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【老化は痛くない】諦めないで!加齢性変化と痛みの関係

「それがイコール痛みの原因かっていうと、別問題なんですね。それを最もわかりやすく示してくれるのは‥‥」

今回の内容は「老化は痛くない!」がテーマです。
老化は痛くないので、諦めないでください。
加齢性変化と痛みの関係を理解できるようお届けします。

※このnoteでは、整形外科医:歌島大輔が医学的根拠をもとに、わかりやく、かつ実践的な医療健康情報をお届けします。
ときどき出てくる「ふんぞり男」とは、その名の通り、ふんぞり返って態度がデカい患者さんです。


老化は痛くない!

あなたは整形外科医がレントゲン画像を前に言う、このコトバを聞いたことはありますか?「ああ、老化ですね‥‥」

ふんぞり男「うわ、ついこの間、言われたぞ。俺まだ40ちょいだぞ。ふざけんなって言い返してやったんだ」

あ、ケンカしちゃいましたか。ふんぞり男さんらしいですね。

ふんぞり男「は?悪いのは俺じゃねぇだろ、あの医者だ!」

たしかに、そこは僕も同意です。安易に「老化」というコトバで片付ける整形外科医は問題です。

ふんぞり男「ほぉ、お前は言ったことないんだな」

ん〜、絶対ないとは言いませんが、極力言わないように気をつけています。

今回は、こんな感じで整形外科医に「老化」と言われて絶望している人はもちろん、言われてはいないけど、その空気を感じたり、何かしら年齢のせいで痛みを諦めている人に対して、「老化は痛くない!」というテーマでお伝えします。

この言葉、スゴい好きなんですよ。「老化は痛くない」・・・なんかシンプルだけど深いんですよね。

これ実は、Twitter上で知り合った先輩整形外科医の加藤先生がおっしゃった言葉なんですよ。
許可をいただき、拝借しております。ありがとうございます。

本当にこの言葉が勝手ながら気に入ってしまって、これをテーマに動画を創りたい、これをテーマに情報発信をしたいって強く思わせてくれたんです。
コトバの力ってすごいですよね。

「老化だから諦めなさい」ってコトバと「老化は痛くない」ってコトバ

もう180度違いますよね。あなたはどっちの考え方を選びますか?

ふんぞり男「そりゃ、老化は痛くないに決まってんだろ。でも、お前、実際、どういう意味だ?」

確かに、ちょっと抽象的ですもんね。
でも、今回の内容をご覧いただいたあとであれば、みなさまも「老化は痛くない」ってコトバが好きになってくれるはずです。

具体的にどういう話を繰り広げていくかと言いますと
残念な整形外科医から「老化だね」で片づけられがちな病態と対策TOP3という形で、3つの病気をご紹介させていただきます。

この3つの中にあなたが抱えているお悩みがあるかもしれません。
なかったとしても、誰もが通る道でもあります。
ぜひ、最後までご覧いただき「老化だね」と安易に言う整形外科医を見返すような人生を送っていただければと思います。

では、「老化だね」で片付けられがちな病態と対策TOP3を紹介します。

第3位 いつの間にか骨折

まずこれですね。「いつの間にか骨折」って、CMで流れたときにはうまいこと言うなぁと思ったんですけど、ご存知ですか?

ふんぞり男「は?知らん。骨折はいつの間にかとか、あるんか!?」」

あ、意外と、ふんぞり男さんは知らないんですね。
一時期、CMでもよくやっていましたよね。
これは背骨の圧迫骨折という骨折のことなんですね。

背骨ってどうなっているかご存知でしょうか?模型を使いましょうか。
こんな感じになっているんですよ。

皆様が背骨って背中を触って、触れられるところはここです。

これは棘突起という突起です。
実際の本体っぽいのはもっと前に、身体で言うと、もっと内側にあるんですよね。

ここを椎体って言います。脊椎の体だから椎体ですね。
意外と、解剖用語ってシンプルなんですよ。
で、この椎体が積み木のように積み上がって背骨ができているんですね。

腰(腰椎)が5つ、背中(胸椎)が12個、首(頚椎)が7個、積み上がっているんですね。
この積木の上に顔や頭が乗っかっていて、下に行けば行くほど、骨盤に近づくほど、かかる重さが大きくなっていきます。

例えば、ジャンプして着地したら、その瞬間に体重の何倍もの重力が背骨にかかるんですね。

このとき、骨粗鬆症などで骨が弱っていれば、椎体が潰れてしまいます。
これが圧迫骨折です。

一般的には、胸椎と腰椎の間が潰れることが多いです。

ふんぞり男「ジャンプしただけで潰れるとか、嘘だろ?」

もちろん、全員が全員、そうではありません。
ですが、そういう普通は骨折はしないだろうっていう衝撃でも骨折してしまうから、気づきにくくて、いつの間にか骨折って言われるんですね。

