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【離島デリ・2024春】八重山高校・公営塾への訪問(3/18)

はじめに

初めまして、東大Diligent ②デリ: 離島ゼミに所属している、文学部3年の髙橋です。
本稿では、八重山研修の初日に訪問させていただいた、八重山高校・公営塾について、事前準備、当日の様子、訪問を終えた今の所感、今後の目標などを書かせていただきます。


訪問するにあたって

訪問の目的

まず昨年(2023年)に、八重山防衛協会の山森陽平事務局長のご厚意で、離島の自然環境保全や地域振興に興味のある東大生たちが、石垣市長・竹富町長と対談する機会を設けていただきました。詳細は、当時の記事をご覧ください↓

そして今回は、今年の夏に開講される運びとなった東大体験活動プログラム「現地で学ぶ石垣島の現在」に向けた下見として、2つの教育現場を訪問してきました(今回の訪問は、3社の新聞に掲載していただきました)。
八重山高校訪問も、公営塾訪問も、東大など偏差値の高い大学に合格するための勉強を後押しするのではなく、将来の選択肢を増やすきっかけにしてもらうことを第一の目的としていました。高校生たちに親しみを感じてもらえるように、予めアイスブレイクや話題を考えておきました。「東京から来た東大生」という遠い存在に思われがちなステータスではなく、「ちょっとだけ場数の多い先輩」くらいの身近な存在として、目の前の高校生に寄り添い、その悩みや好奇心に応えたかったからです。私たちを身近に感じてもらった上で対話に臨むことで、高校生に、自身の可能性を信じ、新たな目標設定やそれを達成するための具体的な方法への一歩を踏み出すきっかけにしてほしいという思いがありました。

八重山高校訪問の内容

  • Diligentの活動広報

  • Diligentメンバー自己紹介

  • 高校生参加者の自己紹介

  • 各グループでのアイスブレイク&フリートーク

公営塾訪問の内容

  • 自己紹介

  • 公営塾のプログラム内容・学生主導プロジェクト(一部)の紹介

  • Diligentの活動広報

  • グループでのアイスブレイク&テーマトーク

    • 質問 ①「大学で学んでいることや、活動について教えてください!」

    • 質問 ②「授業がある日はどんな1日を過ごしていますか?」

    • 質問 ③「授業がない日はどんな1日を過ごしていますか?」

  • Diligentメンバーからのメッセージ

  • 自由歓談・連絡先交換

高校生たちから学んだ3つの視点

今回、八重山高校・公営塾で交流した高校生たちは、バイトと両立して勉強していたり、友達とzoom勉強会を開いて励まし高め合っていたり(Diligentでも、「④デリ: 自己研鑽会」で行っています…!)、生まれ育った島の問題に当事者として向き合ってプロジェクトを立ち上げていたりと、それぞれが自分の夢や目標に向かって主体的に努力していました。誰かにやらされるのではなく、「楽しい」を原動力に自ら行動を起こしている姿に、私たちも沢山の刺激をもらいました。
ここでは、地方創生の観点から、私が高校生の皆さんから学んだことをまとめてみたいと思います。

①地域固有の「資源」を発掘し、「保護・公開・活用」する

外部から見ると希少で価値あるものでも、その地域では当たり前すぎて、ビジネスや地方創生という文脈での「資源」としての価値に気づかれず、十分に活かされていないものは全国にまだ沢山あります。
しかし石垣島の高校生たちは、地域に固有な文化・風土を調べ、それを題材としたカルタや、山々の魅力や登り方などを分かりやすくまとめたガイドブックを制作・販売していました。ありふれた生活の場から、潜在的価値やニーズを自ら発掘し、「保護」に終わらず、「公開」、そして「活用」まで手掛けている、彼らの行動力には脱帽でした…。

②人が集まる場所を作る

石垣島では、大勢の人が集まれる場所・機会が極めて少ないです。劇場や映画館など、大勢で娯楽を楽しめる場も少ないし、子供たちの放課後の遊び場となる公園も少ない。車文化で駅がなく、ストリートパフォーマンスなど人が自然と集まる機会もない。公営塾が開講されている場所も、そうした現状への問題意識から、内閣府からの8000万円の支援を元に、仕事や教育の現場のために作られたものだそうです。

島の高校生たちは、別の高校に通う同世代と繋がる機会を創出するために、通う高校を問わない島の全ての高校生、ひいては地域の人々も参加できるお祭りを一から企画し、その運営をしていました。地域の問題をより身近な形で理解し、人と人との繋がりを生み出した彼らは、大勢の人が集まって生まれる大きな力が問題解決の端緒になり得ることを、身をもって知ったのではないかと思います。

③地域の問題に、地域住民自身が助け合って取り組む

自分たちのプロジェクトを立ち上げた高校生たちは、放課後も自主的に集まって話し合いを重ねていたそうです。協賛を募るのも、有識者と連携するのも、プレゼン全国大会への出場・公式SNSの運用を通して全国に発信するのも、誰かにやらされるのではなく、自ら感じた必要性・可能性に応じて、自分たちの納得できる形で実現させてきたものです。彼らの主体性と行動力は、島への愛着から生まれる熱意、そして彼らを無力な子供としてではなく、地域の未来の担い手として、その力と可能性に期待を寄せ、対等に接する地域の大人たちの理解と見守りの賜物だと思います。地域の大人も子供も一丸となって、「資源」を生み、育てて、身近な問題解決からより良い地域社会へと繋げていくムーブメントが起きる土壌が、石垣島にはありました。

