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【UTEC MBAサマーインターン記】テクノロジーVCで自分の可能性とキャリアの道筋を探る

サイエンス/テクノロジーを活用するスタートアップやVCでのハンズオン支援に興味はあるけれど、きっかけがない、入口が分からないという声を時折耳にします。実際に、それまでの職歴が大きく影響したり、一足飛びの転職はリスクが大きくおすすめしません。
今夏、MBA留学生3名が東京大学エッジキャピタルパートナーズ(通称UTEC-ユーテック)でサマーインターンシップに参加しました。VCでのインターンに挑戦した3人が2か月間で何を感じ、留学後のキャリアの考え方にどのような影響を受けたのか。VC、スタートアップに興味のある方に限らず、これから留学される方、今後の長期的キャリアを模索中の方にも読んでいただきたいインタビュー記事です。

2025年のUTECサマーインターンは現在募集中です!詳しくはUTEC公式SNSウェブサイトをチェックしてください!


左から浜田さん、ズーさん、岡田さん

2024年度UTEC MBAサマーインターン生
浜田 源(はまだ・みな) 東京大学法学部卒。Kearneyにてヘルスケア・消費財領域の新規事業戦略やクロスボーダー案件を担当。2023年よりColumbia Business School MBA課程に在学し、現在はLondon Business Schoolに交換留学中
ズー シンチョー ロンドン大学にて開発学修士を修了後、サントリーにてサプライチェーン部門で提携先交渉、予算設計•管理、需給予測を担当。2023年よりColumbia Business School MBA課程留学中
岡田 夏奈(おかだ・かな) 東京大学文学部卒。Googleにて中小企業からエンタープライズ企業まで、幅広く300社以上へデジタルマーケティング支援を実施。2024年よりINSEAD MBA課程留学中
※2024年10月時点

インタビュアー
陳 嘉洋(ちん かよう) UTECプリンシパル。AI、量子技術など破壊的イノベーションの創出を目指す技術領域におけるシード/アーリーステージ投資を担当。担当投資先のOxford Quantum Circuits、Quanmatic、obniz、RICOS、forest、issinの社外取締役・監査役を務める。

UTECとの出会い

陳:まずは、皆さんの自己紹介と、このインターンで主に関わったプロジェクトの内容について教えてください。

浜田:浜田源です。昨年夏からニューヨークのコロンビア大学MBA課程に在籍しています。
UTECのインターン前半はパートナーの坂本さんが出席するほぼ全ての投資先の会議に同席し、投資委員会資料の作成やソーシングなどを行いました。後半はいくつかの投資先に深く入り込んで、事業改革や市場調査といった支援もしました。
 
ズー:ズー シンチョーです。コロンビアビジネススクールに在籍しています。留学前はサントリーで6年ほど働いていました。
この夏はベンチャーキャピタリストのKiranさんのもとで、UTECが既に投資をしているところに入り込んで、国内外を問わず一緒に働くことをメインにしてきました。

岡田:岡田夏奈です。この夏からINSEADという、フランスとシンガポールにキャンパスのあるビジネススクールに進学予定です。これまではGoogleでデジタルマーケティングコンサルタントを4年ほどしていました。
私の業務内容はお二人の業務のハイブリッドで、基本的には投資先1社にフォーカスした支援をしつつ、複数の投資担当者のもとで投資委員会資料の作成やプレゼンのサポートをしました。

陳:そもそも、どうしてインターン先にUTECを選んだのでしょうか?
 
ズー:UTECを知ったきっかけは、MBA出発前の壮行会でした。その後、パートナーの坂本さんがコロンビア大学に立ち寄った際に、どういう組織で何をしているのか、といった説明を受けたのが2回目でした。もともとVCやスタートアップに興味があったので、詳しく話を聞くうちに引き込まれて、応募したいという気持ちが高まりました
あとはフィーリングですね。面接を重ねて、UTECのいろんな方としゃべるうちに、こういう人たちと働いてみたいと強く思ったことが大きな理由です。あとは、海外投資が圧倒的に多いということも決め手でした。

UTECは毎年春に留学前壮行会を開催しています。ベンチャーキャピタリストの海外出張の際には周辺のビジネススクールで小規模説明会も開いています。例年、募集&選考は11月~翌年1月頃です。UTECホームページまたはSNSをフォローして最新情報をチェック!
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2024年春に麻布台ヒルズで開催された留学前壮行会

間近で体感 ハンズオンVCの「価値の出し方」

陳:業務において印象に残っていることはありますか?

