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【キケン】「〇〇食べるだけで、飲むだけで」のウソ

「その情報を鵜呑みにしてしまった多くの癌患者さんが病院での治療を中止して症状が悪化するという騒動が」

今回は食品、飲み物に関する健康情報の受け取り方、リテラシーについての解説です。
「〇〇食べるだけで、飲むだけで」のウソをお届けします。

※このnoteでは、整形外科医:歌島大輔が医学的根拠をもとに、わかりやく、かつ実践的な医療健康情報をお届けします。
ときどき出てくる「ふんぞり男」とは、その名の通り、ふんぞり返って態度がデカい患者さんです。


医学的根拠が無い!?「食」についての正しい情報

ふんぞり男「また、ウソを暴くみたいなやつか!お前、何様だ!」

ホントですね・・何様なんだか。

でも、こういう話をする以上そう言われるリスクを負っているわけで、それでもお伝えしたいってことだったりします。

「あの動画は嘘だから信じるな!」

って何か特定の動画を糾弾するものではありませんので安心してください。
むしろ、1つの動画だけなら大して影響力もないので、無視すればいいんです。

僕が問題視しているのは、似たような動画が数多く上がっていて、その動画の再生回数がとっても回っているということなんです。

ふんぞり男「お前より再生されてるもんな」

やかましい!

でも、ホントそうで、力不足を痛感しております。

先程も言ったとおり「ウソ」を糾弾するというよりは、
そういう発信に根拠がないことをお伝えした上で、

「どういう考え方が自分の健康、自分の人生を守る上で大切なのか」

っていうポイントをお届けしたいって思っているんですね。

そうじゃないと、口が上手い、ホンモノっぽい情報に踊らされて、時間もお金も、そして心身もすべてが無駄にすり減っていきます。

YouTube動画が特に多いですが、雑誌や本、テレビなど、あらゆるメディアにおいて医学的根拠がない話が繰り広げられています。

そんな中で今回は「食」についてのお話です。

実際、食事ってめっちゃ大切じゃないですか。

ふんぞり男「そりゃどうだろ。食ったもので身体が作られるんだから」

まさにそういうことですね。

2019年にLancetという世界的に権威性が高い医学雑誌に掲載された論文(*1)では、世界中で毎年1100万人が食事が原因でなくなっていると推定しています。

世界では、毎年5600万人が亡くなっていると言われているので、
1/5が食事が原因ということになるんですね。
こういうデータを持ち出しても、食事ってとっても大事だよなっていうことは誰でもわかると思います。

健康・命・人生を大切に考えている人ほど、食事に気を配ると思うんですね。
でも、そういう人こそ、まず大前提としておいてほしいポイントが3つあるんです。

この3つのポイントを押さえておかないと、
ただ商品を売りたいだけの企業、
ただ再生回数を伸ばしたいだけのYouTuberやインフルエンサーの話に踊らされてしまい、健康と人生を壊しかねないんです。

その3つを順番にお話ししていきます。

始めに「food faddism|フードファディズム」という大事な言葉とその危険性をお伝えし、
次に「Reductionism|リダクショニズム」という言葉をお伝えします。

どちらも聞きなじみがない言葉かもしれませんが、解説を聞けばなるほどと思っていただけるかと思います。

そして最後に、「food faddism」と「Riductionism」を踏まえた上で、
信用しないほうがいい情報の特徴、見分け方みたいなものをお伝えします。

ぜひ、最後までご覧くださいね。

1.food faddismの恐怖

wikipediaではフードファディズムという言葉の意味を
「食べものや栄養が健康と病気に与える影響を、熱狂的、あるいは過大に信じること、科学が立証したことに関係なく食べものや栄養が与える影響を過大に評価すること」 とされています。

さらに、このフードファディズムによる極端に悪い実害として、オーストラリアで詐欺を働き有罪判決を受けたベル・ギブソンさんの事例が挙げられています。

彼女は自分が様々ながんを患っていながら、有機農業で生産された食品のみを摂取するなどの自然療法で末期癌を克服したという情報発信をしていました。
その情報を鵜呑みにしてしまった多くの癌患者さんが病院での治療を中止して症状が悪化するという騒動があったそうなんですね。
そのギブソンさん、がんを患っていたということから虚偽だったということなんです。

