見出し画像

推しCPの長編小説が書きたい同志に捧ぐZINE【長編小説マイルストーン その1 着想】

長編小説マイルストーン


道は続くよ どこまでも……思ったより長く……
Mike GoadによるPixabayからの画像

「長編小説を書く」と心の中で思ったならッ!その時スデに行動は終わっているんだッ!
というようなことは、残念ながらありません。
それなりの完成度と長さを求めるには、山登りにサンダルで行かないのと同じように、しっかりした事前準備が必要になります。
もちろん、世の中には事前準備無しでエベレストの登頂に成功してしまう剛の者もいらっしゃるのですが、わたしは凡凡凡の凡人なので、先人の教えに従って元気よく設計図を作ります。

わたしが考える、『長編を書くときの大まかな流れ』はこんな感じ。

着想→資料集め&設定→プロット→執筆→(推敲・修正・校正)⇒完成

書き上げた後は、同人誌という形にしたり、Web投稿を行ったりと様々かと思います。書きながら投稿される方もいらっしゃるでしょうしね!
わたしの場合、とにかく書き上げてみないと修正に入れないし辻褄が合わなくなる……!となってしまうので、書き上げてから投稿するような形を取っています。
人それぞれなので、細かいところはなんとなく雰囲気で察していただくとして……。

そんなわけで、ここからはこの『道標』に沿って書いていきたいと思います。

着想

着想は『こんな話が書きたいな』と思いつく段階。
アイデアが生まれてから、キャラクターや舞台の設定、簡単な話の流れは、どういうことを考えながら決めるかな? というところを書いてみたいと思います。

『あ゛~ この組み合わせでこのシチュ、絶対萌える……』

あ~~~~~アイデアが降ってきたわ~~~~~~~
LukasBaselによるPixabayからの画像

この思いつきが、エンジンに点火する最初の火花です。
小説の完結は、この火花の力を最後まで生かし続けることができるかどうかにかかっている気がします。
生まれた火種に、どんな風に炉を組んで酸素を送りつづけるかで、最後まで書き切れるかどうかが決まってくるような気がするので、前準備をおろそかにしてしまうと、わたしの場合、あっけなくエタります。(エタる=完結させずに放置すること)
なので土台は大事なのですが、やっぱり一番重要なのは
『あ゛~ この組み合わせでこのシチュ、絶対萌える……』です。

創作をする方によって、着想の土台になるのが何なのかは様々かと思います。
わたしはたいていの場合、
『かけ算(関係性)を決める』→『シーンを考える』→『テーマを決める』
という順にストーリーを作っています。なので、ここでもその方法でお話を進めていきます。
一次創作と二次創作で、ここの始まり方はちょっと違いが出てくるかな?と思うので、分けて考えてみようと思います。

まずは、関係性を決めるところから!

○関係性から考える(一次創作の場合)

俺はやるぜ 俺はやるぜ
Ryan McGuireによるPixabayからの画像

自分が一次創作を書こう!となったとき、何よりも先に来るのはキャラクター同士の関係性(さらに言えば属性のかけ算)である場合が多いです。
このやり方でメリットだな~と思うのは、属性を先に決めることでキャラクターの生かし方が自ずと固まってくるところ。
例えば、医者が主人公なら医療行為を行うシーンを入れたり、誰かが大怪我をするような事件が起こったり……という『お約束』を導き出しやすいのです。
『お約束』というと悪いことのようですが、逆に考えると、そこは読者さんが期待する部分でもあると思います。
「医者が主人公なのに農業しかしてねーじゃねーか!」となったら、せっかくの設定が活かせず、誰も幸せになりませんよね。

そんなわけで、わたしはまず大きな属性(大体は職業とか、人外の種類とか)を決めます。
次に、それぞれの属性に燃える(萌える)要素を付け加えていって、キャラクターを確立させていってます。

これは自分の好みですが……
キャラクター紹介文を考えたとき、『①なのに②』という文になるようなキャラクター付けをするのが好きです。
医者の例で考えると『凄腕の医者なのに血を見るのが苦手』とか『凄腕の医者なのに無免許』とか。
そういうキャラクター付けは、書いていて楽しいし、キャラの動きに盛り上がりを用意しやすい気がします。また、キャッチーさを出しやすいので、あらすじを見て下さった方の興味を引けるかな、と思っています。

原作のファンに作品を探してもらえる二次創作小説や、画像から一目で興味を持って頂ける一次創作漫画・イラストとも違って、一次創作小説の場合、新規読者獲得のきっかけは『キャラ設定』と『あらすじ』の魅力での勝負です。
バースものとか異世界転生とか悪役令嬢とか、その時々で流行っている要素を取り入れることで、多少は二次創作に近いアプローチができるかもしれませんね。
とにかくファンを増やしたい!という方は、このあたりから攻めてみるのもいいかも。

