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音のしっぽ

ピアノの音が点々になる

ピアノに初めてさわった年長さんの男の子。
一生懸命5本全部の指で全身全霊ピアノに向き合います。

ドローイングでやったあの虹のようにピアノを弾いてみよう、ということで。

にじがでた

ど・れ・み・ふぁ・そ

ああ、むずかしい。

と小声が漏れる。

音が点々となって、身体も一生懸命固くして。

あ、と思って、すぐにそのワークは終わり。

ピアノの減衰していく音をいつまでも聞く

ピアノの鍵盤をどれでも良いので一つ選んでそこにずっと指を置いておくだけ。

そして音のしっぽに聞き入る、というワーク。

おっとりタイプのその子は、あっという間にその世界に入っていくのがわかりました。

真ん中の音を鳴らす
片方の耳を(多分そっちがききみみなのね)ピアノの方に傾けて、目をキラキラとさせて、ずっと、ずっと音のしっぽを追いかけていきます。

十分に時間をとって次の音
「まだ聞こえる?」とそっとたずねると
姿勢を崩さないで、うん、と。

「まだ?」

「うん」

「まだ」

「あ、きえた」

「そうだねー」

そして今度は高い音

鍵盤を押したと思ったらもう聴こえない。

あ、

といって笑い顔。

「音のしっぽをつなげて、虹が出た、ひいてみよか」

「うん」

そして、再びドレミファソのメロディ。

すぐに音はつながっていて、ドレミファソ〜ソファミレド〜 

虹のように、可愛い手で弾いていました。

次の週

今週やってきて、手洗いと少し手遊び歌を楽しんだ後に、
私が声をかけることもないのに、
彼はピアノの前に座ったらすぐに ピアノの1番高いどの音を鳴らして 

すぐに消える

と嬉しそうに言って何度か鳴らし、今度は少しづつ低い方へ。

「まだ、きこえる」

と、時々つぶやきながら。

ここまで、私は無言。てか、なにもしなくていいのがよくわかります。

むしろ余計なものをたさないのがどうもここでの私の役目。
よいききてにまわること。

そして気が済むまで音のしっぽのワークをやったあとに、

即興演奏を始めてくれたのでした。
耳をすませながら。

伝えたいのは音楽。やり取りしたいのは音楽。

utena music field は音楽教室の看板をおろして、音楽室になりました。

それでてにいれることができた、この得難い時間。

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音楽前夜(谷中みか)
愛媛の片田舎でがんばってます。いつかまた、東京やどこかの街でワークショップできる日のために、とっておきます。その日が楽しみです!