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推しCPの長編小説が書きたい同志に捧ぐZINE【冒頭の書き方】

推しCPの長編小説が書きたい同志の皆さん、お久しぶりです。
ありがたいことに年末ギリギリまで忙しくさせて戴いて、更新までこんなに間が開いてしまいました。言い訳はいいんだよ!

さて、前回の更新の最後に『次回は冒頭の書き方について……』と書きました。書いたからには書かねばなりません。
というわけで、わたしなりに気をつけているところなんかを備忘録代わりに書いていきたいと思います。

なぜ『冒頭』に気を配るのか?

答えは、そこがとっても大事な部分だからです。

まずは飛び立たねば話にならないのである
(NASA-ImageryによるPixabayからの画像)

冒頭とは、タイトルやあらすじに惹かれて本文まで辿り着いてくださった読者さんが最初に読むところであり、商業作品の立ち読み(サンプル)の範囲であり、旅先の宿のエントランスホールであり、遊園地の入場門であり、曲のイントロです。

冒頭は、お話の雰囲気を伝えるための大事な紹介部分であると同時に、『この話には読む価値がある』と思っていただくための真剣勝負のスタート地点なのです。

ひと文字目から、『今から何か楽しい(とんでもない)ことがはじまるぞ……!』というワクワクを感じてもらうためのカウントダウンが始まります。
タイパ(タイムパフォーマンス)重視のこの時代、書き手がどんなに丹精込めて書いたとしても、後半にどんなに最高の展開が待っていようとも、制限時間以内にワクワクを感じていただけなかった場合、そっ閉じされておしまいなのです……悲しいことに。

最初からビビらせるようなことばかり書いてしまいました。
ならどうすれば読んでもらえるのか……というのを、わたしも常々(本当に)苦労しながら書いています。

冒頭は『動き』があるシーンで始めるのがおすすめ

映画の幕開けみたいにワクワクするシーンを持ってきましょう。

動きとは、『会話』『情景(移動する誰かの視点)』『混乱』『戦闘』『事件』『濡れ場』など、とにかく掴みが強いものを!

やり過ぎくらいがちょうど良い……かも?
Pete LinforthによるPixabayからの画像

物語のはじまりでは『次に何が起こるんだろう?』が何よりも大事です。
知らない世界の扉を開くような、好奇心を刺激するような、そんなシーンを展開することができたら大成功です。

避けた方が良いのは『説明が延々と続く』展開

これは散々言われていることですね。
遊園地の入場門をくぐったところに、園内での過ごし方の注意事項やテーマパークのコンセプトについての説明文がブワーッと並んでいたら楽しむ気持ちが萎んでしまいます。

はよ男と男のクソでか感情を読ませてくれや
HANSUAN FABREGASによるPixabayからの画像

エントランスをくぐったら、まずは楽しげな音楽!(綺麗な装飾の土産物屋さん!)そして、ひらけた景色!ど真ん中にはシンデレラ城!という、ワクワクのわんこそばみたいな展開が望ましいです。

ビーボーイ×pixiv 創作BL大賞の編集部座談会、大変勉強になるのでたまに読み返しているのですが、そこでもこんな風に言われています。

――ユズさんもおっしゃっていた通り、「組み合わせの妙」というのも今回はすごくあったなと思いました。「商業作品としてイメージすると」と特にコトラさんがよくコメントに書かれていたような気がしたんですけど。

コトラ:そうですね。やっぱりいくら良い話でも世界観が狭すぎると難しいのかな、と思ったり。お話の展開の前に、冒頭に設定をたくさん書きたくなっちゃう人が多いんですけど、それだと商業作品としてはちょっと難しいんだろうなっていうのは感じましたね。

――その点ではわんわんさんも。

わんわん:そうですね。ファンタジー作品の設定もすごく凝っていて、人と竜とか、騎士とヒーリング持っている人とか……転生ものでも、出会い方だったり世界設定だったりが凝っていて、楽しかったです。でもおっしゃる通り頭からブワァとその設定が書き込んであると読みづらくて勿体ないので、バランスは大事ですね。

【第3回】小説部門:編集部座談会レポート

しかし同時に、冒頭では『これがどういう世界の、どういう物語なのか』を提示する必要があります。つまり、説明しつつ説明しすぎてはいけない……という難しいバランスを考えなければなりません。

どうすればバランス良く『説明』できるのか

方法は色々あるかと思うのですが、わたしのオススメは、読者にわかってもらいたい世界観の説明はすべて、『会話』や『エピソード』、『状況描写』で行う、というものです。
「Show, don't tell」(語らずに示す)というテクニックに近いですかね。

