生徒が主導権を握ろうとするとき
先週は、h君も私もなんとなく気分が噛み合っていなかったと思います。
いつもおだやかなhくんです。
が、この日は、カツンとなにか金物のように言葉も仕草も跳ね返ってくる。
自閉傾向がすこし強めな日。
その前の週に、絶対できると思うから、と
彼の意に反して、両手で弾かせたのが不満だったか。
だって好きな曲は言わなくったって両手で弾くやん、弾けるやん。
とはいえ、めいれいされるのが嫌なんだろな。
めいれいと違うんやけどな、
最初からできん、したくない、というのを、
前回はただ私は待っていて、結局彼の方が根負けして弾いてくれた。
そして、できた、できたやん。
でも、彼の中になにかむむむ、というものがのこってたんやないかと。
それで先週は、彼は先手をとることにしたようです。
これ、やろう、というと、
「いや、ドローイングしよう!こういうの!」
私が困惑してるのをみて
「あ、それか、こういうの!」
「でね。あとで、面白いアニメの話してあげる、一緒にみよう!」
これは自発性か?これをしたい、というものにのっていったほうがいいのか?
いやいや、でも、その絵に描いてあるのは”俺のいう通りにしよう”だ。
これはどうも、ピアノは弾けないねえ。私もピアノを弾かせる気力はこの日はなかった。戦いたくはないけど、彼のペースに乗ってはならない。
時々、こういうことがあります。
これは生徒が主導権を握ろうとするとき。
ああ、じゃあドローイングね。
とスケッチブックを広げて
こっちがh君の陣地、こっちが私の陣地。
右側に私が描いて、左に伸ばす。伸ばした先を捕まえて、彼が左側に描く。
そして右に渡す。
仲間じゃないけど、仲間。
独り言だけど、コミュニケーション。
「楽しい!」と彼。
こんなのがしたかったんだ!
よしよし。
でも、ちょっとやりすぎたやろうか?
アニメ一応見たけど、私は、こういう殴って死んで生き返ってっていうのは好きじゃないし、ここはこういうのをみる場所じゃない、と私もちょっと意固地になって、その日はなんとなくお互いしっくりこないまま別れました。
でも、今週は入ってくるなり、すごく良い子感が最初から漂っていて
「あー、もうアニメは見ない。」となぜか入ってくるなり。
先週の私がよほど不機嫌に見えたのかな。
「そうねー。h君ひとつだけ。大事なこと。
ここは、音楽するところ、それだけはわかっとってね。」
「わかった。」
今週はいつもの素直なh君でした。
今週は、お手玉をして、お手玉うたのドローイング。
下の真ん中のいっこだけちょっと他のより濃い。
ここにくると嬉しそうに早く描いていたのが印象的。
結局、どうしても両手でひきたがらなかった曲は、
飛ばして次へすすむことにしました。
無茶無茶素直にレッスン受けてくれました。
あの曲はたぶんもうプライドがゆるせんやろうなあ、と思うし。
逆にどうしてもあの曲をやらせたいというのはこっちのプライドやと思うし。
学習的にはいくらでも他で補完できるはず。
お互いが譲歩。
と思っていたら、
右手でその曲を弾きだしました。
あれ?やってみる気でたのかな?
来週チャレンジしてみるかも。
乗り越えられたら、すごいけどね。
ピアノだけのことじゃなくて。
愛媛の片田舎でがんばってます。いつかまた、東京やどこかの街でワークショップできる日のために、とっておきます。その日が楽しみです!