浜田:追加投資に向けた投資委員会準備です。技術を深く理解するために、ラボを訪問して実機を動かすのを見たり、専門家から説明を受けたりしたことは、テクノロジーにフォーカスしたUTECならではの経験でした。
以前、別のVCのインターンで行ったソーシングやリサーチとは大きく異なる、取締役会という限られた時間内での、坂本さんの発言や振る舞いによる「価値の出し方」を見られたことも、ものすごく勉強になりました。

岡田:私も、あるフィジカルサイエンスの会社のデューデリジェンスサポートを通して、パートナーの業界に対するキャッチアップのしかたが非常に参考になったし、投資委員会での見るべきポイントも大変クリアになりました。私はもともと文系で、私なんかがVCに来て大丈夫かな…と不安だったんですが、このポイントを知れたことで、今後、自分でも再現性を持って取り組めそうです。
別の投資先企業の営業組織立ち上げや体制強化のサポートでは、インターン生でありながらも本気でコミットし、チームの一員として部門の立ち上げメンバーのような形で関われたことが、学生時代のインターンとの一番の違いだと感じました。経営陣の方とも非常に濃いやりとりができ、とてもやりがいを感じました。

「インターン生」の枠組みは自分で超える

陳:ズーさんは最初から積極的に海外出張に手を挙げていましたが、インターン生が海外視察って、他社ではなかなかしないですよね。実際に行ってみてどうでしたか?
 
ズー:はい、このインターン期間中にアフリカと中国に出張を経験して、リアルな学びが非常に大きかったです。
日本でアフリカの市場調査をした時に、政府、調査機関、コンサルが出しているデータがすべてバラバラで、信憑性のあるものが分からずとても困惑したんです。でも現地に行って自分の目で市場を見た時に初めてストンと腹落ちしました。「あ、こういうことか」と。その後、現地で得たインサイトを納得感を持って投資先に説明することができました。
また、私は投資先支援インターンとして投資先メンバーとがっつり一緒に動く機会が多いため、メンターのKiranさんから「実務以外の雰囲気や動きなどの投資先インサイトを共有する」という裏テーマが出されていました。最初は、信頼関係が無い中、二ヶ月という短期間でどう引き出せば…とかなり悩んだんですが、ここでもアフリカの現地に行けたことは非常に助けになりました。毎日社員達と対面で話をするうちにお互い徐々に打ち解けて、ついには経営陣の一人がご飯に誘ってくれたんです。そこで彼女の会社への思いやこうなっていきたいといった本音をじっくり引き出せた体験は、とても心に残っています。

陳:文化の違う国に行って業務を行うことにためらいやイメージとのギャップはなかったですか?
 
ズー:私はずっとアフリカ市場に興味を持っていたんですが、残念ながらこれまで業務で関わる機会に恵まれませんでした。インターン先を決めたポイントにUTECがアフリカで投資していることもあったので、全くためらいはありませんでした。
実際に行ってみると、想像よりずっと混沌としていました。知らないスタートアップがたくさんあり、まさにこれから起業しようとしている人と話す機会もあって、アフリカの力強さを感じました。
今回、私のたっての希望をかなえてもらい、アフリカの業務に携われたことは単純にすごく嬉しかったです。

アフリカ ケニア Nakaru VC
ケニア Nakuruの風景。エネルギーに満ち溢れていた。 ズーさん撮影 

歴史と革新 UTECスピリット

陳:メイン業務以外のところで、印象的な出来事はありましたか?

浜田:今年の夏がちょうどUTECの創立20周年の年で、記念式典に参加したんです。国内外の数百名の研究者、起業家、投資家が一堂に会し、ネットワーキングイベント、パネルディスカッション、ピッチコンテストも開催されて大盛況でした。まだインターンが始まったばかりの頃でしたが、日本のスタートアップシーンを盛り上げる上でUTECのこれまでの貢献と、次の20年に向けた大きな期待が寄せられていることを実感しました。

UTEC創立20周年
UTEC(株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズ)は、2004年に設立されたベンチャーキャピタルで、今年20周年を迎えました。主にシードおよびアーリーステージのスタートアップ企業への投資を行い、これまでに累計847億円を運用し、40社のIPOやM&Aを成功させています。
20周年の特設サイトはこちら
2024年5月に開催された20周年記念式典レポートはこちら

浜田:夏にはUTECのインターンアルムナイが集まったBBQや、全社員での合宿も開催され、サバゲーや屋形船でのクルージングを体験しました。業務中の皆さんの真剣な顔とはまた違うカジュアルな一面が見られたことはとても貴重な経験でした。とても楽しかったし、UTECは堅いイメージが強かったのですが、みなさんフレンドリーで、ほっとしました。(笑)