ふんぞり男「お前こそ、wikipediaを鵜呑みにしてんじゃねぇか」

鋭い視点ですね。

おっしゃるとおり、wikipediaは誰でも情報を追加、編集できるわけですから、その先の情報の引用元を確認する作業は必須です。

例えば、こちらのイギリスのオンライン新聞(*1)に掲載されていますね。 

ふんぞり男「いや、事実だとしても、詐欺なんだから、そりゃアウトだろうが」 

そうですね。詐欺は極端に悪い例ですが、
「自分は薬なんかに頼らない、食事で健康で居続けるんだ!」みたいな人がいますよね。

実際、そのような情報発信をしているインフルエンサーの話を聞いて、
食べる楽しみを犠牲にしてまで「身体に良いらしい食事」に極端にこだわったり、高額なサプリメントに莫大な費用をかけてしまったりというケースは少なくないと思います。 

ふんぞり男「いいじゃねぇか、それで健康になってるならよ」

はい、健康になっているなら・・・ですよね。

その結果論は個人個人で違うと思うんですが、
問題は「身体にいいらしい」っていう情報ですよ。

食べ物や飲み物に関しては、

●●という病気に効くとか予防しますっていうことを言い切れるものは、ほとんどないですよ。

薬に関しては、何重にも研究を重ねて効果と安全性が検証された結果、
病院で処方される薬として認められているわけですが、食品にはその過程はありません。

機能性表示食品やトクホと呼ばれるものも同様です。

薬のエビデンスに比べると、本当にないも同然です。

あ、ちょっと言いすぎでしたらゴメンナサイ。
でも、この考え方に関連するものは次で解説します。


2.Reductionismの罠

リダクショニズムというのは、還元主義と和訳されます。

複雑なことを、単一のシンプルな要素に着目して結論づけることです。
人間、生物と食べ物や飲み物という、とっても複雑なことを安易にシンプルかして語ることの危険性があるんです。

よくあるのが、テレビや本、YouTubeでも
「○○を食べると、血圧が下がる!」とか「夜に○○を飲むと白髪が減る」とか、そういうやつです。

他にも、免疫力が上がるという情報がテレビで流れた翌日に、納豆がスーパーからなくなったり、バナナダイエットとかリンゴダイエットとか、このリダクショニズムの罠とも言うべき事例はたくさんあります。

人間の身体ってめちゃくちゃ複雑なので、1つの食べ物でそんな劇的な効果があるわけがないんですね。

もし、劇的な効果があるなら、その一方で劇的な副作用も考えないといけないですから、むしろ危険な食べ物なんです。

でも、ご安心ください。
そんな劇的な効果がある食べ物なんてナイと思った方が賢明ですから、副作用もそんな気にする必要はないです。

ただ、もちろん極端な単一食材ダイエットのような、同じ食べ物ばかりを長期間継続してしまったら、それは、何らかの効果も出るかもしれませんし、一方でそれ以上の副作用で体調を壊すこともあり得るのでやめてほしいですね。 

ふんぞり男「ん〜、さっきの薬の話を考えると、当たり前すぎる気がするな」

今日のふんぞり男さんの物わかりが良すぎて怖いですが、そういうことなんです。

ふんぞり男「でもよ、賢い視聴者さんは、そんなウマい話はないと思いつつも、ちょっとは意味があるんじゃないかって期待してると思わないか?」 

スゴいです!そうなんですよね。

僕もその気持ちは良くわかります。
極端なことを言われると、そこまで極端じゃなくてもちょっとは効果があるんじゃないかなってことですよね。

例えば「朝食にこの○○をプラスするだけで、血圧が30も下がりました!」とかいう、怪しい情報も「30は下がらなくても、10くらいは下がらないかな・・・」って思って実践しちゃうことあると思うんです。
でもね、どう考えても10も下がらないですから。

例えば、今も日本でよく使用されている降圧薬のアムロジピンの臨床研究(*3)の1つですが、アムロジン5mgの内服を2ヶ月することで7mmHG下がったと報告しているんですね。

