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陸橋 オレンジ色に染まったミカン畑が後方に去って行き、セイタカアワダチソウの群れが現れてはまた後方に去って行く。バラック造りの石材屋の前を走り過ぎて、車は陸橋の坂を登って行く。坂の上には青空とちぎれ雲。島の山がちょっとだけ頭を出している。後下方に走り去る落葉樹の枝と黄色い道路標識。車は陸橋の頂きに達した。一瞬の無重力。長い下り坂の先で道路は左にカーブしている。白いガードレールのすぐ向こうには海面が広がり、車はさながらジェットコースターのように海を目指して下って行く。ブレー
蛸壺 入江を囲む堤防沿いの道に 蛸壺がたくさん積まれている 海の底で蛸を待っていた 黒い洞をこちらに向けて 今は何を待つでもなく たまに鳥が降りて来たり 猫が中を覗き込んだり 素焼きの陶器だと思っていたら 蛸壺はプラスチック製だった 表面に小さな藤壺が びっしり付いていた 秋晴れ 朝、玄関のドアを開けて空を見上げた。雲一つ無い青空だ。戸外に出て雲を探した。少なくとも空の北半分には一片の雲も無い。午前の仕事を終え、昼休みにホームセンターの駐車場で雲を探
トンネル 車は山の中腹のバイパス道路を走っている。緩やかなカーブに続くトンネルに入ると、前方の暗がりからオレンジ色の照明が次々に現れて来る。しばらく走ると眩い半円形の一部が見えた。半円形がどんどん大きくなる。その向こうには光る海。水平線が僅かに右に傾いでいる。たちまち半円形は最大に。車はトンネルを抜けた。眼下に島と島を繋ぐ紅白柄の二つの送電塔。その内側の少し遠くに 別の島々を繋ぐ白い吊橋の二つの主塔。スケールの大きな二重の門だ。水平線の傾きが元に戻った。 ランプウェイ