UTEC サバゲー 東京大学エッジキャピタルパートナーズ VC 社員
UTECメンバー全員による年に一度の合宿にインターン生3人も合流

岡田:複数の投資先のマーケティング、データ分析担当者の方を集めたマーケティング勉強会を開催したことです。インターン生が投資先向け勉強会を開くなんて聞いたことがなく不安でしたが、パートナーの小林さんから「やってみよう」と励まされ、プラットフォームチームとも連携しながら挑戦しました。結果、直接質問や相談を受けてアドバイスができ、スタートアップのリアルを知る非常にいい機会になりました。
私がいた2か月の間にも、社内ではPodcast企画が立ち上がったり、投資先向けに新しい勉強会を企画したり、どんどんチャレンジする風土があるなと感じました。

Kana Okada 岡田夏奈 VC UTEC マーケティング
岡田さんによるデジタルマーケティング勉強会は投資先からの反響が大きかった

UTECポッドキャスト「Tech Startupの舞台裏
Apple、Spotify、Amazonで配信中のUTEC公式Podcastチャンネルです。
毎回、UTEC投資先経営陣をゲストにお迎えし、投資担当者とともに事業にかける熱い思いを語り合います。
Tech Startupの舞台裏 

文系・海外志向の私のサイエンス/テクノロジー適性

陳: UTECの印象はインターン前と後で変化しましたか?
 
岡田:これまでは「東大のVC」って印象が非常に強くて、「投資先は東大の理系オンリー」というイメージでした。でも実際は、他大学発ベンチャーや海外の投資先がとても多かったんです。私自身も、とある海外スタートアップの日本進出をサポートする機会があって、嬉しいギャップでした。
 
陳:岡田さんが言うイメージってよく聞きます。どうしても国内や東大の印象が強いですよね。
サイエンステクノロジーの専門性が高いから文系の人には難しそうという声も耳にしますが、岡田さんは文系ですよね。実際どうでしたか?
 
岡田:私はもともと知的好奇心旺盛なタイプなので、同じタイプの方はすごくハマると思います。もちろん、理系バックグラウンドがあった方が近しい領域への投資はしやすいです。でも、実際は投資担当者の方々も、新しい分野を常に勉強されてるんじゃないかと。
 
陳:そうですね、私は今量子コンピューターの会社を2社担当してるんですが、私自身、実はもともと量子の知識はなく、入ってから勉強したんです。それ以外の領域も、担当する度にキャッチアップしています。
 
岡田:自分の詳しい領域への投資といっても、その分野の先行技術に一番詳しいのは研究者ですし、誰しもキャッチアップするところはありますよね。大切なのは自分が情熱を持って取り組めるか、だと思います。

浜田:私も、高度な理系の知識が求められると思っていました。もちろん理系の知識はプラスですが、UTECにはファイナンスやコンサルティングのビジネスバックグラウンドの方も多いですね。
起業家のピッチに同席して重要だと感じたのは、技術やビジネスモデルのすごく難しい話を即座に抽象化し見極めて質問することや、起業家と信頼関係を築くことでした。サイエンスのところで壁を感じる必要は全くなかったです。

ズー:今2人が話した印象は私も全く同感です。その他のイメージギャップだと、パートナーや代表の郷治さんの距離が非常に近いってことですかね。事前に想像していたより、相当近かったです!例えば、投資先評価会議では、郷治さんが一社一社丁寧にコメントをしているんです。ハンズオンとは聞いていたけれど、社長自ら全案件をこんなに気にかけているとは意外でした。
投資担当者とスタートアップの距離の近さにもびっくりしました。陳さんは投資先forestのフットサル部に参加していましたよね。ビジネスシーンで何日も行動を共にしたりというのは予想していましたが、プライベートでもここまで積極的に関わるからこその信頼関係なんだなと感じました。

陳が不定期参加している投資先forestのフットサル部の活動

サマーインターンで「キャリア仮説の検証」を

陳:UTECでインターンをしてみて、ご自身のキャリアゴールに影響はありましたか?また、ご自身にどのような成長を感じられましたか? 

浜田:私はこの夏、インターンを通して達成したいゴールが3つあったんです。
1つ目は、VCの業務が実際どんなことをしているのか、ソーシング、投資業務からハンズオン支援まで一気通貫で全部体験したい。
2つ目は、10年後にシニアになった時、どういう風に活躍できそうか明確なイメージを持ちたい。
3つ目は、すでにアメリカのVCでインターンをしたので、日米でVCファームの雰囲気や働き方、スタートアップシーンがどう異なるのかを知りたい。
UTECのインターンでは選考の段階からこういうことを伝えて、私ができるだけ多様な業務を体験できるよう、かなりカスタマイズしたインターンを組んでもらいました。3つのゴールをすべて達成することができて、非常にありがたかったです。

陳:その3つの目標にもし自分で点数をつけるとしたら?

