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【創作ショート】たった40秒のものがたり 〜あぶら虫〜

はぁはぁはぁはぁ…荒い息の音が闇に消える。

だだっ広い大きな夜の下で

潤んだ瞳が見つけたのは

葉の裏に隠れた小さな小さなアブラムシの大群だ。

アブラムシは、日当たりの良い場所が大嫌い。
風通しの良い場所が大嫌い。

風に揺れない葉の裏でいつの間にかこんなに集まった。

ヤバくない?
ヤバッ
ヤバイ、ヤバイ
こいつヤバイよね?

じわじわとアブラムシの視線がその見慣れぬ生き物に集まっていく。

ここは、田んぼのあぜ道。
こいつは今日捨てられたんだ。
誰に?
飼い主に。

やったな!今日お前は自由を手に入れたんだ!
と茶化す夜風の声は、この捨てうさぎには聴こえない。

うさぎの大きな耳に聞こえてくるのは、小さな世界の小さなアブラムシの声。

その視線から逃れようと、うさぎは足をピョコピョコ小刻みに動かして、45°頭の向きを変えた。

ヤバ

また、いた。

今度は違うアブラムシの群れ。
アブラムシはどこにでもいる。

その時、大きな夜空に一筋の光。

でも、気付かない。
うさぎの潤んだ目の先にはアブラムシ

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