自由に・・・
自由に自分の思いや考えを言葉で表出することは難しい。
認知症看護認定看護師教育過程では、5週間の実習が課せられている。この中で、達成しないといけないミッションが多く、想像以上の過酷さがあった。
一番の苦しみは、自分の弱点である人前で自分の考えを言葉にして言うことだった。振り返っても、苦しい苦しい5週間だった。毎日、認知症看護認定看護師の指導者の前でカンファレンスを実施する。その中で必ず、自分の考えを問われる。1日目から、ダメだった。なにも言えない。沈黙が続く。言葉が出てこない。
落ち込みながら寮に帰る。
言えないけれども、頭の中には点でバラバラだが考えは少なからずある。これを文章化にする、不足している知識を調べて、自分の考えに肉付けしていく地道な作業を繰り返した。
とはいえ、急に人前で言えるようになるものでもない。
カンファレンスが恐怖だった。苦手意識を持つと、思考が停止する。
しどろもどろでも、言葉に出さないといけないと言わんばかりに・・・
毎日繰り返し、考えを求められた。
私はこんな壁にぶち当たっていたが、他の研修生は躊躇なく人前で話す。得意な人が集まっている。パワーポイントでの研修会も、原稿なしでも実践できる人もいる。
私は落ちこぼれ、劣等感を感じながら、常に下を向いていた気がする。
「認知症者のさまざまな思いを知るために、今後も丁寧なアセスメントをしてください。アセスメントをして、認知症者の代弁者になるためにも発信してください。苦手だと思いますが、克服してください。自分に自信をもってください。そして自己研鑽を続けてください。」と指導者が評価表に記載してくれた。
これは嬉しかった。
いまだに言葉で伝えることは苦手である。
しかし、業務の中でのアセスメントは浅くはなるが、可能な限り記録に残すよう努めている。継続していくと案外、看護師よりもセラピストや薬剤師から、記録を見て参考にしていると声をかけてくれることが多くなった。認知症のある患者さんへのケアの一助になれば、こんな嬉しいことはない。
認定看護師は、論理的思考が求められる。これは努力しないとできない。指導者の言うとおり、自己研鑽が必要であることは今、痛いほど実感している。
今後、アフターコロナになれば、研修会開催などの機会が増えるだろう。その日までに、認知症ケアが面白い、楽しいと思えてもらえるように・・・・力を養わないといけないと考えている。