神座はいつも正しい。

前回の記事を読んでくれた人が50人いたとして、フィオナ・アップルの新譜を少しでも聴いてくれた人はたぶんそのうちの5人くらいで、その上で、これ最高だわ10点間違いなし!Pitchfork万歳!ってなった人はたぶんゼロだと思う。

僕は元々この手の変わった音楽が好きだけど、それでもこのアルバムは結構ハードルが高いと思う。正直よく分からない。ただ、10点満点が正しいのかどうかはさておき、確かに何かすごいことやってるっぽいな、とは思う。

この感覚は大事にしたい。「よく分からん」のまま終わってしまうこともよくあるが、「よく分からん」を辛抱した先に、知らない世界が見えてくることもままある。ペット・サウンズ然り、神座然り。たぶん、見えそうで見えない状態なのだ。この山をもう少し登れば景色が開ける、そんな予感がある。その景色を見た時の快感もなんとなく想像できる。

高校生とか大学生の頃は体力があった。山があったらとりあえず登ってみようかというエネルギーがあった。その暇もあった。今はそのどれもない。新しいラーメン屋がどんどんオープンしている横で、なんとなく神座に吸い込まれてしまう。神座はいつも美味しいけれど、そこに冒険はない。こういう年齢になってしまった今、少ないリソースを最大限利用すべく、「この先に何かありそうだぞ」という勘は大事にしたい。

とはいえ、勘だけでは巡り合えない景色もたくさんある。だから、親切な誰かが「この先の景色は最高ですよ」と教えてくれたらいいな、と思っているし、逆に、自分も誰かの道案内ができたらいいな、と思う。

というわけで、プレイリストを作ってみた。
https://open.spotify.com/playlist/40XIHnfjbHM2qi95DIdvnL?si=A_N7TL_LTU-p9gow5_Y-5g

断っておくがかなり暗い。ゾワゾワすることはあっても、ウキウキすることは絶対にないと約束する。人の好みは千差万別だし、僕の好みにはかなり偏りがあると自覚している。「こんな暗がりに連れ込むなんて、この変態!」と思う人ももちろんいるだろう。それでもお節介を焼きたい。人間は古来よりそうやって生きてきたはずだ。

言わせてもらえば、フィオナ・アップル的な曲、素通りを許さないすごみを持った曲を集めた(つもりだ)。同時にポップさも意識したから、フィオナ・アップルの新譜がエベレストだとして、富士山くらいの登りやすさはあると信じたい。富士山を登るのも楽ではないが、それゆえに、頂上で食べるカップヌードルは格別の味がするはずだ。

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