最新研究が示す、健康寿命を延ばすために肩を早く治すべき理由と方法
「心筋梗塞、脳卒中、がん、肺炎、転倒骨折、これら全てによる死亡リスクに関係することがあるんです。」
今回は健康寿命・長生きと「肩の痛み」「夜間痛」「認知症」がテーマです。
研究者が示す、長生きのために肩を早く治すべき理由と方法をお届けします。
※このnoteでは、整形外科医:歌島大輔が医学的根拠をもとに、わかりやく、かつ実践的な医療健康情報をお届けします。
ときどき出てくる「ふんぞり男」とは、その名の通り、ふんぞり返って態度がデカい患者さんです。
健康寿命と肩との関係!?
以前も、ウォーキングの話や口癖の話で、長生きに関するお話をいたしました。
ですが、意外と「長生きはしたくない」っていうコメントもあったんですよね。
そういう方にも共通するのは、健康寿命はできるだけ長くということですよね。
健康寿命というのは、ザックリ日常生活に制限のないくらいの
健康な状態の寿命という感じで使われています。
平成22年の厚生労働省の発表によると「男性の平均寿命が79歳、で健康寿命が70歳、女性の平均寿命が86歳、健康寿命が73歳だった」ということです。
つまり、男性で9年、女性で13年ものあいだ、日常生活に制限があるくらいの不健康な状態が続くというのが現状の日本人だってことです。
この寿命と健康寿命の間を狭めたいと考える人がどんどん増えてきています。
なぜか・・
それは「人生100年時代」という言葉もあると思います。
医療の発達によって、世界中で寿命が延びているわけですから、そうなったら健康寿命も延ばさないと、不健康で人によっては辛い期間が長くなってしまうという危惧があるんだと思います。
シンプルに長生きしたいですか?
それとも、長生きはそんなに求めないけど
健康でやりたいことがやれる期間、「健康寿命は長くしたい」ですか?
あなたの価値観、考え方や、今それに向けて取り組んでいること、もしくはお悩みをお気軽にコメント欄に書き込んでください。
ありがたいことに、こちらのコメント欄は僕も返信しますが、多くの人が会話する場にもなっていて、いわゆるサードスペースとしての機能を持ち始めています。
ぜひぜひ、みなさまで穏やかに語り合ってみてくださいね。
一言でもOKです。
さて、長くなりましたが
今日のテーマは「長生きしたいなら、肩を早く治せ」というテーマでした。
ふんぞり男「なんで、肩なんだ。関係ねぇだろ!」
そうですね。
普通そう思いますよね。
でも、様々な医学研究を紐解いていくと、そうとも言い切れないんですよ。
そして、肩と長生き、それも健康寿命が関係するなら、今、肩にお悩みの方も、その治療や予防に対するモチベーションを高めることができるというポジティブな狙いもあるのがこの動画です。
ぜひ、最後まで学んで「よし、肩を良くしよう!」というモチベーションアップに繋げてください。
具体的に肩を良くする方法はこのチャンネルにめちゃくちゃありますから、ぜひぜひ他の動画もご覧くださいね。
ではいきましょう!
長生きしたけりゃ、肩を治そう!
根拠1 シンプルに死亡リスク低下
心筋梗塞・脳卒中・がん・肺炎・転倒骨折・・。
これら全てによる死亡リスクに関係することがあるんです。
これ、ご存じですか?