こういうデータを積み重ねて高血圧に効果があると示されたから、薬として処方できるわけですが、それでも7ですよね。

YouTubeとかで30とか40も下がるかのように言ったりしているんですが、当然・・・ね。

ふんぞり男「ね、じゃねぇんだよ。」

いや、それ以上は言わなくてもいいと思ってですね。
でもホント、○○飲むだけとか○○食べるだけみたいな情報にはご注意ください。

ここまでをカンタンにまとめますと、

フードファディズムと呼ばれる「食べ物や飲み物の健康効果を過度に期待してしまう」ことに注意すること、

リダクショニズムと呼ばれる「本来、複雑な人間の身体、健康に対して、あまりにシンプルにした情報」に注意することが大事ってことです。


信じちゃいけない食べ物・飲み物情報

これが一番大事ですね。

信じちゃいけないって言いましたが、ちょっと言いすぎかもしれないので注意してほしいという程度に考えてほしいですが、その特徴は、

  1. どう考えても専門家じゃないだろうという人の情報

  2. 体験談しかない情報

  3. 引用文献を示さない情報

  4. メカニズムだけ説明して根拠っぽく見せる情報

という4つがあり、それぞれカンタンに解説を加えます。

1. どう考えても専門家じゃないだろうという人の情報

食に関する専門家って、パッと思いつくのは栄養士さんだと思います。
他に医師も病気の予防という話になってくると専門家に入れていただいていいかもしれませんね。

ただ、YouTubeなどを見ていても、整体師さんとか柔道整復師さんとか、いわゆる治療家さんが食に関する情報を発信していたり、ちょっとよくわからない肩書きの人が発信していたりしますよね。

まず、そういう「誰が」発している情報かっていうのも、わかりやすい判別ポイントです。

医師でも栄養士でも残念ながら怪しい情報を発信している人はいますし、逆に資格がなくても、信頼のおける情報を集めて発信している人もいますから、他の特徴も重要視してほしいです。

2. 体験談しかない情報

これ、多いですよね。

自分はこれで体重が30kgも減ったんですよ!
とか、
治療院に来た患者さんに教えてあげたら、みんな血圧が下がったんです!
みたいなやつですね。

これはいくらでもねつ造できますし、そこまで悪質じゃなくても効果があったと実感したい、効果があったと言って喜ばせたいという気持ちが働いてしまうので、効果がないものも効果があるようになったりしがちです。

体験談はあってもいいんですが、それだけだと弱いというか、むしろ根拠なしと言ってもいいレベルです。

3. 引用文献を示さない情報

そう、医学論文などしっかりした根拠が必要なんですね。 

ふんぞり男「堅苦しいこと言うなや。論文なんて誰も読まねぇぞ」 

極論、読まなくても良いんですよ。
でも、ちゃんと引用文献を示すってことは、僕みたいに情報の質に注目している人間は引用文献を読みます。

結果、その主張はおかしいなってことに気付いたり、逆に根拠がある主張なんだなと勉強になったりするんですね。
よくあるんですが「○○大学の2020年の研究で、こういうものがありました」っていうだけの情報もあるんですが、これも全然ダメです。

だって、どんな大学も年間、めちゃくちゃたくさん論文を投稿しているんですよ。
そのどれなんだって話ですよ。

著作権でも最低限、引用元を明示するようにという常識がありますが、そういうことよりも、ちゃんと引用元を明示して信頼性を上げようとしていないことに僕は不信感を持ちます。
ゆるい引用された情報を引用しているだけで、もとの論文を読んでないんじゃないかと疑ってしまいます。

実際、引用文献の明示がなかったら、誰もその主張、情報の信頼性を評価できないです。
その状態で、先ほどの体験談や次のメカニズムなどを説明して、根拠があるっぽく話すのって、もう人の身体に関する情報発信としては不誠実極まりないって思うんです。

4. メカニズムだけ説明して根拠っぽく見せる情報

例えば「○○という食品は血管のコラーゲンの原料になって、その結果、血管が柔らかくなって、血圧が下がります。」という説明。
これは○○という食品が血圧を下げるメカニズムを説明しているんですが、そもそも本当に血圧が下がるかを証明してないですよね。

そして、その前段階の主張である血管が柔らかくなってというのも証明していない。
結果、何の根拠にもなっていない、超ゆるゆるの仮説だってことなんです。

ふんぞり男「この特徴に当てはまらない情報ってあるのか?」

全然ありますよ。
特に引用文献を示してくれている情報は探せば全然ありますよね。
このチャンネルは整形外科医がエビデンス(論文)や医学的な知識を噛み砕いて「分かりやすさ」と「医学的な正しさ」両方を諦めない発信活動を続けております。

本日の一言

食べ物・飲み物に関しても、医学的根拠を重要視してください。

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参考論文

(*1)GBD 2017 Diet Collaborators. Lancet. 2019 Health effects of dietary risks in 195 countries, 1990-2017: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2017

(*2)The Whole Pantry withdrawn: Holistic recipe book taken off shelves as Belle Gibson's cancer claims are disputed Belle Gibson claimed to have embarked on ‘a quest to heal herself naturally’ Adam Lusher Tuesday 17 March 2015 1

(*3)T Fujiwara et al. J Hum Hypertens. 2009 The Phase III, double-blind, parallel-group controlled study of amlodipine 10 mg once daily in Japanese patients with essential hypertension who insufficiently responded to amlodipine 5 mg once daily

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