浜田:100点です!! 

陳:卒業後のキャリアについては、VCへの興味が強くなった、逆にVC以外に興味が出てきたというのはありますか?

浜田:もともと自分に合いそうだと思っていたVC業務、例えば、ファウンダーから課題解決につながるビジネスモデルを聞き、それに対して自分の考えを述べることが付加価値につながるプロセスは、自分がワクワクする部分と一致していると確信できました。
それと、たくさんの起業家とお会いしたことで、今まで起業に対して抱いていた、「リスキー、しんどい事ばかり」といったイメージが払拭され、将来起業してみるのもいいなと思うようになりました。
もちろん大変な局面もたくさんありますが、それ以上に起業家の方がキラキラした目で事業について語る姿がとても印象的で。もともと興味のあったVCキャリアだけでなく、その隣接領域を含めたアントレプレナーシップへの興味が一層強くなったと思います。

ズー:実は私、不安要素が2つあったんです。正直なところ、サプライチェーンがバックグラウンドの自分が投資先支援って、どういうところでバリュー出せるんだろう?って。それに、自分は経験も1社だし、さらにずっと同じ組織にいたので、自分の経験やスキルがどれだけ応用できるのかもとても不安でした。その点、UTECはポートフォリオがかなり多彩な70社、その中から凹凸がぴったり合った3社を支援先に選んでもらえたのはすごく良かったです。
自身の持っているスキルについても、こうしたら汎用的に活用できそうという発見ができ、すごく自信がつきました
 
陳:ぶっちゃけ、ズーさんが今後行こうと思うのは、アントレプレナーシップに近い領域ですか?それとも元の大企業ですか?
 
ズー:アントレプレナーシップの方向に舵を切ります!

岡田:私は新卒からGoogleで、「テック領域以外のキャリアがイメージしづらい現状を変えたい」というのもMBAに行く理由のひとつなんです。今回は、まさにそこを加速できたと思ってます。
学生時代から「起業って面白そう」とぼんやり興味はあったのですが、起業する時の契約書はこういう風にまくのか、VCのデューデリジェンスはこういった要件を見るのか、と起業についての解像度が非常に上がりました。MBA後のキャリアもVCかアントレと絞れてきました。
 
陳:岡田さんは今回のインターン経験を踏まえて、これからどのように時間を使う予定ですか?
 
岡田:私がこれから行くプログラムは10ヶ月間と非常に短いので、最初から仮説を持って動かないと全然時間が足りないんです。アントレプレナーシップやVCに関わるコミュニティにガンガン参加することと、INSEAD卒業生のアントレプレナーの話を聞きに行く、という予定を立ててすでに連絡先をリストアップしてます。出発前にインターンをしたことで、留学前に舵を切り、スタートダッシュしやすい環境にできました

2か月の間にすっかり打ち解けた3人。日本の食事は安くて美味しい!とオフィス周りのランチ探索を楽しんでいたのが印象的。

留学、インターンを有効活用する3つの秘訣

陳:本日はUTECでのインターン体験を共有していただきありがとうございました。最後に、これから留学する方にひとこと!
 
浜田: 留学期間は長いようで一瞬で過ぎていきます。夏休みはまたさらに一瞬ですが、今までのキャリアとは違う業界を体験できる非常に貴重な機会です。期間中に自分が確認したい、見つけたいことをできるだけ早い段階で認識することが大切だと思います。サマーインターンは選考の時点からインターン先に自分の考えを遠慮なくシェアすることで、自分に合ったインターンをデザインできると思います。
 
ズー:一年生の早いうちから何をしたいのか目星をつけておかないと、あっという間に一年目が終わって、夏を有効に使えなくなってしまいます。事前にいろいろ調べて億劫になるよりも、何か面白そうなものを見つけたらとりあえず試してみる姿勢が大事だと思います。頑張ってください!
 
岡田:私はこれから出発するので、お二人から非常にインスパイアされました。私も自分が実現したいことや、達成したいゴールを今のうちから設定して留学期間を有意義なものにしたいと思います!

UTECオフィスのある東京大学本郷キャンパス南研究棟前で

UTECでは2025年もサマーインターンを実施予定です。詳しい応募要項やスケジュールはSNSと公式ウェブサイトで発信していますので、少しでも気になったなという方はぜひこの機会にフォローください。たくさんの皆様のご応募をお待ちしております!

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