この前提として骨が弱くなってしまっていることがあります。
代表的なものが骨粗鬆症になるわけで、それはご年齢の関連が深いです。

ふんぞり男「ほら、お前、老化ってことじゃねぇか!」

そうなんです。僕は「老化は痛くない」って言っているだけで、「老化はなんの変化も及ぼさない」とは言ってないんですよ。

むしろ「老化は変化」です。
ご年齢とともにどんな人間でも心身は変化を起こします。

ここで大事な考え方をお伝えします。
「老化は痛くない」をもう少し詳しく表現すると、

「老化は心身の変化を引き起こすが、それがそのまま痛みの原因とは限らない」ってことなんです。

老化による心身の変化が痛みの原因だったら、年齢はさかのぼれないわけですから、痛みを諦めろってことになってしまいます。

そんな最後通告は、僕には安易にできませんし、多くの場合、事実ではないです。

ふんぞり男「ほぉ、熱いな、というか、暑苦しいな」

ですね。ちょっと冷静に。

この「いつの間にか骨折」と老化の関係はどうなのかと言えば、
骨粗鬆症の多くは老化の変化の1つです。
だから、骨がもろくなること自体は老化が原因といえます。
もちろん、それだけじゃないですけどね。

まず、痛みとの関係からいうと
「いつの間にか骨折」というコトバが、なんで出来上がるかと言うと、骨折に気づかないからなんです。

それは逆に言うと、たいして痛くない圧迫骨折があるってことなんですね。

もうこの時点で、「ああ、圧迫骨折ですね。あなたの腰痛は老化が原因です」という整形外科医のコトバが雑であることが理解できると思います。

圧迫骨折の背景にある骨粗鬆症は確かに老化が原因かもしれません。
でも、それで本当に痛いのかどうかは、もっとちゃんと診断すべきです。

特にレントゲン上で圧迫骨折があったとしても「いつの間にか骨折」という名の通り、その腰の痛みが始まったタイミングで潰れた骨折かどうかはわからないんですね。

圧迫骨折にも、最近起こった新鮮な骨折と、昔に潰れた陳旧性(ちんきゅうせい)の骨折というものがあります。
陳旧性の骨折だったら、腰痛の原因かどうかはさらに疑わしくなります。

ふんぞり男「じゃ、なんだ、圧迫骨折があっても痛みとは無関係って言いたいのか?」

あ、それはまた言い過ぎなんですよね。
圧迫骨折は痛いですよ。もちろん。

だから、新鮮な骨折であれば、潰れが進行しないようにしっかりとコルセットを作ったり、安静にしたりということが必要になります。
ただ、それって骨折の痛みであって、老化で諦めるべき痛みじゃないじゃないですか。
陳旧性なら、さらに怪しくなるのはお伝えしたとおりです。

しかし、ここでご紹介したいのは、2019年のこちらの論文(*1)です。

こちらの研究では「いつの間にか骨折」がある患者さんに対して、6週間の背筋強化トレーニングが、腰や背中の痛みを改善させたと報告しているんですね。

こういう研究は他にもあって、大切なのは、この「いつの間にか骨折」はたしかに老化による骨粗鬆症などが要因の1つではありますが、だからといって、痛みのすべてを老化のせいにして諦める必要はないってことなんです。

背筋筋力強化で痛みが改善する可能性もあるし、それ以外にも様々な治療法があるわけですね。
この「いつの間にか骨折」だけでも「老化」で片付けてしまうことの罪深さをご理解いただけたかと思います。

第2位 変形性膝関節症

これも多いですよねぇ。
「膝の軟骨がすり減っちゃいましたね。すり減っちゃった軟骨は元に戻らないので、付き合っていくしかないですね」っていう整形外科医のコトバ。

これを告げられたことがある人は多いのではないでしょうか。
これは正直、告白します。
僕も何度となく言ってきました。

これも先程と同じなんですよ。
軟骨がすり減る理由の1つに老化というか、ご年齢があるのは間違いないんですよね。
ですけど、一方でそれがイコール痛みの原因かっていうと、別問題なんですね。

それを最もわかりやすく示してくれるのは、この論文(*5)かなと思います。
一般的に日本人で変形性膝関節症で膝が痛い人は800万人以上いるとされています。
しかし、一方でこの論文によるとレントゲン上の軟骨のすり減りがある人はそれより遥かに多くて、2400万人くらいになるってことなんですね。

