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国道脇の歩道を歩く。左手には葛のフェンスが続いている。道路の反対側に並ぶ家と家の間に海が見える。金網を乗り越えて、垂れ下がる葛の葉叢を風が撫でて行く。風の去った先に、ふっと母の微笑む顔が現れて消えた。 丘の斜面を葛が這い登って行く。緩やかにカーブしながら上行するアスファルト道路の、ガード柵の白いパイプの間から、若葉を従えた葛の蔓先が幾つも覗いている。麓の畑で草取りをしている祖母の記憶が蘇ってくる。 山間の作業小屋の外に、夥しい数の葛の葉に覆われて、墳墓のように盛り上がった