そんなわけで、『どんなジャンルなら読んでもらえるか』を考えるのももちろん大切……ですが最優先すべきは『自分が何を書きたいか』ですよね、やっぱり。
『今こういうのが流行ってる』という動機だけで書くのは本当に苦しい……!
短編ならまだしも、『書かされてる』状態で挑む長編は茨の道です。
しかし、流行の要素を取り入れつつ、自分好みのお話に仕立ててしまえば万事解決!
(その辺の折り合いをつけたりつけなかったりするのに、わたしはかなり時間がかかったのですが……)

着想がプロットの種に固まるまでの流れは(拙作で恐縮ですが)『敗北魔王、勇者の末裔と500年後の社会復帰』(告知です)を例にとると、こんな感じの変遷を辿ります。

魔王が主人公の話が書きたい【流行を取り入れる】

魔王つったら相手は勇者お約束を取り入れる】

でも、ガッツリファンタジー世界の話にするんじゃなくて、魔法が存在する現代の話にして、民族対立とか陰謀も絡めよう【自分の好みだったり、得意な分野に持っていく】

ここまでくると、プロットの芽のようなものができてきます。ここにストーリーを肉付けしていくところから、わたしの一次創作編の執筆が始まります。

○関係性から考える(二次創作の場合)

このシーンのふたりの間に流れてる空気を肺一杯に吸いたい……
それが無理なら二次創作小説として具現化したい……
ChristianeによるPixabayからの画像

二次創作の強みは、読み手の側に、既にCPのキャラクターについての知識と好意が存在しているところです。

大体のキャラクターには、書く前からファンダム(ファン+王国キングダムの造語)で共有されている認識や人格があり、書き手の中にも明確な関係性や設定があるはずです。
(中には、一瞬だけ登場した台詞も何もないキャラクターが、ゲーム内でまったく絡みのない別キャラと組み合わさってドデカいジャンルになることもありますが、その場合もファンダムには『こういうキャラっぽい!』からスタートした共通認識があるはず。そういうことが起こりうるって、俺はこの目で見たんだ……ッ)

話を戻します。
ですから、二次創作では一次創作のように、ふたりの関係性について0から考え直す必要はないでしょう。(例外を除く)
ただ、すでに明確な関係性や設定があるからこそ、自分の中にあるCP観に納得してもらうためにはしっかりとした設定や根拠が必要だなぁ、と思います。
関係性を考えたり描写する手間を惜しむと、『解釈違い』と途中で見捨てられてしまう恐れがあるんですよね。とは言え難しいんだ、これが。
なるべく読者さんの違和感がないようなお話を書くには、やっぱり原作に何度も触れること、だと思います。
絵というクソデカ説得力を有している漫画と違って、小説は文字情報だけです。口調一つ「あれ?」となるだけで、読んでる途中で「そうは言わんやろ」と素面になることがありますからね……。
逆に、キャラ解釈が安定していると読者さんの信頼を得やすく、続きや他ジャンルの話も読んでもらいやすい気がします。

さて、では、自分なりに解釈した関係性を生かすために、二次創作の長編では何をとっかかりにしてアイデアを拡げていくか。
これもまた人それぞれです。

わたしの場合、あるCPに沼ったときの出発点はいつでも『この二人はどうやって初夜にこぎ着けるか』です。
ただ、わたしの長編は『初夜』=『結末』にはなりません。
というのも、濡れ場がひとつだと長編のボリューム的にエロが少なすぎて、読者離れが起きそうで怖いのです……。
ということで、初夜に+して、物語を付け加えることで長編を考えていくパターンが多いです。

ちなみに、わたしはいつも『初夜』までは短編や中編をWeb公開しておいて、(もったいないので)後日再録して、『初夜』の続きを書き下ろしにして一冊の同人誌にしています。
Web公開分の短編~中編を気に入ってくださった読者さんを、その続きに当たる長編に誘導する方法は、ほぼ毎回やっています。いきなり同人誌を出すよりは、興味を持って頂けている……気がする。多分。

つまりざっくり言うと、わたしが二次創作で長編を創作するときには、短編【初夜(両思いだったり、体だけの関係だったり)】から始まって、長編【恋愛感情がこじれるものの、なんやかんやあって良い感じに落ち着く】の流れにしています。
そうすると、恋愛と『原作では描かれなかったけどこんな展開があったら素敵じゃない?』というストーリー部分とのバランスが取れるような気がします。

○シーンを(ざっくり)考える

あ~~~~~~またアイデアが降ってきたかも~~~~~~~~~~~
PublicDomainPicturesによるPixabayからの画像

一次二次問わず、キャラクターの関係性を固めたら、次に考えるのは『シーン』です。
小説を書こう!と決めた以上、なにかひとつ以上は思い浮かんでいるシーンがあるはずです。

無い? 