特に女性の方が多いのですが、女性の場合はもう60歳を超えると半分以上の方の軟骨がすり減っているんですね。
そして、80歳を超えると80%以上という脅威的な数値になっています。

男性もそこまでではないにしろ、高いパーセンテージですよね。
いかがでしょうか、膝が痛いご高齢な方が多いとは言え、ここまでっていう印象はないと思うんですね。

となりますと、レントゲン上で膝の軟骨がすり減っている人でも、痛くない人はたくさんいるってことなんです。
ザックリの人数で言っても、変形性膝関節症で膝が痛い800万人に対して、レントゲン上の軟骨のすり減りは2400万人。つまり、レントゲン上、軟骨のすり減りがあっても痛い人は1/3という雑な推測が立つわけです。

さすがにこの論調は雑で、実際には受診されない膝の痛みの患者さんもたくさんおられると思います。
しかし、かなりの比率で痛くない変形性膝関節症の患者さんがいるわけですね。
そのため、軟骨がすり減っているレントゲン写真を見て
「ああ、その膝の痛みは軟骨のすり減りのせい、つまり、老化です。諦めてください。」と言うことが妥当か?って話なんです。

でも「諦めててください」って本当に言う人はほとんどいませんが、そういう空気感を感じてしまった患者さんの話はたくさん聞きます。

ふんぞり男「でもよぉ、軟骨がすり減った膝に体重がかかるんだろ?痛いに決まってんじゃないか?」

素晴らしい視点です。
実際に我々整形外科医も昔はその考え方で患者さんに説明してきました。
それが一番わかりやすいですからね。

しかし、そのわかりやすさが医学的な事実と乖離していると、今回のように

「軟骨がすり減っているイコール痛みの原因イコール老化だから仕方ない」という論調になっちゃうんですよね。

その解離している医学的な事実が、様々な研究によってわかってきています。
軟骨がすり減ってるのに痛くない人がたくさんいる事実に、我々は目を背けちゃいけないんですよね。

ちなみに、この2015年の論文(*2)が教えてくれるのは、膝の軟骨がすり減った結果、膝の関節の中で「滑膜炎」という炎症が起こっているという事実です。

軟骨がすり減ったことそのものじゃなくて、結果として滑膜炎という炎症による痛みが原因かもしれないということです。

ただ、それ以外にも様々なメカニズムが考えられていますので、ここではすべてをお話できません。

ですが「軟骨がすり減った=痛い」とは限らないということを、今一度確認していただきたいです。

この認識ができると、整形外科医から

「老化だから諦めなさい」的な雰囲気で湿布だけとか
たまにヒアルロン酸の注射でもするかい?

みたいな熱意に欠けた提案をされても、ショックを受けることもなく、膝の痛みに立ち向かうことができるかもしれません。

このことは、年齢以外の自分で変えうる要素に意識をフォーカスすることに他なりません。

例えば、2009年のこちらの研究(*6)では、太ももの前の筋肉である大腿四頭筋の筋力を鍛えることは変形性膝関節症の痛みの改善に効果的である可能性が示唆されています。

この研究に限らず、大腿四頭筋の筋力の重要性は以前から知られています。
ほかにも太り気味の人が体重を減らすことのメリットも十分考えられます。

このように年齢という誰もがあらがいようもないことにフォーカスするのではなく、自分で変えられる部分にフォーカスすることが、今回とくにお伝えしたいメッセージの1つです。

そういう話になると、再生医療はどうなんだろうってことも話題に上がってくるんですが、それは別の機会にしましょう。
再生医療についてざっくりお伝えすると、現時点ではそんなにオススメしません。
再生医療でほんのわずかでもすり減った軟骨が再生したとして、そもそも、そのわずかな変化が痛みにどれだけ意味があるか?ということを、ここまでの話で疑問に感じませんか?ってことだったりします。

第1位 腱板断裂

この1位は完全に僕だから取り上げた得意分野の肩ですね。

これも「原因は何ですか?」って患者さんから聞かれたときに、「大きな要因として、ご年齢はあります」っていうことはちゃんとお伝えします。
一方で、それが全てではないし、第2位の変形性膝関節症と同様に、ご年齢とともにMRIや超音波で調べた時の腱板断裂患者さんの割合はドンドン高まっています。

こちらの論文(*3)を見ても、70歳以上になると30-50%近くの人が断裂していることになります。
でも、身の回りの、そのくらいのご年齢の方を見ていただいて、そんなに腱板断裂で悩んでいる人は多くないですよね?
なんなら、腱板断裂って言葉をはじめて聞いたって人もたくさんおられるはずです。