どういう世界の物語なのか
たとえば、『魔法を使う人間が差別される世界』を書く時。
『これこれこういう原因で、普通の人間は魔法使いを憎んでいる』と書くよりも、『魔法使いを見た瞬間に目を見開いて十字を切り、その場から遠ざかる』人間の描写をすれば、実例を見ている分、説得力が増すうえに説明臭くなりません。
オマケに、(主人公が人間側であるにせよ、魔法使い側であるにせよ)行動に何らかの『感情』が伴うので、読者さんの共感を誘うことができ、印象に残りやすいです。
そんな風にして、さりげなくその世界への理解が深まる描写をちりばめていきましょう。
物語の最初に全てを説明する必要はありません。ゲームのチュートリアルと同じで、少しずつ小出しにしていきます。説明が必要になったときに、また実例を交えたシーンで読者さんにわかってもらう方が、頭に残りやすいし理解してもらいやすいはずです。

どういう物語なのか
『とある事件の真相を追う物語』なら、『殺人現場で会話するふたり』のシーンからはじめるのも良いでしょう。一話完結の事件モノのドラマなどは、大抵、凄惨な事件現場や事件が起こっているまさにその瞬間のシーンで始まりますよね。死体を発見して『キャー!』みたいなシーンもよくあります。
見ているひとに「何? 何が起こるの?」と思ってもらえるような掴み、なおかつ、全体の物語のトーンをわかってもらえるような工夫をしてみましょう。

どういうCPなのか
『これがこの物語の主役たちだ!』という魅力をバーン!を見せつけます。
出会いまで時間(文字数)がかかる作品も個人的には大好きなので一概には言えないのですが……なるべく、サンプルで読める範囲(冒頭3000~5000字以内くらい?)で、受け攻めの二人が出揃うと良い感じなんじゃないかな、と思います。
あと、キャラの魅力の出し惜しみはしないこと!
いわゆる、『属性』として出したい部分を惜しみなく見せるのがおすすめです。冒頭でキャラの魅力を感じて戴けないのは致命的なので……(自戒です)
女たらしなら女性に囲まれているシーン、ガチムチならシャツのボタンがはじけ飛びそうな描写など、その属性を求めて本文を読んでくださった方が『これは期待できるな』と思えるものが書けたら最高ですね。

ちょっと特殊かな、と思うのが、転生や転移などの、いわゆるお約束展開モノを書く場合。
最近の風潮では、シチュエーションの説明や(転生後の)心理描写などを冒頭で丁寧にやるよりかは、サクッと物語を進めてしまう方がテンポ良く感じられて好まれるようです。つまり、冒頭の説明を可能な限り短くしてしまう、ということですね。
『スパイダーマン』はこれまで三人の俳優さんによって映画化されていますが、リブートするたびにベンおじさんのくだり(主人公ピーターの無分別な行動が元で死んでしまい、そのためにピーターはヒーローとして生きることを決意する)を毎回繰り返していたら冗長に感じますものね。
作風にも寄りますが『これってもしかして転移ってやつ!?』で、主人公が納得できる作風なら、説明や驚きの描写はそこそこにして、その世界や出会うキャラの描写に重きを置いた方が良さそうです。

冒頭は考えることがとにかく多い
AnnaによるPixabayからの画像

こんな感じで、地の文が長くなりすぎていないかどうか、気をつけながら冒頭を書いてみましょう。
ノープランでいきなり書き始めると説明文が続いていくシーンになりかねないので、頭の中で実写映像化したり、漫画化したりするイメージで考えてみてください。
漫画の場合、連載1話目を注意して読むと、コマをぶち抜くキャラの全身絵とか、大コマのアクションシーンが沢山あるはずです。(モノに寄りますが)モノローグや台詞での文字数はそこまで多くないはず。
漫画も小説の話の運び方の参考になりますので、気をつけて読んでみると色々な発見があるかも。


というわけで、わたしが意識している冒頭の書き方についてのお話でした。
『意識している』つもりでも、なかなか難しいのがこの『冒頭』。
自分もまだまだ勉強中ですが、少しでも参考になれば幸いです。

次回の更新はいつになりますやら……という感じなのですが、いいねなど大変励みになっております。(同人誌版のご購入もありがとうございます。古い版なので、いつかはこのマガジンの内容を反映した版も出したいなと思っているのですが、だいぶ先になりそうです)

何か『これについて聞いてみたい』というようなモノがありましたらコメントなどで教えて頂けますと嬉しいです。

次回は『濡れ場の書き方』かな……。(変更になったらすみません)
プロット完成までの記事は長いものが多かったですが、今後は軽く読めそうなボリュームで続けていきたいな、と思っております。
気長にお待ち頂けますと嬉しいです。
よいお年を!


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あかつき雨垂
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