握力が高いと、今挙げたリスクがすべて減るんです。
2015年に「Lancet」という超有名医学雑誌に掲載された研究(*1)で明らかにされました。
握力と健康に関する話はとっても興味深いので、詳しくはこちらの動画もご覧くださいね。
ふんぞり男「は?握力って、肩の話だろうが、なに言ってんだ」
はい、とっても真っ当なクレームです。
そこで次です。
根拠2 肩と握力のふか〜い関係
こちらは、2017年のご高齢者を対象にした研究(*2)なんですが、肩に痛みがある人と、肩に痛みがない人で握力を比較したんですね。
そうすると、肩に痛みがある人の平均握力が20.38kgであったのに対して、肩に痛みがない人は24.63kgだったんですね。
つまり、肩が痛いってだけで握力が20%くらい落ちちゃうんですよね。
ふんぞり男「なんで肩が痛いと、握力が落ちるんだ。握る筋肉は肩にはないはずだぞ」
お、勉強してますねぇ。
素晴らしい。
おっしゃるとおり、肩周りに握る筋肉、すなわち指を曲げる筋肉は存在しません。
すべて前腕、つまり肘より先にあります。
なのに「なんでなのか?」ですよね。
これは仮説でしかありませんが、肩が痛いと肩の機能も落ちますよね。
そうなると、肘や腕、手の位置が安定しないんです。
ちょっとイメージしにくいかもしれませんので、極論で言いますと、
グラグラしたバランスボールの上でベンチプレスをすることを考えてみてください。
思いっきり、力入りにくいですよね。
そこまで不安定じゃないにしても、肩の痛みや機能は小さくない影響を握力に与えるということなんです。
根拠3 五十肩も腱板断裂も長引くと…認知症リスク!?
健康寿命を縮める原因は、日常生活に大きな制限を来す原因とも言えるわけですが、その代表が「認知症」ですよね。
いかに認知症を予防していくかっていうことも、健康寿命を語る上では外せないテーマです。
ふんぞり男「また、お前、肩と関係なさそうなテーマだな」
そうなんです。
でも、認知症の大きなリスク因子として有名なモノの1つに「睡眠障害」があるのはご存じでしょうか?
ふんぞり男「お、おう。そりゃ、ちゃんと寝ないと、いけないよな」
あ、知らなかったようですね。
こちらのレビュー(*3)によると、睡眠時間が5時間未満だと認知症リスクが2.4倍になり、さらに睡眠の断片化があっても50%リスクが高まってしまうようなんです。
なお、睡眠時間は7時間くらいが理想で、9時間以上になってしまうと、これまた認知症リスクがあがっちゃいます。
あと、睡眠の断片化っていうのは、途中で起きちゃったりして、まとまって眠れないっていうことですね。
つまり、ちゃんと質の高い睡眠を、しっかりとした時間とれることが大事なわけですが、これを肩の痛みは邪魔します。
五十肩にしろ、腱板断裂にしろ、肩の痛みって夜間に増すことが多いんですね。
ですからこの動画なんかも、多くの方にご覧いただいているわけです。
こちらのレビュー(*4)では、10件の質の高い研究をまとめてくれています
すべての研究において腱板断裂における睡眠障害を報告していて、さらに、断裂を修復したあとに夜間痛と共に睡眠障害が改善したことも報告しています。
痛みが強くてまったく眠れない人も少なくない腱板断裂や五十肩ですが、
そこまでじゃなくても、多少なりとも睡眠の質に影響を及ぼしている可能性は否定できませんよね。
ということで、握力と睡眠という観点で肩との関連をお伝えしてきました。
結論としては、できるだけ速やかに肩を治し、肩が痛くない状態を長く維持することで
「握力も落とさず良い睡眠習慣を作ることが、健康寿命アップに繋がる可能性がある」
っていうことになります。
そんなこと言われても、なかなか治らないんだよ!
っていうお悩み、いつもたくさんいただいていますし、この動画のコメント欄にもどんなお悩みをお持ちか、お気軽に書き込んでくださいね。
本日の一言
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参考論文
(*1)Prognostic value of grip strength: findings from the Prospective Urban Rural Epidemiology (PURE) study Leong DP, et al. Lancet. 2015.
(*2)Cesar Calvo Lobo, et al. PeerJ. 2017 Comparison of hand grip strength and upper limb pressure pain threshold between older adults with or without non-specific shoulder pain
(*3)Alexandra M V Wennberg et al. Semin Neurol. 2017 Sleep Disturbance, Cognitive Decline, and Dementia: A Review
(*4)E Castro-Contreras et al. Acta Ortop Mex. 2022 [Rotator cuff injuries with nighttime pain and sleep quality before and after treatment] [Article in Spanish]