聖地巡りの映像、そして『ボレロ』を踊るバレエダンサーなどを紹介します。
お時間の許す限りごゆっくりお楽しみください。
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