秋は夕暮れ
夕暮れは、決して秋のものだけではありません。春の夕暮れも夏の夕暮れも冬の夕暮れも、それぞれ、心に響くものがあるでしょう。
それなのに、秋の夕暮れはどうにも特別な気がしてしまいます。
「秋は夕暮れ。夕日の差して山の端いと近うなりたるに、、、」
かの有名な清少納言による『枕草子』の一部分です。学校では必ず教科書で見ますし、授業中に暗記をさせられることもあったかもしれません。
沈むゆくお日さまを眺めながら、つい、口ずさむかもしれませんね。
夏が終わってゆく寂しさ、冬がやってくる心細さ、まだまだ騒がしさの残る秋。それなのに、だんだんと静けさを感じるようになる秋。
夏と冬の合間のゆらぎの季節である秋。
暑くもあり、あたたかくもあり、涼しくもあり、寒くもある季節です。
秋は夕暮れ。
繰り返し音読し、繰り返し口ずさんだせいか、秋は夕暮れと自然と思い浮かびます。他にも、秋はたくさんあるんだからと探してみますが、夕暮れとセットで思い浮かんでしまいます。
橙色の柿、田畑を歩きまわる烏、緑が減っていく山野、ふさふさとしたススキの穂。
夕暮れがあたたかく包んでいる様子は、ほっとするような哀しいような気分になります。