Emerald Sword/Rhapsody
お気づきの方もいるかもしれないが、時折、「曲名/アーティスト名」のタイトルで記事を書いている。この記事がまさにそうだ。しかしこのタイトルには理由がある。我々は、「愛すべきおバカ曲」というテーマの下にこの記事を書いている。そこには、愛情とおバカさの両方が等しく揃っていなければならない。どちらに肩入れすることもできない。だから、客観的なタイトルを付けざるを得ない。ということにしておこう。
前回の記事ではセンチメンタルな方向に酒が入りすぎたきらいがあるので、今回こそは、正しく、「愛すべきバカ曲」を紹介したい。と思ってはいるが、ご多分に漏れず、酒と筆に任せて書いているので、約束はできない。正直、自分でも、この文章がどこにいくのかわからない。
まぁでもとにかく、今回はこの言葉で始めてみようと思う。ご唱和ください。
「ヘヴィメタルの世界は、愛すべきバカであふれている。」
有識者(すなわちメタル・ウォリアー)であればご存知の通りだが、ヘヴィメタルの、バカの側面を描写するのはとても簡単だ。例えば、全てのメタルミュージシャンは、男性であっても、胸下より長いロングヘアーが義務付けられている。しかしながら、彼らは、決して文句を言わない。なぜなら、演奏中、頭を振った時に、長髪の方がカッコいいからだ(ちなみに、1曲のうち30秒以上は頭を激しく振らなければいけないというルールもある)。長髪が男臭さに一役買っていると彼らは信じている。ちなみに、唯一許される例外はスキンヘッドである(ただし、似合う場合に限り、かつ、1バンドに2人以上いてはならない)。
ヘヴィメタルのおバカ加減に関しては枚挙に暇がない。このテーマで指輪物語よりも長く書ける自信がある。しかしながら、なんとなく賢明ではない気がするので、簡潔にまとめよう(これを処世術という)。分かりやすくバカっぽいバンドを紹介すると、例えば、中世の鎧をまとったバトル・メタルなんてのがいる。まぁでもこれは可愛いほうで、最近ではモンゴリアンメタルとか、歌舞伎メタルなんていうのもいる。なんでもありな感じのバカさ加減が最高だ。
しかし、くれぐれも忘れないで欲しいのは、彼らは「愛すべき」バカだということだ。上で貼ったリンクはいずれもバンドのオフィシャルHPだが、開いていただければ、彼らの(おそらく彼らにとってはベストショットであろう)写真が出てくる。ひとしきり笑った後でも構わないが、是非、彼らの目を見ていただきたい。そこに、純粋さ、真剣さを見出すことができないだろうか?
そう、彼(女)らは、至って真面目なのである。心の底からカッコいいと思っている。そして、ここが重要なところだが、リスナーたるメタルウォリアー達も、その美学を共有している。その髪は演奏に邪魔じゃないかとか、男臭さってゆーか汗臭さでは?とか、デスボイスなんてただのびっくり人間でしょ、とか、速弾きなんてマスターベーションに過ぎないとか、なんてゆーか生理的に無理。とか、そんな正論は決して口にしない。美学を共有していればこそ。正論なんて野暮である。
宗教的と言われてもいい。しかし、僕らは、脳みその根っこの方で、ちょっと汗臭いけれど確かな何かを共有している。ダサいのは頭の片隅で分かっている。けれど、抗いようもなくカッコいいのだ。誰に何と言われようと、カッコいいのだ。どうしようもなく、好きなのだ。今日観たTEDのトークの洒落た言葉を借りれば、WhatとかHowのレベルではなく、Whyのレベルで共鳴し合っているのだ。これは、ファッション的な繋がりでは決してあり得ない。だってダサいから。そういう非商業的な繋がり方って、現代社会では、結構レアなのではないだろうか?
予定通り、だんだんよく分からなくなってきた。忘れないうちに、このへんで表題曲の話をしておく。Rhapsodyというダサい名前のバンドの、Emerald Swordというクソダサいタイトルの、めちゃくちゃカッコいい曲である。まさに、メタル史に燦然と輝く金字塔である。
彼らの凄いところは色々ある。しかしなんといっても凄いのは、「自分たちで(指輪物語的な)壮大なストーリーを一から創作し、そのストーリーに沿ってサウンドトラックをつける」という手法で音楽を作っているところだ。これ以上ダサい自己完結があるだろうか?(念のためだが、ここでの「ダサい」は「カッコいい」と同義である。)そして、このEmerald Swordという曲は、彼らの物語の中でも、最高のハイライトの一つである。氷の戦士が、暗黒王アクロンを倒してアンセロットの王女を救い出し、魔法の国を復活させるべく、王の命を受け、エメラルド・ソードを手に入れるための長く厳しい旅に出る。そういう、熱い決意が込められた曲なのだ。なんと崇高であろう。
イントロだけで1分以上に及ぶ。しかし、そのクラシカルな旋律の高揚感たるや、それだけで涙が出てくる(決して酒のせいではない。以下同じ。)。そこから間髪入れずやってくる、熱いギターリフと怒濤のツーバス。既にあまりのカッコよさにお腹いっぱいな僕らに対して、ファビオ・リオーネは、熱く語りかけてくる。氷の戦士の叫びを、お前は聞いたか。気高き戦士の覚悟を、お前は胸に刻んだか。
そして、なんといってもサビである。何がどうなってこんなにカッコいいのか、意味が分からない。間違いなく、脳の中でも、ものすごく深いところから来ている種類のカタルシスだ。たぶん大腸あたりなんじゃないかと思う。こうなってくると、もはや僕の筆舌には尽くしがたい。できることといえば、歌詞をコピペすることくらいである。坐して読め。そして魂が打ち震えるのをかんじるのだ。