では頑張って思いつきましょう。
わたしは、この段階が一番苦しいかもしれません。インプットが足りていないとなーんにも思い付かないので、ネタ出しをしながらゲームしたり、映画を見たり、本を読むのがオススメです。

で、『このシーン、書きてぇ~!』というシーンが思いついたら、その都度メモして蓄積していきましょう。たくさんあればあるほどいいので、ここでたっぷり時間をかけるのもおすすめです。
もし、ここで飽きてお話自体を放棄したり、アイデアをボツにしてしまったとしても、後日別のCPのお話を思い付いたときに役に立ったりするので、できればメモを……!

だいたい執筆する前の最初の頃に思い浮かぶシーンって、エモいか、派手か、クライマックスか、エモくて派手なクライマックスのどれかです(違ったらスミマセン)
ということは、そういうシーンは見せ場になります。
見せ場をうまくいかすのって本当に大事。そのためにプロットがあるんじゃ無いかなと思ってます。

後で作ることになる『プロット』は、いわばその見せ場を印象づけるためのお膳立てを計画する意味もあるかなと思います。

つまり

  1. 『書きたい!』と思い付いた、見せ場のシーンをつなぎ合わせたり、発展させて、リアリティや感動をもたらすものにする。

  2. そのためには、どんな前提や設定(=そこに至るまでの別のシーン)が必要なのか?

これをたたき台に、作品の全体像を作り込んでいきます。
このあたりは、プロットを作る段階でまたあらためて。

○主題(テーマ)を考える

さながら、推しのための賛美歌の指揮者のように──
Khoa LêによるPixabayからの画像

ただ書きたいシーンをつなげただけでは、一貫性のない長文になってしまう恐れがあります。
そこでおすすめしたいのが『主題(テーマ)』を決めることです。
これが以外と難しいのですが、何作か書いていくと、長編にはこの『主題』が欠かせないんじゃない!?と思うようになりました。

ディズニー映画を例に取ってみましょう。

テーマとは、いわゆる『劇中でも流れたけど、エンドロールでも流れるメインの歌』 のようなものです。テーマソングと言うくらいですからね!

個人的解釈ですが、『美女と野獣』なら『the Beauty and the Beast』(愛は障壁を超えられるか?)だし、アラジンなら『A Whole New World』(旧慣を打ち破れるか?)、『モアナと伝説の海』なら『How Far I'll Go』(限界を超えてどこまでいけるか?)です。はい。完全に自分の好みのチョイスです。

最初に『書きたいシーン』を思いついた段階で、ある程度主題が見つかっているという場合もあるかも知れません。意識せずとも、すでに主題のような物が自分の中で固まっているかも知れません。

ですがもし、その段階でまだ主題テーマが見つかっていないようなら、おすすめしたいのが、主人公たちがひとつの『問い』への答えを見つけていく方法。
『問い』は、『このCPにこんな出来事が降りかかったら、彼らはどんな風に解決しようとするだろう?』ということです。

例えば……

  • A×Bの物語で、Aが記憶喪失になったら?

  • Bが死んだと聞かされたら?

  • Aが敵に意識を乗っ取られたら?

  • Bの元恋人が危篤だと知ったら?

『問いへの答え(どのように問題解決をするか)』=『主題(メインプロット)』のつもりで考えると、わりとしっくり着地できることが多いような気がします。

上に挙げたのはどれも王道のものですが、王道だからと言って食べ飽きることはありません。デカい問いであればあるほど、物語も壮大になっていき、長編向けのストーリーになります。(壮大にしすぎると、長い話を書き切れずに飽きる危険性がありますが)
うまく組み合わせたり、味付けを変えるととても素晴らしい物語になり得ます。


ここで補足をば……。

BLの場合、やはり『ラブ=恋愛模様』を目当てにお読みになる読者さんが多いです。特に一次創作。特に商業。
文章力よりも萌えを重視していると仰る読者さんもいらっしゃるほどです。
(もちろん、両立できたら最強ってことなんでしょうけども)

わたしは商業でプロットを見ていただく時、幾度となく『恋愛要素が薄い』とご指摘を受けました。
(これは駆けだし作家の商業ジャンルでの話なので、趣味で自由に書きたい方は、この考え方に囚われたら逆に勿体ないと思うので、流し読みしてください)

『恋愛要素が薄いプロット』の解決索として、わたしは最近、この段階でもう一つ、サブテーマを決めることにしてみました。
それは、恋愛にまつわる『問い』と『答え』を、キャラクターごとに用意しておくこと。
まず、それぞれのキャラに『過去の恋愛におけるトラウマ』や『恋愛にまつわる悪癖』などを定めます。物語の最後までにそれを解決するようなストーリーを意識したら、なんとなく恋愛小説としてのプロットの完成度が上がった……ような……気がしました。あくまでそんな気がするだけかもしれませんが、プロットは通りやすくなりました。

はい!

ここまで決まったら、次は実際にプロットを作っていく……ために、外堀から埋めていきましょう!
というわけで、続きはまた次回。『設定~仮のプロットまで』の予定です。


いいなと思ったら応援しよう!

あかつき雨垂
よろしければサポートしていただけると嬉しいです。 いただいたサポートは執筆の費用に充て、新しいお話を書いて恩返しいたします!