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短編小説集

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短編小説をまとめています。切実な感情を丁寧に拾いたいと思って書いています。
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#短篇小説

短編 骨まで美味しくお召し上がりいただけます

短編 骨まで美味しくお召し上がりいただけます

 金魚の骨を見たことがある。しかも、それは自宅の水槽の底に沈んでいたのだった。

 当時わたしはおかっぱ頭の小学生で、金魚を四匹、飼っていた。縁日ですくってきた子たちだったので、揃いも揃って小ぶりで、一様に目の覚めるような朱色の身体を持っていた。それでもわたしはどうしても見分けをつけたかった。それで、わずかな体格差を頼りに小さい方からハル、ナツ、アキ、フユと名付けた。一旦名付けてしまうと、自分が昨

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