訪問を終えてーー今の私たちにできること

ここで、今回の教育現場への訪問を終えた、私の個人的な所感を述べたいと思います。

自己との対話を促し、リミットを外すお手伝い

自分とは異なるバックグラウンドを持つ他者との対話は、自分の過去と現在を見つめ直し、今まで見えていなかった自分の強み / 弱みに気付き、漠然としていた不安・諦念を言語化する機会になります。自分とは違う他者に共通項や身近さを覚え、自分の視野や可能性を広げてもらうことは、進路や将来など、どのような選択をする時にも、自分の決断に自信と責任を持つことに繋がると思います。

今回は、高校生たちが自ら無意識にかけているリミットを外すお手伝いをすることが第一の目標であったため、アイスブレイクを取り入れたり、目線を合わせた対話を心がけたりしました。華やかな経歴を持つ成功者でも、決して才能があった訳ではなく、その陰に人知れない地道な努力や悩みがあったと知ってもらうことで、自分のこれからの努力や心がけ一つで道は拓けると気付き、夢に向かって頑張るモチベーションに繋がると思ったからです。

交流した高校生たちの中には、都会への漠然とした憧れから、東京や名古屋などの大学への進学を志す一方、自分には実現困難だとリミットをかけて諦めている人もいました。(もちろん偏差値の高い大学を目指すことだけが正解ではないという前提を確認しつつ、)興味や意欲があるのに、不要なリミットを自らにかけて諦め、挑戦すらしないのは勿体ないということを、Diligentのメンバーは、彼らに寄り添った目線で、それぞれの高校生時代を振り返りながら伝えました。私も交流の最後に、「東京の高校生とは環境が違いすぎるから、進路も諦めてたけれど頑張ろうと思えた」、「以前東大生(Diligentとは別団体)と話した時は遠い存在に思えて諦めかけたけれど、やっぱり東大を目指したくなった」と高校生たちに言ってもらえて、心から嬉しく思い、これからも応援したくなりました。

東大Diligentだからこそ、できること

ここで、東大Diligentという団体を「大学生 × 東大 × 非営利 × 多様なメンバー構成」という4つの要素に因数分解した上で、そんな私たちだからこそできることは何かを考えてみました。

  • 大学生:私たち大学生は、自分も数年前に抱えていたものに似た悩みや不安を抱える高校生たちに共感し、寄り添い、和らげることができます。また、中高生にとって、大人よりも親近感を持ってもらえる身近な存在として、中高生のニーズを社会に届けたり、社会の問題を彼らに問いかけたりと、距離のある二者を繋ぐ架け橋となることもできると思います。

  • 東大生:東大生の得意な勉強を教える以外にも、私たち東大生にできること・やるべきことはまだ沢山あります。「身近に感じてもらい、リミットを外す」役割については前述の通りです。

  • 非営利:中長期的な視野を持った活動で、短期的な数値目標ではなく、「長期的なソーシャル・インパクト(後述)」に尽くすことができると思います。

  • 多様なメンバー構成:Diligentには、文理や学年を越えて多様な東大生が集まっています。今回の訪問メンバーにおいても、教育に加え、環境保護、生物、農業開発、医療、文化、芸術など、興味・知識のある分野は多岐に渡りました。石垣島での教育について、メンバー間でも、別の観点から捉えて新たな要素を掛け合わせて考えてみることで、実際に新たな気付きや可能性を見出すことができました。

補足) 長期的ソーシャル・インパクトに必要な3つの視点

では、前述の「長期的ソーシャル・インパクト」のためには、どのような視点が必要なのか、私なりに考えてみました。

  • ①持続性:石垣島への訪問は、この一度きりの企画に終わらせず、5年間の実施を計画しています。継続的に訪問することで、高校生たちに自分の夢やキャリアに向きあう機会を定期的に提供することができ、石垣島の若者が多方面で活躍し、その功績を石垣に還元できるようなサイクルのきっかけ作りに繋がると思うからです。島の人々が自身のキャリアと向き合い、未来の選択肢を増やす場を構築していく必要性は、石垣市長から熱い想いを持って直々にお話しいただいたものでもあり、私たちもそのビジョンに携わっていきたいと思っています。

  • ②関係性:東京から島に人を派遣して、東京の知識や人的・財的資源を導入するだけでは、島の発展はいずれ頭打ちになってしまうと思います。私たちが、実際に現地に訪れ、そこに住む人たちと繋がり、島の歴史や文化だけでなく問題にも触れ(今回の研修のように、ただ観光地を巡るのでなく、環境保護や教育の現場を訪問するなど)、「観光」よりも深い「関係」を持ち(「関係人口」の一員として)、数値やデータでは読み取れない不満や掬えないニーズを知り、実情に合った施策のために、地域住民と共に学び、共に考えていくことが大切だと思います。

  • ③自律性:価値を発掘した「資源(伝統・自然・人の繋がりなど)」は、外部が運用しても、地域の持続的な発展には繋がらないと思います。地域住民が愛着を持って、それを「保護」・「公開」し、世代を問わず人が集まって対話するための触媒として、或いは観光資源として「活用」していく自律的な仕組み作りを、官民連携で進めていくことが大事だと思います。

↑新聞にも掲載していただきました!

終わりに

私は今回の研修で、教育や自然、環境問題といった馴染みの薄かったトピックに触れる中で、気づけば質問攻めをして発見や学びに心を踊らせている自分に出会いました。たとえ興味の薄い分野・遠く感じる夢であっても、そこで無意識にリミットを掛けず、まずは接点を作って対話してみることで、価値観を大きく変える発見や、心の震えるような体験が待っているかもしれないということを、私自身、学ばせていただいたのだと思います。
改めて、素晴らしい機会を用意してくださった方々と、対話を通して沢山の学びと刺激をくれた高校生の皆さんとDiligentの仲間たち、そしてこの長文に最後までお付き合いくださった読者の皆様に、心からの感謝を込めて、ここに擱筆したいと思います。

文責: 髙橋聖奈





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