ということは、腱板断裂があっても痛くない人がたくさんいる。

ざっくり1/3の人は痛かったり、筋力が低下するような症状があるけど、2/3の人は、そういう症状がないって言われています。

実はこれはもっと丁寧に調べたら、割合は違うんじゃないかなぁと思ったりもします。
でも、困り具合で言うと、そういう感覚なんです。

となったら、考えるべきことも第2位で学びましたね。
自分で変えられる部分にフォーカスするってことです。

ご年齢のせいかどうか、それ以外の要素があるかはわかりませんが、断裂してしまったモノは変えられません。
未来にどう働きかけるかってことが大事ですよね。

この考え方をとったときに、変形性関節症と腱板断裂で大きく違う点が1つあります。
それは手術です。

変形性膝関節症、つまり軟骨がすり減った状態は手術でも根本的には治療できません。
根本的に近いのは、人工関節に取り替えてしまうっていうことになります。
この膝の人工関節自体は日本全国で本当に多く行われている手術で、そのクオリティも安定してきているわけですが、やっぱり、大きな手術にはなりますよね。

実は肩にも人工関節ってあるんですが、やはり最終手段という考え方が基本的です。
特に腱板断裂も最終的には軟骨がすり減って人工関節が必要になってしまうことがあるんですが、

僕の個人的な願いとして、腱板断裂の患者さんが人工関節が必要になってしまわないようにできたらいいなと思っているんです。

ふんぞり男「は?老化で腱板断裂が起こったんなら、無理じゃないか!」

そこが変形性関節症、軟骨のすり減りと違う部分なんですよ。
腱板断裂ってスジが切れて、穴があいてしまった状態です。
あいた穴なら塞げば良いってことなんですね。

塞いだところで100%、元通りっていうことは基本的には考えにくいんですが、腱板断裂が起こる前の状態に戻す、近づける、そういうことが可能なんです。
それも、関節鏡という内視鏡手術によってですね。

ですから、自分にできることにフォーカスするということの中に、穴を塞ぐ手術を選ぶというのも、人工関節が必要になる前の段階で取り得る選択肢なんです。
これは結構、大きな違いだなって思っています。

腱板断裂については、こちらの再生リストをぜひぜひご覧ください。

かなり様々なテーマで解説しておりますので肩が痛い人は必見です。

さて、ここまで、

・いつの間にか骨折
・膝の軟骨のすり減り
・腱板断裂

を取り上げて

「老化だから仕方ないね」じゃなくて「老化は痛くない!」の考え方が大切だということをお伝えしてきました。

それを丁寧に説明すると、老化自体は身体の変化を引き起こしますが、その変化がイコール痛みの原因とは限らないということでしたよね。

まず、この理解を前提にして、大切な考え方の整理をお願いしました。

それは、自分が変えられることと、変えられないことを切り分けるっていうことでした。

例えば、過去と未来。
未来は変えられるけど、過去は変えられませんね。

つまり、今後の治療方針やセルフケア習慣によって未来の痛みは変えられるけれども、過去、今日まで進んできた老化という変化は変えられません。

どっちにフォーカスしますか?っていうことですね。

そして、その未来を変えるために必要な情報っていうのは、ちゃんと医学的根拠があるものを選んでいかないと、残念な未来を引き寄せてしまいかねません。

ぜひ、僕のチャンネルの動画をたくさんご覧いただけたら嬉しいです。

本日の一言

老化は痛くない、つまり、老化は変化に過ぎず、それが痛いとは限らないってことですね。

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参考論文

(*1)Yetkin Çergel et al. Arch Osteoporos. 2019
The effects of short-term back extensor strength training in postmenopausal osteoporotic women with vertebral fractures: comparison of supervised and home exercise program

(*2)A Yusup et al. Osteoarthritis Cartilage. 2015
Bone marrow lesions, subchondral bone cysts and subchondral bone attrition are associated with histological synovitis in patients with end-stage knee osteoarthritis: a cross-sectional study

(*3)Tuhina Neogi et al. Ann Rheum Dis. 2015
Sensitivity and sensitisation in relation to pain severity in knee osteoarthritis: trait or state?

(*5)Noriko Yoshimura et al. J Bone Miner Metab. 2009;
Prevalence of knee osteoarthritis, lumbar spondylosis, and osteoporosis in Japanese men and women: the research on osteoarthritis/osteoporosis against disability study

(*6)Shreyasee Amin et al. Arthritis Rheum. 2009
Quadriceps strength and the risk of cartilage loss and symptom progression in knee osteoarthritis


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